休日の患者さんへの対応

平成16年10月12日(火)
休み明けは体がすぐには仕事モードに適応せずいささかしんどい。当院は土曜日も夕方まで開けているので、連休は日曜と祝日が続く時だけである。もっとも最近はこの連休(月曜の振り替え休日をハッピーマンデイというらしい)がちょくちょくあるが。この貴重な連休の時はたまに広島を離れることがある。今回も広島を離れていたのであるが、一人心配な患者さんがいたので、もし何かあればいつでも病院を紹介できるように、紹介状と検査データを持参していた。幸い何もなかったのでほっとしている。
当院は分娩を扱っていないのでいいのだが、もしお産をしていれば広島を離れることは不可能で、そうしたいなら代わりの医師を当直に頼んでからでないとどこにも行けないのである。以前、小豆島の病院に勤務していた時は島から出るのは代わりの医師が来てくれた時だけであった。一度だけ、夕方から高松市で会合があり最終の船に乗り遅れてあせりまくって、島内で開業されている大先輩に何かあったらよろしくと連絡して快諾をいただいたことがあったが、日頃恐れ多くて普通ならそんなことを頼めるなんてできるはずもない大先輩に意を決してお願いしてしまった。あの時は、高松市内に泊まったのだが朝までよく寝られず、朝一番の船で島に帰ったが大いに反省した。
今はこのようなことはないので、精神衛生上おおいによろしい。ありがたいことである。

最近のHRT(ホルモン補充療法)

平成16年10月9日(土)
40代後半から50代にかけて、のぼせやほてり発汗などがおこって気分の落ち込みも見られるのを更年期障害というが、この治療にHRT(ホルモン補充療法)が行われてきた。以前から日本では漢方薬なども用いられていたが、いまひとつ切れが良くなかった。欧米では女性ホルモンを使用することにより、更年期障害の著しい改善がみられたので広く使用されるようになった。我が国ではホルモンに対してなんとなく拒否反応があったが、医師が勧めマスコミでも有用性が言われるようになると次第に広く使われるようになってきた。
ところが、最近米国と英国でおこなわれた大規模な検査で、長期間のHRTは乳がんになる可能性が2倍になるとの結果が出たため、HRTは短期間で使用するという申し合わせになった。ただし大腸がんは3分の2になり、骨には有効で総合的に見て寿命は変わらないとのことであった。
以前はHRTの長所ばかりが喧伝されて、おもに欧米で使いまくられていたのに一転してあまり使わないようにとのことだが、生命予後が変わらないのであればHRTによって症状が改善して快適に過ごせるなら使うべきだろう。

光陰矢の如し

平成16年10月6日(水)
一日の長さ、一年の長さは、それまで生きてきた長さに反比例して感じるらしい。つまり、3歳の幼児にとっての一年はそれまで生きてきた長さの3分の1であるが、50歳の人では一年は50分の1にすぎない。一年が早いわけである。だから歳を取るごとに一年が早くなると感じるのもむべなるかなである。
時間は常に一定の速度でながれていると思われていたが、そうではないとの理論を明らかにしたのはアインシュタインであった。さらに別の理論では、時間は物質の変化のスピードによって決まり、変化の激しい所では時間が早く進み、ほとんど変化のないところでは時間が止まっているに等しいという。都会では時間が過ぎるのが早く、田舎では遅いと感じるのはそのせいなのかもしれない。
本当の所、時間は実際に感じる感覚と現実に過ぎて行く速さの両方で変化するものだと思うが、このところ一年が早すぎる。困ったものだ。

秋晴れの日

平成16年10月4日(月)
久しぶりに秋晴れでいい天気である。やっと秋らしくなった。こんな日は仕事を休んで野山を散策してみたくなる。私の場合は散策などというものではなく、弁当とビールが必要であるが。きれいな湧水があればコーヒーを淹れてもいい。奥深い谷川のほとりで尺八を吹いてもいいし、寝転んで文庫本を読んでもいい。じつに気持ちの良い一日となるだろう。
現実には仕事を休むなどとんでもないことで、野山を散策するような気持ちの余裕もない。それでもそうしたいと思わせるような秋の日であった。

禁煙

平成16年10月2日(土)
タバコをやめてもう4年を過ぎた。はじめはやめる気は全くなかったのだが、鼻ポリープのため呼吸が苦しくなり止めざるを得なくなったのだ。ある日それまで 吸っていたタバコを「止めた!」と言って捨ててから、一本も吸っていない。家にもクリニックの自室にも、封を切ったマイルドセブンと灰皿、ライターがいつでも吸えるように置いてある。はじめの頃は時々横目で見ていたが、そのうち気にならなくなった。
その後時々、タバコを吸っている夢を見ることがあった。タバコを吸っている自分に気がつき、「しまった」と思って目がさめるのである。まさにニコチン中毒である。だいたい体に悪いものや、してはいけないことに限って味わい深いものが多いのも事実である。タバコなどは合法的なぎりぎりの、体には悪いが味のあるものであろう。他にもこれに似たことやモノはそこそこあるが、それらを味わえない人生は味気ないと思う。せいぜい体と相談してぎりぎりで味わっていきたいものだ。

