「孤独の価値」

平成31年3月8日
表題は工学博士で小説家の森博嗣氏の著書である。最近、本屋で立ち読みをしていて見つけた(2014年刊)。氏は名古屋大学で建築の研究と教育をする傍ら、96年「すべてがFになる」で作家デビュー、その後は着実に固定ファンを増やして2010年にはAmazon10周年記念の行事、国内でよく売れた作家20人の中に入りAmazon殿堂入りしている。現在は大学も辞めて山間の広い土地を購入して、趣味三昧の生活を送っているという。
ほぼ2年半電車には乗っていない、毎日ほとんどの時間一人で遊んでいる、家には家族も住んでいるが顔を合わせるのは食事の時と犬の散歩に出かける時ぐらい。仕事で人に会うこともめったになく、ほぼメールで済ませる。買い物は95%は通信販売、電話が鳴ってもでない(ほぼ間違い電話だから)、手紙も来ない(みんな住所を知らない)。年に数回は友人が訪ねてくるが、それはそれで楽しい。一人でする活動は、自分の庭で(林もある広大な庭でレールを敷いて、模型列車を走らせている)工事をしたり、ガレージで工作したり、書斎で読書をしたりで、日曜もなければ盆や正月もない。外泊、外食もせず徹夜もしない。
氏は時間をかけてこのような生活ができるようになり毎日楽しく過ごしているが、周りからは孤独にみえるだろう。でも実際は豊かな満足した生活を送っていることを、「絆」にとらわれてかえって不自由になっている人々に説いているユニークな著書である。