飲み過ぎた

平成23年11月28日(月)
今年も滝口ビルの忘年会がイタリア料理店「アル・マンドリーノ」を借り切って行われた。この忘年会はクリニックの入っているビルのオーナーの滝口耳鼻科と内田(内科)クリニック、すずらん薬局が合同で20年前から行っている会である。私の所も開業以来メンバーに加えていただいているので今回がもう15回目の参加になる。毎年の節目として意義ある会であり、同じビルで働いていてもなかなか顔を合わせることの少ない人たちとの交流の場でもある。
滝口耳鼻科とすずらん薬局のスタッフは初めから多かったが、すずらん薬局は店の数も増えそれに伴って人員も増えて大所帯になっている。今回の滝口ビル忘年会は全部で62名という大人数になった。滝口先生とすずらん薬局の協力で恒例の大ビンゴゲームが行われ、美味しいワインがふるまわれ楽しい時を過ごすことができた。問題はその後である。普段はもっぱら日本酒でワインはあまり飲まないのだが、じつに美味しいワインだったので知らないうちにかなり飲んでしまったらしい。締めのあいさつの途中でろれつが回らなくなったらしく、最後まではしゃべれなかったようだ。後で記憶がよみがえってきたが、恥ずかしくて穴があったら入りたい心境である。こんなことはこの15年間で初めてである。まだまだ飲み会はあるのでこれからは気をつけようと深く心に誓った次第である。

競争

平成23年11月23日(水)
寒くなってきたがあいかわらず自転車通勤している。もっともアシスト自転車なので、普通に走っていても他の自転車を抜いてしまうのでいささかうしろめたいような気がするが。でも中には負けん気を出して必死に漕いで抜き返していく自転車もある。抜かれたことで競争心が湧いて抜き返すのだろう。生物はこの「競争」があることで生き延びてきたのだと思う。
ヒトは一回の射精で億単位の精子を放出するが、これらの精子は先を争って卵子に殺到し、そのうちの1匹が卵子の中に入ることで受精が成立する。まさに数億分の1の確率である。これも競争によって勝ち残った強い精子と合体することで、より強い子孫を残すという生き延びるための仕組みなのであろう。

平成23年12月30日(金)~平成24年1月3日(火)を休診にします

養老孟司著「解剖学教室へようこそ」

平成23年11月15日(火)
養老孟司氏の著書を久しぶりに読み返してみたが、改めてその面白さに感じ入った。氏の文章は、本当はとても難しいことや複雑なことを簡潔に分かりやすく示してくれるので、なんだか自分が賢くなったような気がするが、これが氏の能力のすごさであろう。
「解剖学教室へようこそ」は氏が東大の解剖学の教授だった56歳のときに出版された。それから2年後大学を退官し、その後の活躍は世間の知るところである。学生時代、基礎医学の解剖学や組織学、ウイルス学や寄生虫学などは自分には全然面白くなく、これをやらなければ大好きな臨床に進めないので無理して頑張ったが、当時この本があったら解剖学にも興味がわいたかもしれない。
人体のマクロからミクロへ、生老病死とDNAの連続性、心とからだの関係など興味深い内容をさらりと説明して最後は宗教書のようである。この本の解説を僧侶がしているが、相通ずるものがあるのだろう。

薬の話

平成23年11月8日(火)
日本人は薬好きだといわれるが、確かに医療機関では多量の薬が処方されている。医者が処方しすぎるのか、患者さんが求めるのか、その両方の相乗効果なのか、とにかく医療費に占める薬剤費の割合はアメリカの3倍、フランスやドイツの2倍である。明らかに薬の使い過ぎだろう。
本当に必要な薬は約300種類で、これだけでほぼ対処できるというエッセンシャルドラッグの概念がWHOで提唱されて久しいが、わが国では世界一高い薬が17,000商品も売られている。同じ薬でも日本以外の国と比べて高い薬価になっていて、喜ぶのは外資系も含めた製薬会社だけである。一方、昔から使われていて評価の定まった薬は薬価が下げられて、製薬会社は利益が出ないから製造中止にしようとしている。
当院では薬の処方は実に少なく、本当に必要だと思う薬しか処方しないようにしている。ただし、患者さんが漢方薬や他院で処方されていた薬を出してくれと言われた場合には、一応自分の考えを言った上で、それでも求められたら仕方なく処方することはある。もちろん納得されて今まで使われていた薬を止められる患者さんも多い。思うに自分のような医者ばかりだったら製薬会社はいやがるだろうが、薬剤費は大幅に減るのではなかろうか。

受診時定額負担

平成23年11月1日(火)
現在、75歳未満の人は医療費の3割を負担し、75歳以上の人は1割を負担している。これから高齢者が増えることは確実なので、政府は受診する度に100円を別に徴収するという提案をしている。これが受診時定額負担という提案であるが、受診回数の多い高齢者にとってはきびしいことになると思われる。消費税と同じで初めは3%だったものが今は5%になったように、100円は200円になりそのうち500円1000円になるかもしれない。
民主党は先の選挙で国民に媚びるような甘い政策を一杯掲げて、自民党の政治に飽きていた人々の心をつかんで大勝し政権を担った。ところが実際に国のかじ取りをしてみると現実のきびしさに気がつき、経験不足もあって右往左往しているところである。国を企業に例えると、前経営陣にとってかわった新経営陣は全くダメで、経営をさらに悪化させつぶれる寸前にしてしまったということである。前の経営陣の方がマシだったと皆が思い始めているのが現実であろう。国民の負担を増やす経営(政治)などアホでもできる。昔から重税を科すのは悪代官と決まったものである。受診時定額負担には反対である。

