同門会報

令和3年4月15日
毎年この時期になると同門会報が送られてくる。我々の時代は医師になったらほとんどの人は大学の医局に籍を置いて研修し、先輩医師にいろいろ教えてもらい技能を習得していくのが当たり前だった。そしていろんな病院に年単位で派遣され経験を積むことになっていた。幸い出身の岡山大学は中四国ほぼすべてに関連病院があり、たくさん経験することができた。
同門会報には31の関連病院の報告記事と9つの同門会支部だよりが載っていて、各地の様子が開業して医局人事から外れた今でもわかるのがうれしい。ただ、教えを受けた先生方の中には亡くなられた方も多く、自分も歳をとったものだと感じる。昨年の新入医局員は8人で、その紹介記事は楽しい。これからいろいろなことがあるだろうが、頑張ってほしいと思う。
同門会報を読むと新米医師だったころを思い出してなつかしい。

朧月夜

令和3年4月9日
4月になって日が長くなり、日中は暑さを感じるようになった。夕方散歩していると、周りの風景に小学校の時に習った「朧月夜」を思い出させるような風情を感じた。ほとんどの家が農家だった田舎では、学校に通うときに田んぼの畦道を通ることもあって、まさに「朧月夜」の歌詞と同じだった。菜の花も暮れ行く山の端の風景も、霞がかかったような夕暮れの生暖かさも、まるで自分たちの村の風景を歌っているように思っていた。歌詞は文語調で韻を踏んでいて曲もぴったり合っている。ただ、文語調なので言葉を正確に理解していなかったことを、ずいぶん後になって知った。「夕月かかりてにほひ淡し」の「にほひ」は匂いではなく「目に立つ色合い」という意味で、「さながら霞める」の「さながら」は「のこらず、すべて」ということである。小学校の時には習わなかったような気がするのだが…。やはり文語の詩は風情がある。絶えてほしくないものである。

菜の花畠に 入日薄れ、見渡す山の端 霞ふかし。
春風そよふく 空を見れば、夕月かかりて にほひ淡し。

里わの火影も、森の色も、田中の小路を たどる人も、
蛙のなくねも、鐘の音も、さながら霞める 朧月夜。

エイプリルフール

令和3年4月1日
朝の通勤時に新しいスーツで初出勤と思われる多くの若者とすれ違った。希望に燃えて社会へ踏み出す彼・彼女たちに「これからいろんなことがあるだろうが頑張ってな」という思いと同時に「若いっていいなあ」の思いが交錯した。
今日は4月1日、こんなニュースがあったらどうだろう。
①武漢コロナウイルスは人為的に作られたことが確認された。
②東京オリンピックは中止することになった。
③北方領土・尖閣諸島・竹島は正式に日本の領土になった。
④職場での健診は義務でなく任意とする。
⑤がん・老化を穏やかにソフトランディングできる医療体制が整う。
⑥反重力装置が発明された。
まだまだいくらでもありそうだが1つや2つは本当になったりして?

聖火リレー

令和3年3月26日
いよいよ東京オリンピックの聖火リレーが福島から始まった。テレビで一斉に報道しているが、多くの人は醒めた目で見ているように感じる。何しろ国内でもコロナが終息していないのに海外から多くの選手・関係者が大挙して入国するのである。世界中のコロナ異変種が入ってくる可能性があるし、もし選手村や関係者の間でクラスターが起きたら、医療をはじめちゃんとした対応が本当にできるのだろうか。
我が国では第3波がおさまりかけているが、実際はどうなるかわからない。海外からの観客は受け入れないそうだが、チケットの払い戻し額も半端ではないし国内の観客をどうするのかもわからない。とにかく日本には大きな損失しかないことは間違いない。海外の反応は多くは開催反対と言われている。結局、IOCとそれに伴う放映権などの利権(海外の利権である)で開催することにしたのではないか。さらに、来年の北京での冬季オリンピックは、中国が「コロナを克服した」と世界に向けて宣伝するので、もし今年日本がオリンピックを中止したら、世界から馬鹿にされると思っているのではないか。こんな時こそ「オリンピックは中止する」という決断をすれば後世に残る偉業になるのではないか。

ハイブリッド研修会(2回目)

令和3年3月22日
「周産期トピックスープレコンセプショナルケアとメンタルヘルスを中心に」と題して川崎医科大学産婦人科・下屋浩一郎教授の講演が行われた。ただし会場とWEBのハイブリッドでの開催で、今回はWEB参加にさせてもらった。会場で直接聞くのは臨場感があっていいのだが、スライドなどの文字が細かい場合読み取れないこともあり、その点パソコンの画面なら隅々まで確認できるので快適である。WEB参加の講演会はこれで3度目であるが、初めて行われたのは去年の春の産婦人科学会で、非常に快適なことがわかりコロナが落ち着いてもWEBは残してほしいと思ったことであったが、今回も一層そのように思った。
コロナ以前とコロナ以後では世界の状態は変わってしまうだろう。様々なことがより合理的でより快適な方向に行くのは自然である。オリンピックもこれからはどうなるかわからない。まさに世界が変わっていくのである。

