月別記事一覧 2025年9月

久闊を叙する

令和7年9月26日
猛暑の日々が続いていたが、やっと秋の兆しが感じられるようになった。最近、大学時代の友人と一夕を共にし、大いに語り合えたのは実にうれしいことだった。また、予備校時代の友人とも酒席を共にできたことも感慨深いことであった。どちらの友も人生を全うしている姿を見ると本当に良かったと思うし、友人であったことを誇らしく思ったことであった。まさに「久闊を叙する」である。考えてみれば若い日々のことは、恥ずかしいことや未熟だったことばかり思い出されてしまうが、いろんなことに真摯に向き合ってきたことも確かなことである。旧友に会うとその頃のことが思い出されて、自分の原点はここなんだと知らされる。そして人生の終焉になって自分を肯定できるのは幸せなことである。願わくば自分がかかわってきた人たちもそうあってほしいと心から思う。
感傷的になったのは秋になったからなのかな。

「日中外交秘録」

令和7年9月19日
表題は在中国大使として活躍していた垂秀夫(たるみひでお)氏の回顧録で、「中国が最も恐れる男」との帯がついた文芸春秋読者賞を受賞した著書である。垂氏は京都大学法学部を卒業後外務省に入り、チャイナスクールで一貫して中国・台湾にかかわってきた。2,023年退官後は立命館大学教授で活躍している。
これを読むまではチャイナスクールの人たちは中国に何を言われても言い返せない、弱腰ばかりだったり手なずけられたりなのかと思っていた。政治家も中国詣でをする人が多く、現在の中国は日本を不当に貶めてばかりしていることが大いに不満だった。垂氏の一貫した強い志と、中国の要人や裏要人などとの人脈をつくり、日本と中国が今後どのように付き合っていくかを歴史的に俯瞰して見据えながらの回顧録はじつに面白かった。目からうろこが何枚も落ちた。。
文章が滑らかで読みやすいのは聞き手・構成の城山英巳(しろやまひでみ)氏のおかげだろう。日本と中国は歴史的には日本にとって切っても切れない間柄である。今はいい関係ではないが、先のことはわからない。つねに先を見据えて戦略を立てて行かないと日本のためにならない。政治家には特に読んで欲しいと思った。

開院28周年

令和7年9月12日
平成9年9月10日に開院してから28年経ち29年目に入った。早いもので四半世紀以上この場所で診療をしてきたことになる。その間、最大のピンチはコロナに感染し、重症化したため県病院に入院したことである。挿管まで行われたが幸い回復して3週間の入院で済んだ。他にも市民病院に入院したり、静脈瘤の手術で逓信病院の杉山先生にお世話になったりなどがあったが、おおむね元気で仕事ができたのはありがたいことであった。
今まで続いたのは患者さんが来院してくれることが第一であるが、支えてくれる家族・スタッフのおかげである。深く深く感謝している。医会などの手伝いもさせてもらったおかげで、美味しい店もいっぱい教えてもらった。この頃は美味しい店を新たに見つけようという情熱が衰えてきたように思うが、アンテナはいつも張っている。
いずれにしても現在元気で診療できていることはありがたいことだと思っている。さあ今日も頑張ろう!

「散歩のとき何か食べたくなって」

令和7年9月5日
表題は池波正太郎氏の著作で、昭和52年発刊された。その後文庫化されて現在64刷になっている超ロングセラーである。池波氏の著作は鬼平犯科帳をはじめ、いまだに本屋の棚にはそろっていて、氏の死後35年経っているのに売れ続けているのはすごいことである。ベストセラー作家でも死後売れ続けるのはほんの一握りである。
内容は、氏の日常よく訪れる食べ物屋を記したものであるが、どれも食べてみたいと思わせる筆力で、店のあるじとのかかわりもさりげなく書いていて、心地よく読める。さらにコロナブックスからグラビアにしてそれらの食べ物屋を紹介した本も出ている。神田、浅草、銀座、渋谷、目黒などの店と写真、氏のエッセイを載せている。現在も残っている店もあればなくなった店もある。氏の「生きることは食べることだ」を感じさせるエッセイと共にこれらを見れば、自分がそれらの店に行っているように思える。
氏のファンの中には、本当に店をすべて回った人もいるという。そのような思いをさせる力のある作品である。