平成26年7月4日(金)
表題の「ヒコベエ」は「若き数学者のアメリカ」「遥かなるケンブリッジ」など興味深い著作を持つ数学者、藤原正彦氏の自伝小説である。氏はベストセラー「国家の品格」をはじめ、エッセイなど精力的に著しているがこの「ヒコベエ」は、著者の記憶の始まる3~4歳ごろから小学校を卒業するまでの自分史・家族史を中心に、戦後の混乱・復興期の世情が描かれていて読み出したらやめられなくなるほど面白い。
「ヒコベエ」は著者の幼小期の呼び名で、元気一杯・猪突猛進・ガキ大将、それでいてやさしくてユーモアのある氏にぴったりである。氏の母親は終戦後満州から幼い3人の子供を連れて命がけで引き上げた体験を書いた「流れる星は生きている」の著者、藤原ていであり、父親は気象学者で直木賞「強力伝」で知られる作家、新田次郎である。さすがカエルの子はカエルで、氏は数学者としての業績の上に興味深い本を多数著して多くの読者の支持を得ている。今は週刊新潮に毎週エッセイを載せているが、面白く読ませてもらっている。
次は、「ヒコベエ」と「若き数学者のアメリカ」のあいだ、思春期から青年期の自伝小説を読んでみたいものである。
カテゴリー 日誌
藤原正彦著「ヒコベエ」
故宮博物院特別展
平成26年6月26日(木)
6月24日から東京国立博物館で台北国立故宮博物院所蔵の作品186点の公開が始まった。故宮博物院は一度は行ってみたいと思っていたが、なかなか機会がなくて気になっていた。10月7日からは福岡の九州国立博物館で行われるので、今回はそちらに行ってみようと思っている。
中国の歴史文化の粋ともいうべき作品のほんの一部でも、わが国で鑑賞できるのはありがたいことである。台北国立故宮博物院には、中国文化8千年の収蔵品があり、古代の青銅器から玉器、書画、陶磁、工芸品など65万点に及ぶという。北宋山水画、唐三彩、書、見たいものは山ほどある。今回の目玉というべき「翠玉白菜」は、写真でしか見たことがないが清・光緒帝の妃・瑾妃の嫁入り道具とされていて、白と緑の翡翠を材料に、キリギリスやイナゴを彫り込んでいる玉器である。残念ながらこの品は東京のみの展示で、九州では「肉形石」という玉髄と呼ばれる石の上面に毛穴のような点を刻して着色、トーロンポウそっくりの玉器が展示されるそうで今から楽しみである。
出生前遺伝学的検査の現状と課題
平成26年6月20日(金)
昭和大学の関沢明彦教授による表題の講演があった。わが国では結婚年齢の上昇に伴って高年妊娠・出産が増えている。母体年齢が上がれば流産率も増え、先天異常の割合も増えてくるので、出生前検査の確かさと安全性が求められる。かつては染色体の異常を見つける方法は羊水検査だけであった。この検査は、妊娠4か月の末頃にお腹から直接子宮に針を刺して羊水を採取し、羊水に含まれる胎児由来の細胞から染色体を抽出して調べるので、母体への負担が大きかったし時間もかかった。現在でも最終診断としてこの羊水検査は行われているが、その前にスクリーニングとして母体血による検査が開発されてきた。
妊娠時には母体血中(血漿中)に胎児由来のDNAが含まれていることがわかり、それを分析することにより遺伝子の異常がかなり正確にわかるようになった。血液を調べるだけなら羊水検査に比べれば負担が少ないので、希望者も増えると思われる。費用がかかることや100%の確かさはないことなど課題はあるが、技術の進歩は素晴らしいことである。
製薬会社と医師の関係
平成26年6月12日(木)
ノバルティス社の降圧剤のデータ改竄問題で、ノ社側から逮捕者が出た。東京地検特捜部が動いたためで、大学側も徹底的に追及されることだろう。製薬会社は薬を売るのが仕事だから、何とかして売ろうとする。今回のような問題は過去にもあったに違いないが、こんなインチキをしなくても本当にいい薬ならば使われるはずである。多くの医師は患者さんを治すために有効な薬を選んでいる。そしてベテランになればかなりの確率で良否を見分けることができるようになるが、今回のようにデータそのものを改竄した論文はタチが悪いと言わざるを得ない。
製薬会社と医師の関係は利益を共有する部分があるので深くなりがちである。医師側は、患者さんを治すために有効な薬を求めており、製薬会社は薬が売れれば儲かるという関係である。以前は薬価差益があったので薬を出せば医師も利益があったが、今はほとんどないのでその意味での利益の共有はないが、製薬会社にとっては売り上げを増やすことが一番なので宣伝・接待などの働きかけをする。医師にとってはいい薬かどうかだけがポイントである。だから製薬会社との付き合いは、できるだけ淡くすることが肝要である。
生理不順は病気ではない?
