朝晴れエッセー

令和5年4月6日
表題は産経新聞の一面に毎朝載っているエッセーで、一般読者からの作品であるがなかなか面白いのでいつも初めに読んでいる。600字くらいの文章に投稿者の人生が詰まっている内容のものがみられ、しみじみ考えさせられることが多い。
今日のエッセーは66歳の男性の書いた「お古」という題の作品で、三男に生まれた作者は小学1年から高校卒業まで新しい制服を買ってもらったことがなく、いつも兄たちのお古を着ていたという。中学生の制服もみなと並んでみると自分だけ色が剥げたようで、いやだったらしい。「お古」という言葉は自分にはトラウマのように響くという。自分も男ばかりの三男坊であるがあまりお古を着た記憶はないけれど、学校にあがる前の普段着はお古だったかもしれない。
別の日の「母の贈り物」は72歳の女性の作品で、自分たちの金婚式を祝って母が大きな花束を贈ってくれたことを母の人生をサラッとなぞりながら書いている。いずれも含蓄のある内容でこのコーナーの一層のファンになった。

桜満開

令和5年3月30日
暖かい日が続き桜満開になった。平和公園でも昼は弁当を広げて花見を楽しんでいる人が多く見られる。川沿いの桜も咲き誇って道行く人を楽しませている。比治山も黄金山も桜満開である。まことに我が国は春の訪れを桜で祝うことができてうれしいことである。桜をテーマにした歌は数多くあるが大抵はヒットしているようだ。森山直太朗の「さくら」福山雅治の「桜坂」スピッツの「チェリー」コブクロの「桜」ケツメイシの「さくら」などが人気の曲だそうだが、我々の世代ではやはり「さくら、さくら、やよいのそらは…」が懐かしい。
そういえばかつて大学入試の合格発表はキャンパスに番号を書いた紙が掲示されて、それを見ないと合否がわからなかった。だから地方から東京や京都の大学を受験した人は、合否を知らせてもらう学生アルバイトに頼んでいたものである。電報で知らせてもらうが合格なら「サクラサク…」という文言が多かったし、不合格なら「サクラチル…」だったようだ。桜は我が国にとってなくてはならないものになっている。

和を以て貴しとなす

令和5年3月23日
侍ジャパンがWBCでアメリカを破り優勝した。閉塞感のあった日本中が歓喜の雄たけびをあげたようだった。アメリカのチームはすごい選手ばかり揃えていて、少しでもスキを見せれば大量得点を与えてしまう布陣である。わが侍ジャパンは大谷選手をはじめみんなの素晴らしい活躍でメキシコには辛勝、アメリカにもわずかの差で勝つことができた。チームを見ていると皆自分よりもチームのため、相手を思いやる姿勢がみられて実にすがすがしく感じられた。まさに「和を以て貴しとなす」である。
我が国は聖徳太子の時代から孔子のこの言葉を国の根幹に置いていた。それを今に至るまで大事にしていることが確認できたのはうれしいことである。日本はこうして世界の中でも独自の発展を遂げてきた。それに対して儒教発祥の国は今や「力を持って貴しとなす」国になってしまっている。力は必要だけれどそれだけだと滅びることが歴史的にわかっているのに力を持った独裁者は同じ轍を踏んでしまうのである。我が国は「和を以て貴しとなす、礼も必要」をこのまま貫いていくことが大切である。

「良性子宮疾患に対する新たな治療戦略」

令和5年3月17日
表題は帝京大学医学部産婦人科・長坂一憲教授の講演である。WEB参加の予定だったが医会の総会もあり、会場の医師会館に行くことになった。出席者はほぼ役員ばかりで顔を合わせるのは久しぶりだったが、このような場は必要だと思った。
講演はWEBなのでスクリーンの演者の話を聞くだけである。ならば自宅でWEB参加と同じである。県外など遠くの会場ならWEBのほうがいいけれど近くなら会場に集まったほうがいいようだ。これからは自由に選択できるようになるのがベストと思う。
講演内容は、子宮筋腫・子宮内膜症・子宮内膜ポリープなどの良性疾患についての治療にGnRHアンタゴニスト(レルミナ)を使うことを推奨するといったことだったが、これらの疾患は月経(ホルモン)が関与したものである。妊娠するために月経があるとはいえ女性は大変である。今後どのような治療戦略があるのか考えさせられる講演だった。

