平成26年6月12日(木)
ノバルティス社の降圧剤のデータ改竄問題で、ノ社側から逮捕者が出た。東京地検特捜部が動いたためで、大学側も徹底的に追及されることだろう。製薬会社は薬を売るのが仕事だから、何とかして売ろうとする。今回のような問題は過去にもあったに違いないが、こんなインチキをしなくても本当にいい薬ならば使われるはずである。多くの医師は患者さんを治すために有効な薬を選んでいる。そしてベテランになればかなりの確率で良否を見分けることができるようになるが、今回のようにデータそのものを改竄した論文はタチが悪いと言わざるを得ない。
製薬会社と医師の関係は利益を共有する部分があるので深くなりがちである。医師側は、患者さんを治すために有効な薬を求めており、製薬会社は薬が売れれば儲かるという関係である。以前は薬価差益があったので薬を出せば医師も利益があったが、今はほとんどないのでその意味での利益の共有はないが、製薬会社にとっては売り上げを増やすことが一番なので宣伝・接待などの働きかけをする。医師にとってはいい薬かどうかだけがポイントである。だから製薬会社との付き合いは、できるだけ淡くすることが肝要である。
カテゴリー 日誌
製薬会社と医師の関係
生理不順は病気ではない?
平成26年6月4日(水)
生理不順で来院される人が多いが、治療の必要なケースは少ない。かつては、生理不順だと妊娠しにくいから毎月生理が来るようにしなければならないと言われていたし、今でもその方針で治療している施設もある。確かに下垂体腫瘍や卵巣自体の異常など治療を要する場合もあるが、ほとんどは排卵自体が遅れる傾向のある卵巣か、ストレスなど精神的な問題によって起きていると思われる。
ストレス、うつ、摂食障害などによるものは、その原因を克服するしかないし、精神科の助けが必要になる。そしてこれらの原因がなくなれば自然に排卵は起きてくる。
排卵自体が遅れる傾向の卵巣をPCOタイプの卵巣(ガイドラインどおりではなく、そのいくつかの条件を満たすものである)と称しているが、このタイプの人の多いこと。排卵→月経は妊娠するために起きているので極端に言うと、年に1回しか排卵がなくても妊娠すれば問題ないのである。現に、ヒト以外の哺乳類は年に1~2回しか排卵しない種の方が多い。そしてPCOタイプの人がこれだけいるということは、生物学的に適者なのである。生物の世界はきびしくて適応能力のない種はすべて滅びている。だから体調に不都合なことがなければ、生理不順があっても治療しなくてもいい。適者に対して医者ごときが手出しをすべきでないという発想の転換が必要である。ムダなことはできるだけしない方がいい。
尺八演奏会
平成26年5月29日(木)
日曜日に安芸区民文化センターで尺八演奏会(発表会)があり、「鹿の遠音」という曲を演奏した。この曲は尺八の古典本曲で、秋の深山で鹿が鳴く声を模写したもので、味わい深い曲である。今回は雄と雌の鹿が互いに呼びかわし交歓するという趣向で、師匠との掛け合いの演奏となった。リハーサルも含め丸一日つぶれたが楽しい経験だった。
尺八をはじめて10年になるが、なかなかうまくならない。それでも他の人たちの音を聞くとずいぶん啓発される。今回もいくつかの点で気付いたことがあり、早速取り入れてやってみようと思っている。「下手の横好き」ということわざがあるが、簡単に上達しない方が長続きするのかもしれない。
わが国の少子化を考える
平成26年5月23日(金)
慶応義塾大学産婦人科名誉教授の吉村泰典氏による表題の講演があった。氏は内閣官房参与もされているわが国の産婦人科の重鎮である。結婚年齢の上昇と未婚率の増加に伴って、少子化が進むわが国の現状をなんとかしようと活動しておられる。このままでは高齢者1人を若者1人が支えることになり、人口の減少と相まってわが国の存続が危うくなると具体的に数字を挙げて説明された。
政府はどうすれば人口が増えるか様々な角度から検討してるようだが、こういうものは時代の流れと共に起きているので簡単には変えられない。どの民族にも歴史があり人の一生に例えられるような時代の変化がありその流れは誰にもどうしようもないことである。今の日本は成熟期から老年期に入っていると思われるが、安定した息の長い老年期にするのか、急速に衰えていくのか今が正念場である。子孫のために息長く生きていけるようなシステムを考え、残すことが我々の世代の役割である。こんなことを考えるようになったのも、文字通り自分たちの子、孫、を折に触れて目にするからだと思う。
平均寿命世界一
平成26年5月16日(金)
WHOによれば2014年の世界の平均寿命1位は昨年に続いてまたもわが国で、なんと84歳だという。これは男女合わせた平均の寿命で、男性だけの平均は80歳、世界で8位。ちなみに男性の1位はアイスランドで81,2歳。日本の女性の平均寿命は87歳、昨年に続いて堂々世界一である。わが国が世界一になっているのは長生きしている女性のおかげである。
