生理不順

平成30年4月6日(金)
年度の変わり目のこの時期になると生理不順で来院する人が増える。社会人になって仕事を始めたとか、通学のために家を出て一人暮らしになったなど、環境の変化・ストレスが原因と思われることが多い。こういった生理不順は、環境に慣れて落ち着いて来れば自然に治るのであわてて来院しなくてよい。
生理は排卵が起こって2週間後に始まるもので、妊娠すればもちろん生理は始まらず妊娠の兆候が現れる。つまり、妊娠のために排卵が起こり、妊娠してないと生理が始まるわけである。ヒトは一生の間に妊娠する回数はそんなに多くはないので、生理のほとんどはムダというと語弊があるがなくてもいい、ない方が楽な体の変化である。哺乳類はおしなべて排卵・生理が起きるものだが、げっ歯類(ネズミなど)のようにしょっちゅう排卵が起きるものと、トラやライオンのようにめったに排卵がないものがあるが、ヒトは排卵の頻度は多い方だろう。そのヒトのなかでも、排卵が毎月ないタイプの人も結構みられ、不妊になると脅されていたがそんなことはない。たとえ年に数回の排卵でも妊娠は可能で、古来このタイプの人たちも何の問題もなく生き残ってきたのである。
低用量ピルが使われるようになって欧米では30年以上、我が国では20年になるが、ピルを内服している間はほとんど排卵が無くなる。それでも妊娠に影響がないことがわかってきたし、生理が毎月なくても問題ないことがわかってきて、むしろ毎月生理をおこさない方がいいと勧める場合もある。まさにトラやライオンタイプになることである。特別の場合を除いて、生理不順を心配しなくていいのである。

春爛漫

平成30年3月29日(木)
先週は桜の開花宣言が出たとはいえ雨模様で肌寒かったが、今週になって晴れの日が続き、桜も満開になりすっかり「春」になった。あの寒い冬はどこに行ってしまったのだろうかと思わせる陽気である。これだけ季節の変わり目がはっきりしているから、我々の気持ちも改まり、季節にまつわる文学・芸術が生まれてきたのだろう。比治山の桜も満開になっているが、週末はもう散り始めるに違いない。
昨日は比治山下の公園に夜桜見物にはちょうどいい場所があり、偶々帰省していた次女と孫たち、春から広島で働く息子も参加して夜桜酒飯としゃれこんだ。スカイウオークを使って山に登ってもいいのだけれど、すぐ近くにこんないい場所があるのなら使わない理由はない。大人たちがゆっくり酒を飲んでいる間、孫たちは遊具で遊んでいるので楽である。
毎年、この季節には一回はカミさんと酒飯を携えて夜桜見物をして「あと何回見ることができるのだろう」と話すのだけれど、今回は寒くもなくちょうどいい気温だった。こういうさりげない楽しみの積み重ねこそが人生で、このような普通の日常生活が過ごせるのはありがたいことだとしみじみ思ったことである。

「卵巣癌をめぐる最新情報」

平成30年3月23日(金)
島根大学医学部産婦人科、京哲教授による表題の講演があった。「がん」に関しては原因の究明と治療についての研究が行われてきたが、なかなか決定的な方法がないのが現実である。世界中で色々な試みがなされてきて、血液のがんを含め限られた「がん」に対しては有効な治療法も見つかってきたが、多くの固形がんに対しては困難な状況が続いている。
卵巣癌については卵管の先の「卵管采」が原因で発生する卵巣癌の存在がわかってきて、子宮筋腫などで子宮を摘出する際、以前は卵巣と卵管を残していたが、卵巣はホルモンの分泌に必要なので残すとしても、卵管は同時に切除することが卵巣がんの発生を防ぐ上で有効であることがわかってきた。自分が勤務医の頃はまだこのような知見はなかったので、子宮摘出術の際に卵管切除することは念頭になかったが、当時から同時に切除していた医師もいたようである。なぜ同時に切除していたのかは不明であるが、先見の明があったということか。
今行われている研究なども聞くことができて、このような講演会はいつも刺激になっていいものである。

