HPV(ヒトパピローマウイルス)への対処

平成17年8月9日(火)
細胞診で軽度の疑陽性の場合は、1~3ヵ月後に再検することが多い。ほとんどの場合、同じ疑陽性の状態が続き、精密検査をしても軽度の異型上皮という悪性ではないが正常でもないという結果が多い。特に若い人の場合はHPVというウイルスの感染による細胞・組織の変化のせいであることがわかってきた。そのままにしておくと、ほとんどの場合は疑陽性のままでそのうち正常にもどることも多いが、一部では悪性に進むこともあるので一定の期間ごとに細胞診をしなければならない。これは本人にとっては不安な気持ちになることに加えて、通院の負担も結構大変だろう。異常を見つけても経過を見る以外には方法がないというのは、どう考えても医療側の責任でなんとかしなければならない問題である。
そこで、HPVに効果のある薬を塗ることによりウイルスを殺し、感染細胞が修復されれば細胞診も正常に戻るのではないかと考えた。ちょうど、いくつかの大学で同じ方法の治療をした論文が発表されていたので、軽度の異型性の続く患者さんにインフォームドコンセントの上治療を試みた。細胞診の異常の認められた部位に1~数回薬を塗るだけであるが、副作用はなく患者さんには何の問題もなかった。
その結果は、現在までのところ32例中14例は正常にもどり、13例は変わらず、1例は進行し、4例は脱落例(来院せず)であった。全くの無治療で経過をみた場合と比較しなければならないが、副作用がないことを考えるとなかなか良好な結果だと思う。もう少しこのまま続けてみるつもりである。