平成28年3月18日(金)
「卵巣癌の新たな治療法開発に向けて」と題した山形大学産婦人科、永瀬智教授の講演があった。BROCA1,BROCA2の遺伝子変異を持つ女性の遺伝性卵巣癌発生率が高いことがわかってきたために、アンジェリーナ・ジョリーさんは乳房切除に続いて今度は卵巣と卵管を切除したという話から始まり、実に興味深い内容の濃い話の連続であった。
卵巣を摘出することによる卵巣がん・乳がん予防効果はあるけれど、女性ホルモンが低下することで冠動脈疾患・脳卒中・肺がんなどが増え、死亡率がかえって増えるという。ただし、65歳以後の卵巣摘出は生命予後に影響しないそうである。卵巣がんの発生機序についても少しずつ新しいことがわかってきて、治療に応用すべく様々な試みがなされている。そうではあるけれど生物学・生命学はまことに奥が深く、現在の知見は暗闇でゾウの尻尾にさわっているようなものなのかもしれない。