カテゴリー 日誌

梅雨と雨漏り

令和5年7月6日
今日は晴れているが梅雨の晴れ間で、このところ梅雨のどんよりした天気が続く。
先日の雨でクリニックの窓から雨漏りがするのを発見。わずかな量だけれど一日中雨なのでそこそこ溜まってくる。建物のメインテナンスはしっかりしているが、築32年経っていればこんなこともあるのだろう。家主に相談するとすぐに施工業者に連絡してくれて、近々修理してくれるそうだ。
ビルに入居して26年目になるのでさすがに内装も古くなってきた。壁紙やカーペット、天井の一部は何回か変えたが、それ以外は変えてないのでそろそろ一新が必要かもしれない。特にトイレが問題である。下の階からの施工になるので、簡単には出来そうもない。カルテ庫もいっぱいになっていて整理が大変である。今のところ電子カルテにする気はないので、これからもカルテ庫の整理は毎年の必要事項になるだろう。仕方ないとはいえ気が重いことである。

「達人、かく語りき」

令和5年6月29日
表題は沢木耕太郎セッションズ<訊いて、聴く>全4冊中の第1冊である。沢木氏のノンフィクション作品はその視点と綿密な調査、対象への共感が感じられて楽しく読ませてもらっていた。特に初期の作品の「人の砂漠」「テロルの決算」を見つけた時はすごい新人があらわれたものだと興奮したことを覚えている。その後「深夜特急」をはじめ意欲的な作品を次々に生み出し、旅に関するエッセイも多数あり、読むたびに氏の人間としての美学が感じられて居住まいを正して読まなければと思わせられる。
この作品では、吉本隆明、吉行淳之介、淀川長治、磯崎新、高峰秀子、西部邁、田邊聖子、瀬戸内寂聴、井上陽水、羽生善治の10人と対談をしている。もっとも現在も活躍している人は僅かで、ほとんどの人は鬼籍に入っている。
対談は互いの人間の力量が揃わないと難しいが、氏はすべての人と肉薄した会話をしながらある距離以上には踏み込まない、いわばジャズセッションのように対話している。そのやり取りが面白く、興味深い話も出て読みだしたら止められない。実は2年前に買っていたのを今読み始めてみて、やはり沢木耕太郎はすごいと改めて思った次第である。

産婦人科医会300回記念

令和5年6月23日
広島市を中心にした産婦人科の研修会が、めでたく300回を迎えた。年に5回程度の開催なので50年以上の歴史を持つ勉強会である。会長は従来は県の産婦人科医会の会長が兼任していたが、広島市以外の医師が会長の場合があるので、2001年から新たに広島市の医師を会長にして運営することになった。それまでは当番幹事2名が会の準備などを行っていたが、新たに数名の理事が加わることで非常にやりやすくなった。その時の当番幹事が自分で、それ以来ずっと理事としてかかわってきた。コロナ感染を機に辞めさせてもらったが、いい経験をさせてもらったと思う。
講演に来る先生方は教授か講師、部長クラスの人たちで、講演の後の食事会で親しく話ができる。100人くらいの先生方と話ができたと思う。さすがに講演に来られる先生方はその道のプロなので、話も面白いし魅力的な人ばかりである。興味深いエピソードなど聞かせていただき本当によかった。今回はその記念の集まりで、関係者一同盛り上がって祝うことができたのはありがたいことだった。

「古地図と歩く広島」

令和5年6月15日
表題は「迷った時のかかりつけ医」シリーズなど出版している広島・南々社の最新刊で、著者は神学博士・中道豪一氏である。広島市の名所を19のエリアに分けて、江戸時代・戦前・現代の3つの地図を重ね合わせるようにして歴史を今に再現しているもので、じつに興味深く読ませてもらった。
冒頭は「中島町」現平和記念公園で、江戸時代には本安橋(現元安橋)と猫屋橋(現本川橋)が西国街道の交通を支えていて、本川と元安川に分流する三角州の中島町は水運の要所であり経済活動の盛んな地であった。広島城築城と共に発展してきたという。今でも残る旧跡を紹介してそれらをたどるコースとかかる時間を記しているので、散策するのにはもってこいである。19のエリアのコースはそれぞれ1~2時間くらいにまとめているので全コース制覇するのも面白いだろう。久々のヒット作品に出合った。