「帰れないヨッパライたちへ」

平成30年3月15日(木)
表題は学生時代に「帰ってきたヨッパライ」が大ヒットし、フォークの神様といわれ、その後精神科医になりロンドンに留学した後、北山医院を開設、その後九州大学の教授になるなど活躍を続けている北山修氏の著書である。思い起こせば2002年にザ・フォーク・クルセダースの新結成記念・解散音楽会が東京で開かれ、其の後大阪でも追加で行われた時に行くことができて、二度と見ることのできない貴重な演奏会を楽しむことができた。その際に北山修氏の歳を重ねて一層魅力を増した姿を見て、充実した人生を送ってきたのだろうなと感心したものである。
表題の本は、北山氏がどうして精神分析医になったのか、フォークルとして一世を風靡した後どのような人生を歩んできたのかを述べながら、同時に精神分析を通して我々の心のあり方についての見解を示し、これからどのように進んでいけばいいのかなどを、「表と裏」「二人だけの関係と三角関係」「嫉妬」などのキーワードで真摯に語っている。
氏は作詞家としても優れていて、心に響く詩をたくさん書いている。はるか昔、学生時代には「きたやまおさむ詩集」は座右の銘とまではいかないが、よく読み返していたものである。やはりいつになっても氏は我々のあこがれとなるスターなのだと思ったことである。

人工妊娠中絶とピル

平成30年3月9日(金)
我が国で約20年前にピルが解禁されるまで、人工妊娠中絶は多かった。それまでの避妊方法は、副作用の強い中用量のピルかリングぐらいしかなかったからである。リングも今のように避妊効果の高いものではなかったので、リングを装着したまま妊娠しているケースが見られることもあった。今は、副作用の少ない低用量ピルが使われるようになり、リングの避妊効果が高くなったこともあり人工妊娠中絶は減ってきた。
それでもやむを得ず人工妊娠中絶をしなければならない場合は、安全かつ不安のないように慎重に行っている。当院では9時に来院した場合は麻酔・処置後、昼に帰宅してもらい1週間後に異常ないことの確認を行う。その時に今後の避妊についての話をするが、ピルを希望される人も多い。ピルは避妊効果も高いが、副効用である生理痛や経血量の軽減、生理周期の安定など優れた効果があり、将来の妊娠のための調整にも有用である。
低用量ピルが解禁されてからずいぶんピルを処方してきたが、これからもピルの普及に努めていきたいと思う。

西区民音楽祭

平成30年3月2日(金)
いよいよ3月になって暖かい日もちらほらあり春がそこまで来ているように感じる。この季節になると市民の文化活動の一環としての音楽会があちこちで開かれるようになる。昨年も尺八「山の会」として西区民文化センターで行われた西区民音楽祭に出演したが、今年も来る3月4日(日)に10数名で出演する予定である。
「山の会」は広島を中心に精力的に尺八の演奏・指導活動している山本観山師に指導を受けている人たちの集まりで、20代の男女(主に広島大学生)から70代以上の高齢者まで多彩なメンバーがそろっている。それぞれ真摯に技術の向上に向き合っていて、自分も頑張らねばと思う日々である。今回は尺八二重奏曲「郷音(さとね)」とメンバーの広大生が編曲した尺八三部奏曲を演奏する。当日はいくつもの合唱団やギター、胡弓、口笛、ハワイアンなど多彩な演奏が行われる予定であるが、いつも色々なサークルがあるものだと感心している。

めぐり合わせ

平成30年2月23日(金)
車に関しては不思議と買った車種が製造中止になることが多かった。初めは研修医になってすぐに買った中古車で三菱ギャラン・ラムダ、金がないので頭金なしで24回分割払いだった。次に買ったのは自分にとって初めての新車、日産ブルーバード・マキシマV6ターボだったが5年で故障したので次は日産マキシマ3000㏄にしたが、これも5年で調子が悪くなった。以上の車種はいずれも早いうちに製造中止になっている。次は製造中止にならないことをディーラーに確かめて買ったトヨタ・アバロンだが、なんと買って半年もたたないうちに製造中止になった。いい車だっただけに残念だったが長く快適に乗ることができた。
買ったとたんに製造中止になるということは、人気がない車種だということになる。今はクラウンに乗っているのでまさか製造中止になることはないだろうと思うが、レクサスにとってかわられるかもしれない。車以外にもテニスの会は参加して数年で発展的解消になったし、以前所属していた尺八の会は主催者が亡くなって会そのものの活動がなくなっている。こういうのは単なるめぐり合わせなのかと考えることがある。どうなのだろうか。