世界の平均寿命は70歳だから平均14年も長寿ということになる。なぜ長寿なのかはわからないが、周辺諸国や紛争地域などのニュースを聞くにつけ、あらゆる面でわが国は快適に生きていける稀有な国なのだと思う。環境、品性、歴史、食べもののおいしさと工夫、どれをとっても世界のトップクラスであり、それゆえ長寿世界一を続けていけるのである。ありがたいことである。
連休終了
平成26年5月8日(木)
連休も終わり昨日から診療再開、いつもの生活に戻った。連休中は法事で一日笠岡に帰った他は孫たちとゆっくり過ごすことができた。瀬野川公園でテニスをしたり、森のレストラン「ファームノラ」へ行ったり。ここは最近、一層人気が増しているようで、開店11時前に行ったのに先客がいて、その後続々客が来て、去年よりテーブルが増えているのに12時前にはほぼ満席になった。ここのボルシチはじつにうまい。鶏の燻製、パスタ、石窯ピザなどを森の中の手造りのテーブルで食べるのは気持ちがいい。立木を利用したブランコ、ドッグランの広場などがあり犬を連れてくる人も多い。夜は近所の焼き鳥屋「かんかんかん」で宴会。気がついたら体重が2キロ増えていた。これをどうやって戻すかが今後の課題である。
賑やかな一日
平成26年5月2日(金)
日曜日、岡山の友人夫妻が娘さん夫婦と孫2人を連れて我が家へ遊びに来てくれた。友人家族とは子供たちが小さい頃から毎年のように家族旅行をしていたので親戚のようなものである。次女が孫2人をつれて久しぶりに里帰りをしているので、皆で集まって旧交を温めようという算段である。近くに住む長女夫婦も2人の孫を連れてきて親・子・孫総勢15人、広くもない我が家は満杯である。6畳の和室2部屋のふすまを取っ払って子供や孫たちの宴会場所に。我々はダイニングルームでビール、ワイン、日本酒、昼前から夕方まで延々と談論風発。時々孫たちが歓声を上げて走りこんできたり、賑やかなひとときを過ごした。
友人一家と初めて一緒に旅行に行った時には子供たちはまだ小学生にもなっていなかったのに今は結婚してその当時と同じくらいの子供がいて宴会をしている。人生はくり返しくり返し過ぎていくというが、まさにそう思えるような感慨深い一日であった。
すばらしい西条の酒
平成26年4月25日(金)
国賓としてオバマ米大統領が来日しているが、初日の夜は安部首相が以前この欄にも書いたミシュラン三ツ星の鮨店「すきやばし次郎」でもてなし、オバマ大統領をして「生涯最高の鮨だった」と言わしめたという。その際に供された日本酒は広島が誇る西条の酒、金の花びら入り「加茂鶴ゴールド」で、お土産は山口県の酒「獺祭」と江戸切子のグラスだった。
いい水といい米、受け継がれてきた酒造りの伝統技術のおかげで、日本の風土に合った日本酒が飲めるのは幸せなことである。どれもうまいが数ある酒の中から「加茂鶴」と「獺祭」が選ばれたことは、じつにうれしく名誉なことである。西条にはいい酒を造っている醸造元は他にもたくさんある。これからもいっそうおいしく飲めると思えば頬がゆるむ。
生物には「むだ」がない
平成26年4月17日(木)
先日の新聞に、大阪大学の研究によれば、いままでは退化器官で必要がないと思われていた虫垂に腸内の免疫をつかさどる役目があることがわかった、という記事があった。学生時代には虫垂は退化器官でいずれ無くなるだろうと教わった記憶がある(ニワトリの虫垂は大きくて消化に役立っているようだとも教わった)。
必要のないものなら無くなっていてもいいはずの「虫垂」があるのは不思議であった。きっと何かの役割をはたしているはずだと思っていた。だから、帝王切開や子宮筋腫の手術の際、「これから先に虫垂炎が起きないように盲腸(虫垂)を取っておきましょうか」と好意で患者さんに話す先輩医師の言葉に違和感を持っていた。かつては虫垂切除は最もポピュラーな外科手術であり、多くの人が虫垂切除術を受けていたがこれからは慎重にならざるを得ないだろう。
生物が種として生き残る時、ムダなものをかかえられる余裕はないはずである。生存競争はそんなに甘くない。現在ある器官は、たとえそれがどんな役割を果たしているのかわかっていなくてもすべて必要なものであると考えられる。手術による器官の切除は慎重のうえにも慎重にするべきである。
久しぶりの京都
平成26年4月10日(木)
3月下旬のことであるが、京都博物館で印象派展(パリ・セーヌ・ノルマンディーの水辺をたどる旅)が開かれているので、久しぶりに行ってきた。京都では宿がとりにくいので大阪に泊まり翌日京都に行くという、いつものパターンである。ありがたいことに予約の取りにくい居酒屋「島之内一陽」がとれたのでうまい肴でゆっくり楽しめた。値段もリーズナブルで、これなら人気店になるだろうと納得。店主は可部出身とのこと、これだけの店を競争の激しい大阪の中心でやっているのは立派である。
翌日は東寺を訪れて国宝五重塔や春季特別公開の国宝・重文を鑑賞、桜の咲く前だったので人出もそれほどではなく、ゆっくり見ることができた。ところが京都博物館の印象派展は人を見に行ったようなもので、早々に退散した。昼は伊勢定が撤退した広島でうなぎに飢えていたのでミシュラン一つ星の「まえはら」へ行き、実においしいうなぎを食べることができた。寿命が延びたと思った。(年をとるといいことがあると「寿命が延びた」と言い、さらに高齢になると「冥途の土産」というらしい)