先輩の受賞

平成23年10月25日(火)
医学部の同窓会報を見ていたら、1学年上の先輩が「松岡良明賞」を受賞したという記事があった。この賞は山陽新聞社会事業団より、がん撲滅に貢献した個人または団体に年間1組与えられるという。受賞したT先輩は卒業後医局に入らず、自身の痔の手術をしてもらった病院の門を叩き、尊敬する院長のもとで30数年間、痔の手術と大腸内視鏡をひたすら行ってきたそうである。
岡山県北の農家の三男として生まれ、親族には医療関係者は一人もいなくて医師の何たるかも知らず、朝9時出勤し夕方6時に帰宅するのが当たり前と思っていたところ、尊敬する院長から「T君、臨床の医者というものは、そういうことではいけんじゃろうが」とぼそりと言われた言葉が天啓となって以後、元日以外は年中無休で仕事をしてきたそうである。
自分もT先輩と同じく農家の三男として生まれ、親族に医療関係者はいないところまでは同じで、親しみを感じるが、その後の彼のぶれない生き方と努力には頭の下がる思いがする。
学生時代、マージャン牌の正しい(美しい)ツモり方を教えてくれたT先輩、おめでとうございました。

ファームノラ

平成23年10月17日(月)
昨日はクリニックの内装を完成することになっていたので待機するつもりでいたが、夕方までかかるということで天気もいいし津和野方面にドライブに出かけることにした。津和野は何度か訪れたことがあるが、この日は山口大学オーケストラの部員が5名来て野外ライブでバッハ、モーツアルトの4重奏などを演奏していた。考えてみれば息子と同じ年頃の学生たちが一生懸命演奏しているのである。思わず「よかったよ、これからも頑張って」と声をかけたが実際いい演奏であった。惜しむらくは駐車場の管理をしているオッサンが、手打ちそばの店を紹介したので行ってみたが最悪だったことである。これ以上まずくは作れないという代物だった。
帰りに191号線沿いにある「ファームノラ」というユニークなレストラン?で美味いピザとカレーを堪能して、まずいそばの仕返しをした。ここは自然のままの林の中に、手作りの丸太小屋のような建物をいくつか建て、屋外でも食べられるようになっている。結婚式も行われるそうである。入口で2匹の犬が友好的に迎えてくれるのも気持ちがいい。立木の間にロープでブランコがぶら下がっていて、ハイジのブランコのようだった。また行ってみたいと思ったことである。

回文

平成23年10月11日(火)
日本語は漢字、ひらがな、カタカナを自由に使って表現できる、習得は難しいけれど世界で最もすぐれた言葉だと思う。日本語の言葉遊びに、上から読んでも下から読んでも同じという「回文」がある。「たけやぶやけた」「談志が死んだ」などはよく聞くが、今まで聞いた中で傑作だと思う回文は「酢豚作りもりもり食ったブス(すぶたつくりもりもりくつたぶす)」である。文章がなめらかで無理がなく意味もはっきりしている。週刊誌で読者からの回文投稿のコーナーの作品を見ることがあるが、これをしのぐ回文を見たことがない。
高校時代、息子のクラスメートに岡君と長岡君がいたそうである。ある時クラスの一人が「できた!」と叫んで披露したのが「岡の顔が長岡の顔(おかのかおがながおかのかお)」という回文であった。実在の人物を使ったこの作品も傑作だと思うが、日本語はこういう言葉遊びもできるすばらしい言語である。

心ない言葉

平成22年10月2日(日)
当院でピルを処方している患者さんが、職場の婦人科健診のために健診施設を受診したところ、異常を指摘されたと不安そうに来院された。担当の医師が「腹水がたまっているので詳しい検査が必要だ」、「あなたの卵巣は小さいから妊娠は難しいかもしれない」と言ったという。本人は驚いて「かかりつけの病院があるので」と、あわてて当院に来られたわけである。
分娩歴もあり、婦人科の異常はないことを確認していたので、おかしいと思いながら診察したところ、確かにダグラス窩に少量の腹水は認められた。でも、後屈子宮では構造的に腹水の存在がわかりやすくなるだけで、異常とはいえない。また、卵巣についてもピルを使用していると排卵が抑制されるのでやや小さくなることはあるが、ピルを中止すればすぐに元にもどる。その旨お話したら安心されたのでほっとしたが、こんなことで患者さんを不安にさせた医師に対して思うことがあった。
医療の目的は治療を含めた「癒し」だと思うが、これが本当に難しいことは日々感じることである。それでも少なくとも、患者さんが不安な気持ちになるような言葉は慎んでもらいたい、と強く思ったことである。