令和元年7月26日
以前にも書いたが和洋の考え方の違いは政治・経済・文化などあらゆるところで見られるが、自分の経験した楽器についての違いを考えてみる。尺八とフルートは起源が似ているが異なった改良がなされてきた楽器である。「尺八」は平安時代にはすでに演奏されていた。「フルート」は旧石器時代のヨーロッパに起源があるといわれているが、現代に近いものは、16世紀からだという。初めは7つの穴で縦型と横型の両方があったが、17世紀後半より、半音を正確に出せるように改良され現代のフルートになった。
「尺八」は正倉院に保存されているものと現代のものとほぼ同じで、唄口の形や内部の塗(ぬり)指孔の大きさなどの改良はあるものの決定的な改良はない。名人の吹く尺八の音は心にしみるものであるが、問題は演奏が難しく穴の数が5つしかないので西洋音階を正確に出すのは無理なことである。対して「フルート」は様々な工夫から正確な半音階が出せるし、音もほぼ誰でも出せるように唄口が改良された。その結果、名人でなくても音が出せるし正確な半音を出すことができる。ブラスバンドからオーケストラまで他の楽器とのコラボもできる。対して「尺八」は構造的に音を出すこと自体が難しいうえに、正確な半音階が出せない。いい演奏は名人しかできないので家元制度が生まれ弟子がついていく形にならざるを得ず、近代になって必然的にすたれてきたと思われる。
和弓と洋弓(アーチェリー)を比べればどちらが優っているか歴然としているが、我が国は道具を改良するよりも、すでにあるものを使いこなす名人芸の方を重んじてきた。「弓道」「剣道」など「道」という考え方で技術を磨いてきたけれど、道具を改良したうえで技術を磨くという西洋的な考えの方が、同じ努力をした場合優っていることは明らかだろう。合理的考えを元に研鑽することが大切だと思われる。