オンライン資格確認

令和5年3月9日
遅ればせながらオンライン資格確認の機械が届いた。レセコンにつないで4月から使用開始する予定である。政府はマイナンバーカードと保険証を紐づけし、現行の保険証を使えないようにすることで、マイナンバーカードを普及させようとしているからだ。そのために各医療機関に読み取り装置が必要になり、多大の出費がかかる。援助があるとはいえ毎月の保守料金もバカにならない。故障などの不備も多いと聞く。
今までの保険証で何の問題もなくやって来れたのに、マイナンバーカードを義務付けてしまうことでどれほどの利益があるというのだろうか。多大な出費に見合う効果があるのか甚だ疑問である。政府機関にとって税金は人の金だからいくら使ってもいいと思っているのだろう。コロナでもバカげた金の使い方をしてそのつけは後の世代に残すことになっている。バブルの前まではこの国は借金がなかったのに、じゃぶじゃぶ国債を発行して借金まみれになってしまっている。それぞれの国でその国民はその民度にあった政府しか持てないといわれているが、今の状態を見ていると我が国の民度は地に落ちたとしか思えない。

子宮内膜症は増えている?

令和5年3月3日
講演会などで演者が「子宮内膜症が増えている」というが当院のような小クリニックにはそんな感じはない。勤務医の頃もそれほど多いという印象はなかったのでいつもなぜなのかと思っていた。子宮内膜症は、子宮内膜が卵巣や他の臓器に生着して卵巣からのホルモンにより月経と同じ変化を起こすために起きる病気で、典型例は卵巣にチョコレート嚢腫をつくり、周囲と癒着を起こし痛みが強くなる。以前は良い治療法がなく手術が中心だった。手術しても再発が多く、治療薬ダナゾールも副作用があって使いづらかった。
そこで登場したのがLEP製剤(低用量ピルなど)である。安全で画期的な薬で、どれだけ助かったかわからない。ピルの安全性は欧米では常識になって使われていたのに、厚労省は待ったをかけて10年据え置き、20数年前にやっと認めた。ピルは排卵を抑制するので避妊もできるし、生理痛も改善する。以前講演で「生理の回数が増えたのが子宮内膜症が増えた原因だ」「少子化になったので女性が一生の間に450回生理を経験するようになったが、かつては多産なので50回くらいしか生理がなかった」と説いていた先生がいたが一理あると思う。いずれにせよピルが開発されてよかった。ピルの普及が進めば進むほど子宮内膜症は減ってくると思う。

「ウイルス学者の絶望」

令和5年2月24日
表題は京都大学の准教授でウイルスの専門家、宮沢孝幸氏の著書である。ジャーナリスト鳥集徹氏との共著「コロナワクチン失敗の本質」に次ぐ宮沢氏渾身の作品である。帯には「私の35年にわたるウイルス学、免疫学、分子生物学、ウイルス共進化学を研究してきた経験に基づいて、学者として信念をもって執筆しました」とあり、本当に日本のことを考えて、「今までの新型コロナ対策は間違っていますよ、負のスパイラルに落ちてしまっていますよ」とわかりやすく一般人向けに講義している。氏は正しい知識をマスコミにも政治家にも発信を続けてきたが、声の大きい御用学者や不安をあおるマスコミには歯が立たず、表題の「ウイルス学者の絶望」になったわけである。
新型コロナが日本で発生した時も、すぐに収まるだろうと考えていたが、海外の状態に煽られて正しく対処してこなかったことを歯がゆく思っている。まともなウイルス学者なら新型コロナに対しては氏のように考えるのだろうが、誰も発信せずあっという間に間違った方向へと行ってしまった。この3年間の損失は甚大である。どうしてこうなってしまうのだろうか。

