日付別記事一覧 2016年1月23日

帝王切開瘢痕症候群と不妊症

平成28年1月23日(土)
滋賀医科大学産婦人科の村上節教授の講演があった。帝王切開瘢痕症候群とは最近の概念で、術後に子宮を縫い合わせた部位が瘢痕化して不都合を生じた状態のことである。そのために不妊症になったり、生理痛が増悪することがあるという。
以前は帝王切開は今ほどは行われていなかった。産婦人科医にとって自然に産んでもらうのが腕の見せ所で、帝王切開は最後の手段であった。だから帝王切開率が低いことは産科医の技術の高さの指標でありプライドでもあった。ところが最近はアメリカ訴訟社会の影響なのか、新生児に異常があると産科医の責任になり多額の慰謝料を払うような風潮になってしまった。だから少しでも心配な点があると、ぎりぎりまで自然分娩になるように頑張るよりも、早いうちに帝王切開してしまうのである。逆子は今ではすべて帝王切開になってしまったので、若い産科医は逆子の経膣分娩は見たことがないはずだ。
最近になってやっと帝王切開のやり過ぎについての反省が議論され始めたが、道は遠いと思う。自分が開業するまでの15年間、約3000のお産を行ったが母子にトラブルなく帝王切開率が5%だったことは本当に幸運でありがたいことだと思っている。