令和元年10月25日
自転車通勤していると途中のビルや店の移り変わりが身近に感じられる。並木通りから旧広テレ方向に向かう途中に、和風料理店に改造している場所があった。しばらくして医会の会合の時に広島の店に詳しい先生から「先生のクリニックの近くに新店ができたらしいけど行きましたか」と聞かれ、あの店だとひらめいた。
その店のすぐそばにある「こけもも」へ行った際に聞いてみたが知らないとのこと。「こけもも」は洋食なので和食の店は関心がないのかと思った。前を通ってみると入り口の床を丁寧に拭いている女性がいる。声をかけてみると、奥から主人らしい人が現れ、「9月20日に開店したばかりです」と名刺をくれた。「元念 瀬川」という店で広島で勢力を広げている「笹組」出身とのこと。早速予約して4人で行ってみたが、接客も料理も申し分なく値段もリーゾナブルで再訪したくなる店であった。「こけもも」も今のように世に知られる前に偶然見つけた店だが、この店もそうなるように思う。偶然とは面白いものだ。
月別記事一覧 2019年10月
偶然見つけた店
風水害
令和元年10月18日(金)
大型台風が中部・関東地方を直撃し激しい雨のために甚大な被害が起きている。今日も再び雨量が増えるという。ここしばらくは自然災害が続いているが一体この国はどうなっていくのだろうか。周辺の国との危機も現実になるかもしれないうえに東日本大震災、九州に続いて中国地方の水害、そしてこのたびの風水害である。南海トラフの地震もほぼ確実に起きるというが、もし起きれば日本は壊滅する。
近代になり都市化が進んだ日本は電気が止まっただけでパニックになり機能不全におちいって1週間ともたないだろう。道路は分断され交通マヒが起き、食料不足は当然のこと病院の機能もなくなる。かつてベストセラーになった小松左京著「日本沈没」が現実になるかもしれない。都市化が進むほど自然災害に弱くなる。東北地方の津波の時もそうだったが、常に「想定外」のことが起きる。昔から「地震、雷、火事、親父」というが親父の権威が落ちた今では「親父」の代わりに「水害」を入れた方が正しい。日頃から危機に対する対策は考えておくべきだが、実際にところはどうしようもないと思う。そうなったらケ・セラ・セラである。
「トップ屋魂」
令和元年10月11日
表題は広島県府中町生まれの作家、大下英治氏の自叙伝である。副題は「首輪のない猟犬」2012年発行、散歩の途中立ち寄ったBook Offで見つけたので読んでみると実に面白い。広島大学を卒業して業界紙の記者になり、すぐに週刊文春のトップ屋と称する第一線のジャーナリストとして活躍するようになった。その記事「三越の女帝・竹久みちの野望と金脈」は三越の社長・岡田茂氏の失脚のきっかけになった。この時の取材のありさまなどが書かれていて、文字通り手に汗握るようで、高校時代からジャーナリズムにも興味を持っていた自分としては、氏のたどってきた道を書いたこの本は実に面白く、一気に読んだ。
氏は1歳の時に被爆したが、その時広島市内にいた父親は亡くなってしまい、母親は女手一つで3人の男の子を育てた。極貧の生活で氏は中学卒業後は三菱広島造船所で溶接工として働き、のちに広島大学に進み多感な青春時代を過ごした。元来は作家志望で在学中に広島師範学校出身の梶山季之氏と知り合ったのも、のちにジャーナリストになる伏線だったのかもしれない。氏のように苦労して身を起こしひとかどの人物になった話は好きである。そういえばスタンダールの「赤と黒」も高校時代に読んで印象的だった。最後は破滅するが…
「かぜうどん」
令和元年10月4日
現存している桂枝雀のCD,DVDの中で一番気にいっているものを選ぶとしたら、平成9年9月に姫路市民会館で演じた「かぜうどん」は外せない。枝雀の「まくら」はユニークで面白いのだが、この時は低い調子で物売りの声などを披露して次第に本題の屋台のうどん屋に話を持って行き、屋台を担いで寒い夜に街なかでうどんを売って歩く情景を描写する。酔っぱらいとうどん屋の掛け合いも面白いが、ばくちを打っている連中に気にいられてたくさんのうどんが売れる様子もいい。最後に風邪をひいている客がうまそうにうどんをすすり食べ終わるまでの情景がじつに見事で、思わずうどんが食べたくなる。サゲのあと観客が立ち上がって帰りかける時のざわざわしたなかに、「〇〇ちゃん、帰りにおうどん食べに行こ」というおばちゃんの声が入っているところがいい。うどんが食べたくなった客が多かったのではないだろうか。
枝雀の落語では「代書屋」「蔵丁稚」「不動坊」「寝床」「住吉籠」「煮売屋」「愛宕山」などどれも外せない面白さがあるが、「三十石夢の通い路」は格別な味がある。50代の後半になり芸に一層凄みが出てきた枝雀が59歳で亡くなったのは返す返すも残念なことである。もっと聞きたかった。