平成27年12月11日(金)
「ことば」は人類に特有のものであるが、それが脳の中でどのように成り立ってきたのかは、興味深いことである。養老孟司氏の脳に関する一連の著書を読むと、難しいのだけれどわかりやすく解説しておられるので、なんとなくわかった気持ちになるのが不思議である。視覚からの情報と聴覚からの情報を統合させる脳の分野に言語が発生するが、視覚は絵画の、聴覚は音楽の領域にある。漢字は象形文字からできたもので絵画の領域に属するが、平仮名はアルファベットと同じ領域に属していて、日本語は両方同時に働かせることによって成立する世界でも珍しい言葉である。
他の国の言葉は聴覚の領域がメインで、聞いて話す、話して聞く、の繰り返しで成立していくが、日本語は漢字という準絵画を使うことによって読む(視覚)ことが話すこと以上に重要になっている。そして漢字の読み方には音読み、訓読みなど何通りもの読み方があり、それらを習得しなければ日本語を読むことができない。昔から「読み書きそろばん」と言われていたのはそのことを象徴している。日本では漫画がよく読まれているが、吹き出しの部分がすべて平仮名であったらこれほど普及していただろうか。日本の漫画は日本語の音訓読みを利用したものであるというのは納得できる。脳の働きは実に不思議であり汲めども尽きせぬ面白さがある。