わが国の少子化を考える

平成26年5月23日(金)
慶応義塾大学産婦人科名誉教授の吉村泰典氏による表題の講演があった。氏は内閣官房参与もされているわが国の産婦人科の重鎮である。結婚年齢の上昇と未婚率の増加に伴って、少子化が進むわが国の現状をなんとかしようと活動しておられる。このままでは高齢者1人を若者1人が支えることになり、人口の減少と相まってわが国の存続が危うくなると具体的に数字を挙げて説明された。
政府はどうすれば人口が増えるか様々な角度から検討してるようだが、こういうものは時代の流れと共に起きているので簡単には変えられない。どの民族にも歴史があり人の一生に例えられるような時代の変化がありその流れは誰にもどうしようもないことである。今の日本は成熟期から老年期に入っていると思われるが、安定した息の長い老年期にするのか、急速に衰えていくのか今が正念場である。子孫のために息長く生きていけるようなシステムを考え、残すことが我々の世代の役割である。こんなことを考えるようになったのも、文字通り自分たちの子、孫、を折に触れて目にするからだと思う。

平均寿命世界一

平成26年5月16日(金)
WHOによれば2014年の世界の平均寿命1位は昨年に続いてまたもわが国で、なんと84歳だという。これは男女合わせた平均の寿命で、男性だけの平均は80歳、世界で8位。ちなみに男性の1位はアイスランドで81,2歳。日本の女性の平均寿命は87歳、昨年に続いて堂々世界一である。わが国が世界一になっているのは長生きしている女性のおかげである。
世界の平均寿命は70歳だから平均14年も長寿ということになる。なぜ長寿なのかはわからないが、周辺諸国や紛争地域などのニュースを聞くにつけ、あらゆる面でわが国は快適に生きていける稀有な国なのだと思う。環境、品性、歴史、食べもののおいしさと工夫、どれをとっても世界のトップクラスであり、それゆえ長寿世界一を続けていけるのである。ありがたいことである。

連休終了

平成26年5月8日(木)
連休も終わり昨日から診療再開、いつもの生活に戻った。連休中は法事で一日笠岡に帰った他は孫たちとゆっくり過ごすことができた。瀬野川公園でテニスをしたり、森のレストラン「ファームノラ」へ行ったり。ここは最近、一層人気が増しているようで、開店11時前に行ったのに先客がいて、その後続々客が来て、去年よりテーブルが増えているのに12時前にはほぼ満席になった。ここのボルシチはじつにうまい。鶏の燻製、パスタ、石窯ピザなどを森の中の手造りのテーブルで食べるのは気持ちがいい。立木を利用したブランコ、ドッグランの広場などがあり犬を連れてくる人も多い。夜は近所の焼き鳥屋「かんかんかん」で宴会。気がついたら体重が2キロ増えていた。これをどうやって戻すかが今後の課題である。

賑やかな一日

平成26年5月2日(金)
日曜日、岡山の友人夫妻が娘さん夫婦と孫2人を連れて我が家へ遊びに来てくれた。友人家族とは子供たちが小さい頃から毎年のように家族旅行をしていたので親戚のようなものである。次女が孫2人をつれて久しぶりに里帰りをしているので、皆で集まって旧交を温めようという算段である。近くに住む長女夫婦も2人の孫を連れてきて親・子・孫総勢15人、広くもない我が家は満杯である。6畳の和室2部屋のふすまを取っ払って子供や孫たちの宴会場所に。我々はダイニングルームでビール、ワイン、日本酒、昼前から夕方まで延々と談論風発。時々孫たちが歓声を上げて走りこんできたり、賑やかなひとときを過ごした。
友人一家と初めて一緒に旅行に行った時には子供たちはまだ小学生にもなっていなかったのに今は結婚してその当時と同じくらいの子供がいて宴会をしている。人生はくり返しくり返し過ぎていくというが、まさにそう思えるような感慨深い一日であった。

すばらしい西条の酒

平成26年4月25日(金)
国賓としてオバマ米大統領が来日しているが、初日の夜は安部首相が以前この欄にも書いたミシュラン三ツ星の鮨店「すきやばし次郎」でもてなし、オバマ大統領をして「生涯最高の鮨だった」と言わしめたという。その際に供された日本酒は広島が誇る西条の酒、金の花びら入り「加茂鶴ゴールド」で、お土産は山口県の酒「獺祭」と江戸切子のグラスだった。
いい水といい米、受け継がれてきた酒造りの伝統技術のおかげで、日本の風土に合った日本酒が飲めるのは幸せなことである。どれもうまいが数ある酒の中から「加茂鶴」と「獺祭」が選ばれたことは、じつにうれしく名誉なことである。西条にはいい酒を造っている醸造元は他にもたくさんある。これからもいっそうおいしく飲めると思えば頬がゆるむ。