COVID19

令和5年2月17日
新型コロナ感染症はもう新型ではなくなったのでCOVID2019と呼ぶことにしたという。発生した場所をつけるのが普通だけれど、中国に気兼ねして「武漢コロナ」とは言わないらしい。「スペイン風邪」「エボラ出血熱」「日本脳炎」など発生地域の名前がつくのにおかしなことである。今年の5月には5類感染症に格下げされて、やっとインフルエンザ並みになるのは遅すぎるけれどよかった。そもそもは安倍元首相が退陣するときに「新型コロナは5類にする」と言っていたのに2類相当のままだったために膨大な予算と、人的被害が生じたのである。その間、厚労省は何をしたか、全数把握などという愚挙をいつまでもやって入院患者の見舞いもできないようにしてしまった。発生当初は仕方がないが、もっと早くリーダーシップをとって改めるべきだった。専門家と称する委員会に丸投げして、いつまでも対応を変えなかったが、これこそ事なかれ主義の典型である。効果のはっきりしない副作用の強いワクチンを打たせまくって、副作用で亡くなった人たちの責任をどのようにとるのだろうか。またしてもうやむやにしてしまうのだろうか。

「京味物語」

令和5年2月10日
表題はノンフィクション作家、野地秩嘉(のじ・つねよし)氏の著作で東京、新橋にあった名店「京味」の一生を綴った作品である。「京味」は漫画「美味しんぼ」で知って一度は行ってみたいと思っていたが、残念ながら機会がなかったけれど、この作品で店を身近に感じることができた。
店主の西健一郎は京都・木屋町で割烹をやっていた西音松の四男に生まれた。音松は西園寺公望のお抱え料理人で、当時の調理師番付で西の横綱になるほどの腕をもっていた。健一郎は高校一年生の正月明けに父親の音松から京都の料理屋に修業に行くように命じられる。1,954年、17歳、厳しい修業が始まった。先輩からのいじめも激しかったがじっと耐えて頑張った。10年以上続いた料理人はいないほど厳しい店だったが、健一郎はそれに耐え「真」といわれる板前になった。自分の店を持ちたいと考えて準備したが、親方から妨害され東京で独立することにした。30歳の時であった。それからはその腕と家族全員でサービスする姿勢、客が客を呼び東京の名店になったのである。
2,019年の5月にも著者は京味で食事している。その際、西は「90まで頑張って料理を作る」といっていたのに8月に訃報を知って驚いている。著者をして「日本料理の最高峰」と言わしめた「京味」は2,020年店を閉めた。
阿川佐和子氏の「過ぎてようやく気づく。京味は、味だけでなく、店の佇まい、気遣い、動き、会話、香り、リズム、気配…、すべてが日本の文化そのものだった。」との帯の言葉がある。

人工妊娠中絶薬について

令和5年2月2日
現在、人工妊娠中絶薬ミフェプリストンについての審議が行われている。この薬は30年以上前にフランスの製薬会社ルセルが開発したもので、RU486と称されて動物実験を経て人に適応されるようになった。当時、属していた研究室で後輩がこの薬をマウスに使い薬の血中濃度の変化を調べ、ほぼ妊娠中絶できることを確認し学会で発表した。その後フランスでは一般に使われるようになったが日本には入ってこなかった。現在は妊娠9週までは使われるように審議されているらしい。
妊娠を継続する必要なホルモンであるプロゲステロンの受容体に結合して流産(中絶)させるので、早い時期ほど効果がある。問題なのは流産が始まると痛み、出血などが起こり不安になって受診したくなることが多いと思われるが、24時間対応の医療機関以外では対処できないことである。また一部遺残することもありその場合は手術が必要になる。だからこの薬は着床した後せいぜい2週間ぐらいの間に使うべきで、それなら生理と同じような出血で済むだろう。これが本当のアフターピルである。承認するならこの条件ですべきと考える。