母体保護法指定医研修会

令和5年6月7日
表題の研修会が医師会館で行われた。興味深い演題は最近承認された「経口中絶薬」についての説明だった。
以前にも書いたがこの薬は40年近く前にフランスの製薬会社ルセルが開発したRU486で、妊娠を維持するために必須の黄体ホルモン受容体に結合して妊娠の維持ができなくなり流産(中絶)してしまうものである。当時、大学のホルモングループに所属していたので、この薬を使って動物実験をしていた後輩の研究成果を見ていてすごい薬ができたものだと感心したものだ。マウスを使って実験するとほぼ100%流産させることができた。その後、欧米では普通に使われるようになったが我が国では認可されなかった。
我が国では今年の4月28日正式に承認され5月中旬より使われることになったが、問題がいろいろあることがわかった。まず、流産が始まると痛みと共に出血が多くなり、自宅では耐えられなくなって病院を受診したくなるが、深夜だと対応できなくなるので、入院設備のある医療施設で院内でのみ使用して院内で待機する。一日たっても流産しなければ手術になる。ちなみに10人に1人は手術になるという。今までなら朝手術をすれば昼には帰宅できるし、確実に中絶できるのでそのほうが楽ではないかと思ってしまう。値段も従来の中絶術と変わらないか少し高くなるという。これではわざわざ薬を承認する意味がないのではないだろうか。欧米では薬を使う場合と手術をする比率は半々だそうである。なぜ承認したのかわからない。

LGBT法案

令和5年6月1日
自民公明両党はLGBT法案を国会に提出した。性的少数者を守ることは大切だが、G7サミットに合わせて大急ぎで出したのはいかがなものか。女性だと自認した男性がトイレ・浴場・スポーツなどに介入してくることを、LGBT当事者団体特に女性団体から反対の声が上がっているという。さらに児童生徒にも性差をなくする教育がなされるようになることが、はたして本当にいいことなのだろうか。
エッセイストで動物行動学研究者の竹内久美子氏によると、人間も含め動物はメス(女)がオス(男)を選ぶのが原則で、メスにとって1回の繁殖に多くのエネルギーと拘束時間がかかるためできるだけ質の良いオスを慎重に選ぶ。対してオスは1回射精したら次の繁殖のチャンスはすぐに巡ってくるので相手を慎重に選ぶ必要はないし、そうしないほうが得である。繁殖における原則の違いが男と女の一番の違いで、性差を失くする教育は動物としての大原則に完全に逆らっている。
性の多様性を認めることは必要であるが、欧米に合わせての性急な法案提出はいかがなものかと思う。

広島G7サミット

令和5年5月24日
広島G7サミットが無事終わった。岸田首相をはじめ関係各位は心からほっとしたことだろう。サミットのだいぶ前からクリニック周辺に警官の姿が増えてきて、私服の警官と思しき人も見られるようになった。毎日自転車で往復する平和大通りは警察車両がびっしり並び、バイデン大統領が泊まったヒルトンホテルの周囲は警官がびっしりで、まさにアリの子一匹通さないとの気構えを感じさせられた。
日曜日は車で出かけると規制にかかると思ったのでカミさんと京橋川をさかのぼるウオーキングをおこなった。どの橋にも警官の姿が見られ、いろんな県から応援に来ていることがわかり「ご苦労様です」と声をかけるとにっこりあいさつしてくれて、ほっこりした気持になる。縮景園を対岸に眺めながらさかのぼると、園内の川沿いに警官が50メートルごとに立って警護している。園の周辺は警察車両や白バイが見られ、警官の数もびっしりで園に要人が来ていることを思わせる。猿猴川を下って駅前を通って帰ったが、パトカーに先導された要人の車が通過するのを見た。
広島県警が3,000人、警視庁を含め他県からの応援が21,000人、合計24,000人の警官による警備は史上初ではないだろうか。こんな光景は二度と見られないだろう。いい経験をさせてもらったと思う。

