無排卵周期症とピル

平成23年2月23日(水)
先日、ストレスから体重減少がおこり、生理不順になり4年間治療しているという若い女性が来院した。現在は体重も戻り、毎月、排卵誘発剤を処方されているそうである。今月は薬を飲んでないので心配だとのこと。
診察してみると、排卵も済んでおりもうすぐ生理が来る状態になっている。これなら今後、排卵誘発剤は必要ないし、このまま様子を見ていいですよとお話ししたが、不満の様子でもう来院しない光線を出して帰られた。
生理は毎月あるのが当たり前で、なければ治療しなければならないと思っている人が多いと思う。医師でもそう思っている人がいるだろう。
そもそも排卵・月経は妊娠するためにある。体調維持に必要なホルモン量はもっと少なくていいのである。毎月、卵巣は排卵という大きな変化をおこし、排卵出血・卵巣腫脹などの危険ととなりあわせになっている。子宮は、卵巣からのホルモンにより内膜を肥厚させ、受精した卵を受け入れる準備をして、妊娠がなければ剥がれて出血し、これを生理という。生理も生理痛が強かったり、量が多くて貧血になったり大変である。
これらのことはすべて妊娠するための変化である。現在妊娠する意思のない人は、極端に言うと排卵しなくてもいいのである。妊娠したいときだけ排卵すればいいのであって、ヒト以外の哺乳類では発情期にのみ排卵し、妊娠するものが多い。
人類は近年、排卵誘発剤とピルという作用の相反する2つの薬剤を手に入れた。ピルは排卵を抑制し、ホルモンレベルを必要最小限に近い状態にする。それにより上記の危険な卵巣の変化や苦しい月経に伴う症状から解放されるようになった。安全性は非常に高い薬剤である。さらに卵巣がんの発生率が1/2になるという。
上記の人にわざわざピルを飲めとは言わないが、なにも排卵誘発剤を処方する必要はないだろう。経過観察でなにか不都合でもあるのだろうか。