平成28年10月7日(金)
著者の中田力氏は東大医学部を卒業した2年後に渡米し、カリフォルニアで臨床医の修練をしたのちカリフォルニア大学の大脳神経学の教授として活躍、2002年に新潟大学統合脳機能研究センター長に就任、米国と日本を往復しているMRIの世界的権威である。医事新報に「フィロソフィア・メディカ」と題した氏のエッセイの掲載が始まり、そのレベルの高さと面白さ、奥行きの深さに注目していたが、今月でもう4回目の掲載になり他の著書も読んでみたくなった。
アマゾンで調べたところいくつかの著作がヒットし、すぐに手に入れることができた。便利な世の中になったものである。表題の著書は、氏がアメリカに渡り臨床医としての修練を始めて様々なことを経験しながらキャリアを積んでいく様が淡々と語られている。医療は誰のためにあるのか、医療者のあるべき姿はどうなのか、日米の医療に対する考え方の違いを検証しながら、我が国の医療の足りない点や改善すべき点を提示している。アメリカの「ER」というドラマがかつて日本でも評判になったが、まさにあの世界と同じ経験をして教授にまでなったわけである。さらに氏の思索の深さはその臨床能力の高さと同格で、これほど能力のある人は稀だと思う。久しぶりにすごい人に出会ったような気がする。