第4支部「春の会」

令和5年5月17日
サミットが近づきクリニックの周辺には警察官の姿がいっぱい見られるようになった。通勤の道にも交差点にも必ずいて、広島の街は今が一番安全なのではないだろうか。コロナも5類に変更になってマスクも不要になった。暑い日が続くのに意味のないマスクをするのは身体によくないのでいいことである。そうした中で3年ぶりに中区医師会第4支部「春の会」がアンデルセンで開かれた。
久しぶりに会う先生方ばかりでそれぞれの近況を話すのを聞いていると、このような会合は必要だと思った次第である。驚いたのは出席者の中で自分は上から4番目の年齢になっていることだった。今から25年前に初めて参加した時は一番若手のグループの中にいたのにいつの間にかこうなってしまった。そのころ先輩だった先生方は亡くなられたり、子供さんが後を継いだりでほとんど来られなくなってしまった。そう思うといっそう感慨深い会になった。

ジブリパークとジブリ展

令和5年5月9日
連休には甥の結婚式があったので神戸に行き、ついでに神戸市立博物館で開催されていたジブリ展に行ってみた。「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」などのキャラクターの実物大の展示があり楽しませてもらった。特に湯婆婆(湯バーバ)の迫力には圧倒された。
宮崎駿氏の子息、宮崎吾朗氏が中心になって「三鷹の森ジブリ美術館」を作り、愛知県長久手市で行われた愛・地球博のパビリオンとして「サツキとメイの家」の建築を手掛け、さらに引き続いてジブリパークとして展開し始めている。2,022年11月「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3エリアがジブリパークの第一期としてオープンしている。「もののけの里」「魔女の谷」は今年の秋から来年の秋にかけてオープンする予定だそうだ。いずれにしてもぜひ一度は訪れてみたいテーマパークである。
甥の結婚式も終わるまでは雨も降らず楽しいひと時を過ごすことができていい連休になった。

「なぜ私たちは存在するのか」

令和5年4月27日
表題は京都大学医微生物研究所の宮沢孝幸准教授の最新の著作である。「京大おどろきのウイルス学講義」「ウイルス学者の責任」に次ぐ第3冊目のPHP新書で、これまでの氏の学者として生きてきた軌跡をなぞりながらウイルスとはどういうものかを丁寧に述べている。難しい部分も多いが全体でみると「ウイルスと生物との関係」が少しずつ理解できて面白く読ませてもらった。本物の学者はすごいなと感心させられたのもうれしいことであった。ウイルスはなぜ存在するのか、生物はなぜ生まれたのかという根源的な疑問を考えさせられる。ウイルスを作ることはできるが排除することは難しいことが理解できる。
武漢ウイルスが広がり始めたころから、氏は「これを防ぐことはできないし日本人にとってはそんなに恐ろしいウイルスではない」と述べていた。また、「新型ワクチンは危険だから使うべきではない」とも述べていた。その言葉通りワクチンを打っていなかった2,020年は超過死亡がマイナスだったのに、ワクチンを打ち始めた2,021年から超過死亡が増えてきて2,022年には信じられない超過死亡になっている。そのことについては厚労省は知らんふりをしているし、マスコミも何も言わない。あれだけコロナが怖いと煽りまくり、ワクチンを打たないのは罪だと言わんばかりに打たせまくり、人々の行動制限や無駄なマスクをさせまくった責任をだれも取ろうとしない。氏の著書ではそのことに一切触れていないが、行間から強い怒りが読み取れる。氏はウイルス学者として人々のために適切なことを言ってきたけれど、声の大きい人たちやマスコミ、委員会などの前では正しいことが通らず結果的に多くの人が犠牲になったことに対する深い悔しさが感じられる。
太平洋戦争に突入した時も、一部の知識人や一部の軍人は「戦争はすべきでない」と訴えていたけれどマスコミをはじめ声の大きい多くの人に押し切られて多大な犠牲を払った。同じ図式である。この国は変わらない。