研修医制度の功罪

平成20年7月11日(金)
新聞によれば、小児科の研修医が大都市に集中し、地方には一人もいない県もあるという。現在の研修医制度が、厚労省の主導でできたときからこうなるのはあたりまえだと思っていた。
研修医は早く一人前の医師になりたい気持ちが強いので、最も勉強するし修練を積みたいと思っており、そのための最適の施設のある大都市の病院に集中するのは当然であろう。一体だれが、僻地の設備の少ない、充実していない施設を希望するだろうか。
今の研修制度ができるまでは、研修医の大多数は大学病院の自分の目指す科に入局してキャリアを積んでいた。歴史ある大学はいずれも研修制度が充実しており、何年間かかけてその人物に適した研修を行う。その大学が責任を持って派遣する病院が、大都市から地方までたくさんあり、それらの施設を過不足なくまわらせることによって、さまざまな経験をつませ、医師としてのバックボーンをつくるようにするのである。
明治以降、わが国に最も合うように長い時間をかけて作り上げられたこの大学医局制度を、厚労省は壊してしまった。小泉改革という名のもとに、アメリカの真似そのものの研修医制度を無理やり作ったのである。今になってあわてて医師を増やすとか、僻地に行くための医師を養成するとか、できもしないことを言っているが、もとの大学医局制度に戻せばいいのである。今ならまだ医局制度を経験した医師が大学にいるし、すぐに以前のようにできるだろう。でも、あと10年もすれば戻すことすらできなくなってしまう。厚労省は今こそ決断してほしい。