カテゴリー 日誌

勘と超音波検査

平成21年2月19日(木)
胎児の超音波診断の講演会があった。妊娠5か月ぐらいになれば心臓をはじめ、いろいろな器官の異常がわかるようになっているが、今回の講演はまだ数センチの胎児(胎芽という)の時からすでに様々なことがわかることを提示していて興味深かった。
いつも超音波で胎芽や胎児を診ていると、なんとなくおかしいと感じたら大概は異常があるようである。その点は、人間の感覚(勘?)は数量化しなくてもわかるのが素晴らしいことだと思う。だから、診察していてなんとも思わない時には異常はないと考えていいのである。もちろん、きちんと測定して数量化して検証するけれど。
超音波検査だけでなく、すべてにわたって感覚(勘)は大切であり決しておろそかにしてはならないと思う。

幼児の記憶

平成21年2月13日(金)
人間の記憶はいつごろから残るものだろうか。自分の場合、近所の人に「○○ちゃん、年いくつ?」と聞かれて「満三っつ!」と誇らしげに答えていた鮮明な記憶がある。だから3歳ぐらいからなのかなと思う。
養老孟司氏は阿川佐和子氏との対談で、4歳の時に亡くなった大好きだった父親とのことに触れていたが、臨終のときに涙も出ず悲しいと思わなかった理由が40歳の時電車に乗っている時に突然わかって、急に涙があふれてきたという。
大好きな父親が亡くなることを認めたくなかったので、臨終の際、周りの人たちから「さよならをしなさい」と言われても言えなかったと分析している。そして、父親を早くに失ったことがその後の性格を変えたことも。氏は無意識のうちにずっとそのことを考えていたのだろう。40歳になって初めて父親の死を認めたのである。
作家の南木佳士氏も幼少時に母親を亡くしているが、そのことがどんなに大きなことだったかは、氏の作品からうかがえる。自分は幸いそういった辛いこともなく育ったので、実際のところはわからないが、人間にとって記憶は一筋縄ではいかないものだと思う。

整理すれば

平成21年2月5日(木)
2月になったが結構暖かい日が続いている。パソコンの買い替えを機会に机の上の整理をしてみたら、必要な書類や冊子が半分になってしまった。机に置いているものは特に必要ものだけにしているつもりだったが、実際にはもう必要なくなっているものや、別の場所に移しても構わないものが大半だった。
今、家のほうもリホームのための片づけをしているが、不要物の多いこと!押入れの中に入れているものの大半は、整理できることがわかった。
この機会にクリニックの書類などの整理をしてみよう。どれくらいの不要物が出てくるか怖いが、大いにすっきりすることだろう。

妊婦健診の補助が増える

平成21年1月31日(土)
妊婦健診の補助金が増額されることになった。少子化対策の一環として舛添厚労相が「妊婦健診は無料にする」と大見得を切ったが、この国会で補正予算が成立したので2月には正式に額などが決まる。予算が決まり、分娩数がわかれば一人に補助できる額がわかるのだから、回数や検査内容などは産婦人科医会を信用して、まかせてくれればいいと思うがそうもいかず結構こまかく規制してくるようである。計算してみたが、本来の費用には少し足りないようだ。多分産婦人科が少しかぶるようになるのではないだろうか。
先日、広島市の担当の人たちとの会合でこちらの要望を伝えたが、予算がすでに決まっているのでいい感じで話し合えた。昨年は、かなり強く要望を伝えたが大筋は変える事ができなかったし、5枚の補助券の額が毎回異なっていて、あまりの煩雑さに不満続出だったので、そのことも含めて伝えておいた。きっと今年は良くなるものと思われる。やはりきちんと要望を伝えないと、妊婦さんも我われ医療従事者も迷惑する。

優れたリーダー

平成21年1月26日(月)
今の政治家には2世3世が多い。我が国のリーダーである首相も多くはそうである。2世3世が悪いとは言わないが(言っている?)、地盤もお金もなく自らの才能と努力で政治家になって成功している人達のパワーはなんとすごいことか。故田中角栄元首相、石原慎太郎知事、橋下知事、東国原知事、他にもそれほど目立たないけれども立派な人は結構いる。
このところ2世3世の歴代首相が皆自滅しているので、国民には能力のあるリーダーを求める気持ちが高まっていると思われる。国に対して大統領ほど強い権力を持たなくていいが、せめて知事が県に対して持っているぐらい力を持たせるような制度を作って、納税者による国民投票で選んだらどうだろう。きっと今よりはるかに優れたリーダーが現れるのではないだろうか。