コロンファイバー検査

令和3年3月10日
今まで胃カメラはおろか健康診断なるものは一切受けたことがなかったが、大腸検査をすることになってしまって先日、大腸ファイバー検査をしてもらった。健康診断の検査をしたことがないといっても、不調なことがあればそのための検査・治療はおこなうのは当然である。今までに2回の入院・手術を受けている。
2月中旬に下血があり3日間続いた。専門のクリニックに連絡して検査できる日をおさえてもらい、半日の木曜日を休診にして準備(これが結構大変である)、まな板の上の鯉になった。O胃腸科のO先生は多数の検査を行っているベテランの先生で、まったく苦痛なく検査をしていただいた。3日間の下血後は検査までの2週間全く症状はなく何の不調もなかったので、どこからの出血か不思議だった。幸い危惧したような所見はなく、問題ないということで一安心したが、健康診断で潜血(+)のためにこの検査を勧められるヒトは多いと思われるが、一日仕事である。
以前、脳のMRI検査をしたときはうるさいのを我慢するだけでよかったが、大腸の検査はそうはいかない。年を重ねるごとに体のさまざまなところに不調が起きるのは仕方がないので、これからはもっといろんなことが起きるのだろうと思った次第である。

16年前

令和3年3月3日
今日は桃の節句、3が並んだ。16年前の診療日誌を見たら、3月3日の日誌があった。気温の差は結構あるが確実に春が近づいているというほどの内容だが、今と全く同じである。やはりヒトは季節の移り変わりに大いに影響を受けるのだと思った。我が国に四季があり緑が多く水がきれいで豊富なことが、情緒豊かな国を作ったのである。せっかく春の足音が近づいているのに、コロナの後遺症?は消えず皆外出を控えて慎重姿勢を崩さない。昨年の今頃は緊急事態で頑張って、一旦収まったのに第3波がひどかったので仕方ないのだろう。早く例年のように気分よく花見、会食、講演会、コンサートなどに自由に行けるようになりたいものである。広島市で最近行われたPCRの結果では、市中のコロナウイルスの発見数は実にわずかである。すぐには自由に動けそうにない。困ったものである。

残り梅

令和3年2月24日
春のような温かさに誘われて光市の冠山総合公園の梅の里へ行ってみた。ここには100種類、2000本の梅の木が植えられていて、赤や白、薄紅の花が咲き誇っている。盛りはやや過ぎているようだったが、少なからず人が訪れていたがそれほど密ではない程度の人出だった。山全体に梅の木が植えられていて、歩きやすい通路が頂上に向かって幾層にも連なり、ゆっくり歩きながら梅の香りを堪能する。ところどころに句が読まれた石板があって風情を誘う。以前、来た時は正面の門から入ったが、混んでいたので裏から直接冠梅園に入る道を偶然見つけて歩いて登った。結構いい運動になったが、杖をついてゆっくり登る高齢の夫婦やジョギング姿で駆け登る若者などが散見された。今まさに三寒四温で寒い日と暖かい日が交互にやってきているが、次第に暖かくなっていくのだろう。春を予感する一日だった。

「医療現場は地獄の戦場だった」

令和3年2月17日
表題はハーバード・メディカルスクール第2の教育病院、プリガム・アンド・ウイメンズ病院のERに勤務する大内啓医師の著書である。新型コロナウイルス感染で運ばれてくる患者さんを受け入れているERの様子を淡々と描いているが、そのすさまじさは驚くばかりである。酸素飽和度の下がった患者にはマスクによる酸素投与、改善しなければ挿管を行うが、一度でうまく管が気管に入らない場合は死ぬ可能性が高いという緊張の中で、どんどん送られてくる患者さんの治療にあたるのは手に汗を握る心持である。仕事を終えて全身を完全に消毒して帰宅しても、家族とは接しない生活を続けている。
後半では大内氏がなぜアメリカで医師になったかを書いているが、父親の仕事の都合で小学校卒業後にアメリカに渡って英語も中途半端、劣等生だったが23歳で一念発起、30歳まで猛勉強をして医師になった。4年間のメディカルスクールの学費26万ドルは学費ローンで賄い、部屋代と生活費は親のすねをかじったという。医師になってからは内科と救急医療の専門医資格を取り、東日本大震災の時もDIMATの一員として石巻市で3週間医療活動を行った。
日本とアメリカの医療制度の違いも的確に書いていて、実に興味深く読ませてもらった。

ハイブリッド研修会

令和3年2月10日
広島県で毎年行われる産婦人科研修会が、今回は関係者の尽力で会場とWEBのハイブリッドで開催された。演題は岩成治島根県産婦人科医会会長による「子宮頸がん征圧のための最適な検診」と山田秀人元神戸大学産婦人科教授による「最新の母子感染対策:トキソプラズマ、サイトメガロウイルスほか」の2題である。今回はWEBで受講したが、やはり講演そのものは分かりやすく快適だった。会場で受講する場合、後ろのほうだったらスライドの小さな文字が読めないことがあるし、前に座っている人が邪魔で見えないこともある。WEBではこれらのことはすべてクリアされるし、講演の先生も仕事場や自宅(島根県と北海道)から講演できる。普段なら広島までの往復の旅費、滞在費、講演後の接待などかなりの負担がかかるし、講師の先生も1時間の講演なのに1日以上の時間を費やさなければならない。これらがすべて必要なくなるので合理的である。問題なのは人と人とのつながりが希薄になることである。やはり実際に会って話をしたり、食事をしたりすることで共感できることが大切である。コンサートなどは臨場感がいいのであって、CDやDVDでは限界がある。でも研修会についてはコロナ終息後もWEBと半々になっていくのではないだろうか。