生物には「むだ」がない

平成26年4月17日(木)
先日の新聞に、大阪大学の研究によれば、いままでは退化器官で必要がないと思われていた虫垂に腸内の免疫をつかさどる役目があることがわかった、という記事があった。学生時代には虫垂は退化器官でいずれ無くなるだろうと教わった記憶がある(ニワトリの虫垂は大きくて消化に役立っているようだとも教わった)。
必要のないものなら無くなっていてもいいはずの「虫垂」があるのは不思議であった。きっと何かの役割をはたしているはずだと思っていた。だから、帝王切開や子宮筋腫の手術の際、「これから先に虫垂炎が起きないように盲腸(虫垂)を取っておきましょうか」と好意で患者さんに話す先輩医師の言葉に違和感を持っていた。かつては虫垂切除は最もポピュラーな外科手術であり、多くの人が虫垂切除術を受けていたがこれからは慎重にならざるを得ないだろう。
生物が種として生き残る時、ムダなものをかかえられる余裕はないはずである。生存競争はそんなに甘くない。現在ある器官は、たとえそれがどんな役割を果たしているのかわかっていなくてもすべて必要なものであると考えられる。手術による器官の切除は慎重のうえにも慎重にするべきである。

久しぶりの京都

平成26年4月10日(木)
3月下旬のことであるが、京都博物館で印象派展(パリ・セーヌ・ノルマンディーの水辺をたどる旅)が開かれているので、久しぶりに行ってきた。京都では宿がとりにくいので大阪に泊まり翌日京都に行くという、いつものパターンである。ありがたいことに予約の取りにくい居酒屋「島之内一陽」がとれたのでうまい肴でゆっくり楽しめた。値段もリーズナブルで、これなら人気店になるだろうと納得。店主は可部出身とのこと、これだけの店を競争の激しい大阪の中心でやっているのは立派である。
翌日は東寺を訪れて国宝五重塔や春季特別公開の国宝・重文を鑑賞、桜の咲く前だったので人出もそれほどではなく、ゆっくり見ることができた。ところが京都博物館の印象派展は人を見に行ったようなもので、早々に退散した。昼は伊勢定が撤退した広島でうなぎに飢えていたのでミシュラン一つ星の「まえはら」へ行き、実においしいうなぎを食べることができた。寿命が延びたと思った。(年をとるといいことがあると「寿命が延びた」と言い、さらに高齢になると「冥途の土産」というらしい)

一瞬の桜吹雪

平成26年4月3日(木)
木曜日なので午後からは休診、暖かい花見日和に誘われて中央公園西の本川土手にみごとに咲いた桜の下でコンビニで仕入れた弁当とビール、対岸の桜もみごとで気持ちのいい時間を過ごすことができた。満開を過ぎた桜はもう散り始めており、春風が吹くと花びらが舞い下りてきて芝生に毛氈を敷いたようになってまことに風情がある。休日ではないので人も多くなく皆のんびりと最後の桜を楽しんでいた。ハトが寄ってきたのでつまみの枝豆を小さくくだいて撒いてやったら先を争ってついばむことしきり。そのうち豆がなくなったら一斉に飛び立ってどこかへ行ってしまった。
このようなおだやかな春の日をこれから何度も味わえるとは思えない。「今」を心から楽しむことができて良かったと引き上げて帰ったら夕方から雨になった。まさに一瞬の楽園であった。人生は常に「今」しかないのだと改めて思ったことである。

節酒のすすめ

平成26年3月28日(金)
元来、アルコールに弱いのに好きである。生来の食いしん坊なので、おいしく食べるためにアルコールをたしなむという面はあるが。1カ月前から下肢不快感があり、手術する前の静脈瘤の症状に似ていたので再発を疑った。アルコールを多めに飲んだ翌日に症状が起きるようなので、しばらくアルコールをひかえてみたが若干違和感があるようなので、4年前に下肢静脈瘤の手術をしていただいた逓信病院の杉山医師に診てもらうことにした。
最悪、深部静脈瘤→血栓症を覚悟していたが、下大静脈から両下肢の静脈までエコーで丁寧に調べても異常はないとのこと。とりあえず安堵したが完全に症状が消えているわけではない。やはりアルコールを控えるのがいいだろうと思う。歳と共にやめたり控えたりしなければならないことが増えてくるのは仕方がないことである。タバコは十数年まえに止めた。ゴルフは腰痛のためあきらめた。アルコールはこれから控えるつもりである。次はなんだろうか。

スプリンクラー設置の義務化

平成26年3月19日(水)
従来は一定の面積以上の病院に義務付けられていたスプリンクラーの設置が、すべての有床診療所に義務付けられる方向で検討されている。原因は福岡の医院の火災により死者が出たためだと思われる。スプリンクラーを設置するには、建物をそのように設計しなければならず、費用もかなりかかるうえに、もし誤作動でもすれば高価な医療機械が水浸しになってしまう。
今まで何十年も問題なくいっていたのに、わずか1件の防火扉の開閉さえ無視しているような未熟な施設の不始末のために、全国の有床診療施設に必要以上の義務を負わせるのは問題である。どれだけムダになっても自分たち(政府・役人)が非難されないようにとの、事なかれ主義の典型の義務付けである。
以前、麻酔薬のケタラールがたった1件の不良外人の不始末のために麻薬指定になり、全国の医師・獣医師が多大な迷惑を被っているのも同じ構造である。もっとも、なにかことが起こった時、すぐに責任を追及する一般人の姿勢にも問題があるので、公的機関が保証できるのはここまででそれ以上は「自己責任」だという線をはっきりさせればいいのである。
当院は無床診療所なのでスプリンクラー設置の義務はないが、すべての有床診療所への義務化はおかしいと思う。