健康診断の(功)罪

平成21年1月17日(土)
先日の新聞の読者欄に、健康診断で大腸の精密検査をするようにいわれ、大いに心配し、さんざん痛い思いをしたあげく「異常なし」の診断で割り切れない思いをした、という投書があった。それに対して今日の新聞に、これらの検査に携わっている医師より、検査したら早期発見治療ができていいのだから大いに検査しなさい、という投書があった。
この医師は、精密検査を指示された患者さんがどんなに不安になり、辛い思いをしているのかを本当にわかっているのだろうか。それよりもまず、早期発見し治療した集団と、健康診断はせずに症状があってはじめて検査治療をした集団との比較で、両者の間に死亡数の差がなかったという数多くの欧米のデータをどう説明するのか。百歩ゆずって、早期発見早期治療が少しでも有効だとしても、1000人の疑いのある人の中から1人のガンの患者さんを見つけるために残りの999人の人に投書したような負担を強いることがよいことなのか疑問である。では100人に1人の割合だったらどうか、10人に1人ならどうか…。
いつも思うのは、どの比率のリスクなら異常のない人にも検査することが許されるか、ということである。保険診療でも、その線引きをいつも意識している。少なくともストレスを与えたあげく「異常ありませんでした」と心の痛みなしに言うことはしたくない。

ネプチューン海山の尺八

平成21年1月10日(土)
急に冷えてきた。全国的に雪のようだ。今まで暖かい日が続いていたので、バランス的にはちょうどいい。
昨日、ジョン・海山・ネプチューンというアメリカ人の尺八演奏を聴きに行った。ジャズを中心に日本の曲も織り交ぜて、じつにすばらしい演奏であった。自由な精神で、文字通り音を楽しもうとする姿勢が共感を呼ぶ。ともすれば形にとらわれてそこから脱却できず、発展性のない曲ばかり演奏している流派もあるこの世界ではかなり異色であるが、そこが魅力的である。それにしてもいい音を出していた。あんな音が出せれば楽しいだろう。
休み明けの週が終わったと思ったらもう連休である。政府はこんなに休日ばかり作っていいのか。

謹賀新年(平成21年)

平成21年1月5日(月)
謹賀新年。天気の良い日が続いた正月だった。今日から診療スタートである。
元旦はお屠蘇と雑煮で祝い、初詣は比治山神社で皆の健康を祈願し、甘酒(一杯200円!)を飲む。以前は破魔矢を買ったりしていたが、次の年に返しに行くのが面倒なので賽銭のみ。いつもお世話になっている、同じブロックの先生夫妻もお参りされていた。今年の目標といっても特別なものはなく、今までどおり淡々とやっていくだけである。尺八だけはもう少し上達したいが、なかなか思うようにいかないだろう。
なにはともあれ、今年もよろしくお願いします。

平成20年をふり返って

平成20年12月26日(金)
今年ももう残りわずかである。ふり返ってみれば色々なことがあったが、いい年だったと思う。初孫も生まれたし、なにより家族全員が健康で気持ちよく毎日が過ごせたことが一番だったと思う。人生には「流れ」「潮時」などがあり、良いときは大概のことがうまく行き、悪いときは何をやってもうまく行かないものだ。だから、いいときはそれをじっくり味わい、悪いときはじたばたせずひたすら身を低くして耐えて潮時が変わるのを待つのがいい。
時代の大きな流れと寿命は個人の力ではどうしようもないと思うが、日々の生活をできるだけ充実させて、身の丈に合わせて生きていけば大きな間違いはないだろう。「人生わずか五十年…」という言葉があるが、まことにそのとおりで、自分では50歳を過ぎたら余生だと思っていた。今もその考えは変わらないが、余生のほうが充実することもあって、そこが人生のなんともいえないテイストであろうか。

広島の行政の誤り

平成20年12月20日(土)
広島大学の跡地が使い道がなくて宙ぶらりんになっている。一部はなんと!マンションになり、残りは先ごろつぶれたアーバンコーポレーションが何かを計画していたようだが、だめになってしまった。後を引き受ける企業がないという。
以前にも書いたが、広島市から広大を遠い東広島に移転するという、きわめつけの愚挙を行った責任者および賛同して利益を得た人たちは責任を取るべきである。まったく何を考えてこんなことをしたのだろう。子供が考えてもわかるほどの無意味な、有害な箱物行政である。せっかく最もふさわしい場所にあった広島の知の中心を、わざわざ大金を使って遠くの地に移してしまった。
広島はすでに空港移転という世紀の愚挙を行っているからいまさら驚かないが、広島を大事に思わない政治家や企業家でなければできないことばかりである。何十年か後になってこれらの負の評価が明らかになるだろうが、その頃には責任者達はもういないのである。