人工妊娠中絶術について

平成23年9月5日(月)
人工妊娠中絶術と流産の手術は開業後多件数行っているが、毎回特に注意力を集中して行う手術である。一番大切なのは子宮頸部と子宮腔をわん曲に合わせて拡張するところであるが、この時に注意しないと穿孔の危険がある。さらに内容を排出させる場合、組織が残ってはダメだしかといって必要以上に掃爬しても子宮内膜が薄くなるので、この加減が難しい。鈍匙の指先に伝わる感覚が大切である。麻酔薬の量も人それぞれ微妙に効き方が違うので、その時の状態に合わせて量を調節している。手術を終えたら超音波で確認して終了とするが、それでも組織の一部が遺残することがある。ほとんどの場合は自然に排出されるが、時間がかかる場合はお話して再掃爬させていただく。
この手技は産婦人科医にとっては基礎の中の基礎ともいうべきものであり、ベテランの医師にとってはありふれた手術である。だからこそ30年間この手術をやってきた自分でも、いつも初めての時と同じように気持ちを引き締めて行うのである。