平成23年2月10日(木)
研修医の頃、看護学生の母性の講義を受け持ったとき、学生から「胎児と母胎の血液型が違う場合になぜ流産しないのか」と聞かれて困ったことがある。胎児の遺伝子の半分は父親由来で半分は母親由来である。免疫学的には拒絶されるのがあたりまえであるが、不思議なことに妊娠は維持される。
それは妊娠時のみ、父親抗原に対して免疫学的寛容になるからであるが、その際、父親由来の組織を母胎に移植した場合生着するという(マウスでの実験であるがヒトでも同じだろう)。ただし、妊娠が終了すると移植片は排除される。
精液中に抗原が含まれており、妊娠前から免疫学的寛容がおこっていて、妊娠維持に有利になっているという。つまり、妊娠前に同棲期間の短いハネムーンベイビーやコンドームでの避妊の後に妊娠した場合の方が、流産などのリスクが高くなるらしい。妊娠を希望しているカップルには、おおいに頑張ってもらいたいものである。