「旅する力」

平成30年2月15日(木)
表題はノンフィクション分野で活躍している作家、沢木耕太郎氏の長編エッセイである。かつて氏の名作「深夜特急」をワクワクしながら読んだことを思い出して読んでみた。「深夜特急」は氏が20代の時にインドからパリまでバスを乗り継いで行ってみようと思い立ち、その行程を記した青春記とも言うべき著作であるが、なぜ氏がそのようなことをしようと思ったのかなどが詳細に書かれていて、腑に落ちるところが多かった。体力と気力の充実した若い頃に知らない土地を訪ねて見分を広めるのは素晴らしいことで、まさにその時しかできないことである。中学生の頃に読んだ小田実氏の「なんでも見てやろう」という本も、外国に行くことが難しかった時代にフルブライトの特待生でアメリカに留学して世界を回ってきたことを書いたものだが、当時は別の世界のことのように感じたものだったが、「深夜特急」は大人になってから読んだので共感するところが多く、実に楽しめた。
氏の初めての旅は小学校3年生の時、遊びに行って食事をごちそうになった友人の家で、「マツザカヤへ行くことになっているので」と母親に言われて家に帰ったけれど「マツザカヤ」というところへ自分も行きたくなって、わずかな小遣いを持って駅に行き人に尋ねながら「松坂屋」にたどりついたことだった。それ以来、中学・高校・大学時代に様々な旅をしてきたことを読むと、「深夜特急」に行きつくのも当たり前だと思ったことである。その時にしかできないことをするのはすばらしいことである。

オープンカンファレンス

平成30年2月9日(金)
広島市民病院産婦人科のオープンカンファレンスが開かれ、婦人科主任部長の最終講演があったので参加してきた。まず放射線治療科の松浦寛司主任部長による「知っておいていただきたい放射線治療~子宮頸がんと転移性骨髄圧迫」と題しての講演では、世界と我が国の子宮がんに対する治療法の違いを示し、放射線治療の優れた点などを詳しく説明して実にわかりやすかった。我が国は放射線治療が欧米に比べて遅れていて、手術優先だったのがさすがに少しずつ変わっているようである。
婦人科の野間純主任部長による「当科で行うMinimally Invasive Surgery」と題した講演では、腹腔鏡手術がどのように始まってきたのかという歴史から広島市民病院での手術実績を提示して、従来の開腹手術から体にかかる負担を最小限にする腹腔鏡手術に替わってきている状況を示した。子宮筋腫、卵巣嚢腫、異所性妊娠などに対する腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べて侵襲の少なさ、回復時間の短縮や美容上の観点からも優れた方法である。子宮頸がんについても同様だが、問題は技術習得が難しいということだろう。子宮頸がんの手術は開腹でも難しい手術であり、腹腔鏡では一層難しい。誰でもできるというわけにいかない。広島市民病院の4800例の腹腔鏡手術件数の蓄積の上に成り立っている技術である。そのエキスパートの野間主任部長が定年で辞めるのは残念なことであるが、この病院のレベルの高さを改めて認識したことである。

あたりはずれ

平成30年2月2日
ミシュランと双璧をなす食のガイドブック、「ゴ・エ・ミヨ」の最新版を手に入れた。東京、北陸、瀬戸内(岡山、広島、山口)のおいしい店を紹介しており、結構知った店もあったので早速行ってみた。宮島口、桟橋の近くにある「宮島ボッカ アル・ケッチアーノ」は山形を代表するイタリア料理店「アル・ケッチアーノ」の奥田シェフが手がけた店で、山形と広島の食材を取り入れた味も値段も納得できる良い店だった。まだできて2年目だそうであるが、そのうち予約が取れなくなりそうなので今のうちに行っておかなければと思った次第である。
「ゴ・エ・ミヨ」に載っている店で金沢、福井、岡山にも行ったことのある店があり、いずれもよかったので広島市内の某料理店に行ってみた。この店は以前、開店して間もない頃一度行ったことがあったが、可もなく不可もなしといった印象で、あまり好みでなかったので以後自分のリストから外していた。それが今回、結構いい店として載っていたので予約して行ってみたが大外れだった。まずアルコール類の値段が高く、居酒屋風のカウンター料理屋の中では最右翼だろう。料理も普通で1時間以上客は他にいなくて、あとから2組の客が入ってきたがいずれもガイドブックを見てきた若いカップルのようだった。
ミシュランにせよゴ・エ・ミヨにせよ当たりはずれがあるのは仕方がないが、今回は自分で昔リストから外していただけに一層残念だった。