平成19年7月18日(水)
作家の山口瞳氏が亡くなって10年以上経つが依然として根強い人気がある。彼の著書で最も好きなのは「行きつけの店」で、贔屓の店を中心にして氏の人間関係、付き合いをエッセイ風に書いて味わい深い作品である。高倉健が主演した「居酒屋兆次」のモデルになった店もこの中にあった。「縁」を大切にする作者の心意気があらわれていて、どれも一度は行ってみたいと思う店ばかりである。
先ごろ金沢に行った時も作品の中にあった「つる幸」をまず予約し、その後代替わりしているとの情報から先代の弟子の「つる屋」に予約を変更した経緯がある。倉敷、長崎にも作品に書かれた店があり機会があれば行ってみたいものである。
最近、山口瞳夫人が「瞳さん」という本を出した。これは最も身近な妻の立場から見た作家の姿が描かれており興味深い。そういえば壇一雄夫人の話を聞いて沢木耕太郎が書いた「壇」という作品もあった。いずれも作家の等身大の姿をありのままに表していて魅力的であるが、生きているときには書けないのだろうと思う。