日付別記事一覧 2013年6月14日

写真集「文豪の家」

平成25年6月14日(金)
明治から大正、昭和中期ごろまでの情報のメインは新聞と本(出版)だった。ラジオ、テレビ、インターネット・スマホが中心の現代からは想像のつかない時代だった。人々は出版物を通してしか世の中の流れを知ることができず、だから執筆者である作家たちがオピニオンリーダーであり、仰ぎ見る知的スターだったのだろう。人気作家の地位は今よりはるか上だったと思われる。
文芸評論家で早稲田大学の教授の高橋敏夫氏、同講師の田村景子氏らの写真集「文豪の家」は坪内逍遥、夏目漱石から松本清張、井上靖まで有名作家36人の住んでいた家(再現されたものも含む)の写真、見取り図、関連した写真などを詳しい説明文と共に掲載している。生まれ育った家はその人をかたちづくる最大の要素であり、一家をなした後に住む家もその人をあらわしている。
以前、週刊文春に「家の履歴書」という興味深い連載があったが、これは各界の著名人が自分が生まれ育った家やその後住んだ家を回想し、家の図を載せて解説するというものだった。「文豪の家」は写真集なので眺めていると想像がひろがり、いっそう興味深い。