台風がまた上陸

平成16年9月29日(水)
朝から雨でいやな天気だ。また台風が九州に上陸したとのこと。午後からはビルがきしむ音がした。しっかりとした造りのビルなので心配はないのだが、音がすると気持ちが良くない。今年は台風が日本に上陸した回数が、過去最高とのことである。過去最高ということは、今まではどうであれいつも何が起こるかわからないということである。
我々の日常診療でも何が起こるかわからない。今まで起こったこともないようなことがおきるかもしれない。そのときにあわてないようにしようといつも思っているのだが、実際におきたらうろたえるだろう。以前、地震の時は診療中であったが腰がひけてしまった。幸い医療器具を入れておく戸棚が倒れてガラスが割れただけで人的被害がなかったのでよかったが。いくら「備えあれば憂いなし」といっても、「天災は忘れた頃にやってくる」のでどうしようもないだろうが。

手術と放射線治療

平成16年9月27日(月)
10年以上前に子宮がんの手術をされて、現在再発もなく過ごしておられるCさんは足が腫れており、やや不自由でなんとかならないだろうかと言われる。以前から(今もそうだが)少し進行した子宮がんは子宮を取る際に周辺のリンパ節を切除することが一般的で、そのためにリンパの流れが滞り下肢がぱんぱんに腫れることがあった。これに対してはいい治療法がなく、本人にとってはまことにしんどいことで、一生その状態でいるのは苦痛であろう。じつに気の毒である。
欧米では手術よりも、放射線による治療の方が主な国もあり、治療成績も手術とほとんど同じようである。どちらの治療も一長一短があるが、やはり治療する側としては両者の良い点と悪い点をきちんと説明して選んでもらうしかないだろう。日本ではがんの治療は手術だとの思い込みがあり、ドラマ「白い巨塔」でも手術の名手をカリスマの如くあがめているようである。
放射線科の医師と協力し合って治療をするようになればよいのだが、現実にはなかなか難しい。患者にとってどうするのが一番いいのかだけを考えていれば、妙な縄張り意識なくうまくいくとおもうのだが。

疲れ気味

平成16年9月25日(土)
ここのところ飲む機会が続いていささか疲れ気味である。それなら飲みに行かなければ良いのだろうが好きなもので、つい出かけてしまうのだ。来週は少し控えようと思っている。
今日は朝からばたばたと忙しく、二日酔い気味でいっそうしんどかったのであるが、昼はしっかりと鍋焼きうどんを食べてしまった。最近では飲んだ翌日の昼はこればっかりである。食欲が落ちることは、まずないのがこわい。疲れたので早く帰ってER(ビデオ)でも見てゆっくりしよう。

食いたい放題

平成16年9月22日(火)
天高く馬肥ゆる秋である。ごはんがおいしい。体重の心配さえなければ飯をぐいぐい食ってみたい。現実には、ごはんにたどりつくまでにビールとつまみで八割方腹一杯になっている。そこで、茶漬けで一杯、漬物で一杯、いくらでも食べたいと思うがもう入らないのが実にくやしい。
色川武大という作家の著書に「食いたい放題」という秀逸な作品があったが、これを読むとこの作家は本当に食べることが好きなのだと思う。そして、その考えに共感する部分が多く、自分も同じ体質だと改めて思う。食いしん坊にとっては昼食は夕食を何にするか考えながら食べるので、その内容もそれによって決ま る。間食などすると夕ごはんが美味しくなくなるので、しない。当然体重が増えるだろうが秋である。美味しく食べられるうちが花だと思っている。

ドックや検診には近づかない

平成16年9月18日(土)
ドックや検診で何か異常を指摘されて来院される人がいる。ほとんどの場合、問題ないことが多いのでその旨をお話しすると安心される。異常を指摘されてからずっと心配されており、かなりストレスだったようである。無理もない。だれでもそう思うのは当然である。
私はいつも「体調が良く、どこも何ともない人は医者に近づかない方がいいですよ。痛かったり、不都合があれば来て下さい」と言うことにしている。どんな健康な人でも探せば少しぐらい不都合な部分は見つかるものである。昔、経済状態も悪く労働条件もよくない時代は健康診断も必要であったかもしれないが、今はどうだろう。栄養状態は良く、快適な生活を営んでいる人が多いなか、いたずらに検診を受けるのは(?)と思う。私自身、体調が悪くなければ一切検査しない。治る病気は少々遅れても治るだろうし、その逆もまた真なりと思うからである。
そのかわり、信頼できる相性のいい医師を見つけておいて、心配なことがあれば相談に行き、そこから色々な科に紹介してもらうのがいいだろう。