平成26年6月4日(水)
生理不順で来院される人が多いが、治療の必要なケースは少ない。かつては、生理不順だと妊娠しにくいから毎月生理が来るようにしなければならないと言われていたし、今でもその方針で治療している施設もある。確かに下垂体腫瘍や卵巣自体の異常など治療を要する場合もあるが、ほとんどは排卵自体が遅れる傾向のある卵巣か、ストレスなど精神的な問題によって起きていると思われる。
ストレス、うつ、摂食障害などによるものは、その原因を克服するしかないし、精神科の助けが必要になる。そしてこれらの原因がなくなれば自然に排卵は起きてくる。
排卵自体が遅れる傾向の卵巣をPCOタイプの卵巣(ガイドラインどおりではなく、そのいくつかの条件を満たすものである)と称しているが、このタイプの人の多いこと。排卵→月経は妊娠するために起きているので極端に言うと、年に1回しか排卵がなくても妊娠すれば問題ないのである。現に、ヒト以外の哺乳類は年に1~2回しか排卵しない種の方が多い。そしてPCOタイプの人がこれだけいるということは、生物学的に適者なのである。生物の世界はきびしくて適応能力のない種はすべて滅びている。だから体調に不都合なことがなければ、生理不順があっても治療しなくてもいい。適者に対して医者ごときが手出しをすべきでないという発想の転換が必要である。ムダなことはできるだけしない方がいい。
尺八演奏会
平成26年5月29日(木)
日曜日に安芸区民文化センターで尺八演奏会(発表会)があり、「鹿の遠音」という曲を演奏した。この曲は尺八の古典本曲で、秋の深山で鹿が鳴く声を模写したもので、味わい深い曲である。今回は雄と雌の鹿が互いに呼びかわし交歓するという趣向で、師匠との掛け合いの演奏となった。リハーサルも含め丸一日つぶれたが楽しい経験だった。
尺八をはじめて10年になるが、なかなかうまくならない。それでも他の人たちの音を聞くとずいぶん啓発される。今回もいくつかの点で気付いたことがあり、早速取り入れてやってみようと思っている。「下手の横好き」ということわざがあるが、簡単に上達しない方が長続きするのかもしれない。
わが国の少子化を考える
平成26年5月23日(金)
慶応義塾大学産婦人科名誉教授の吉村泰典氏による表題の講演があった。氏は内閣官房参与もされているわが国の産婦人科の重鎮である。結婚年齢の上昇と未婚率の増加に伴って、少子化が進むわが国の現状をなんとかしようと活動しておられる。このままでは高齢者1人を若者1人が支えることになり、人口の減少と相まってわが国の存続が危うくなると具体的に数字を挙げて説明された。
政府はどうすれば人口が増えるか様々な角度から検討してるようだが、こういうものは時代の流れと共に起きているので簡単には変えられない。どの民族にも歴史があり人の一生に例えられるような時代の変化がありその流れは誰にもどうしようもないことである。今の日本は成熟期から老年期に入っていると思われるが、安定した息の長い老年期にするのか、急速に衰えていくのか今が正念場である。子孫のために息長く生きていけるようなシステムを考え、残すことが我々の世代の役割である。こんなことを考えるようになったのも、文字通り自分たちの子、孫、を折に触れて目にするからだと思う。
平均寿命世界一
平成26年5月16日(金)
WHOによれば2014年の世界の平均寿命1位は昨年に続いてまたもわが国で、なんと84歳だという。これは男女合わせた平均の寿命で、男性だけの平均は80歳、世界で8位。ちなみに男性の1位はアイスランドで81,2歳。日本の女性の平均寿命は87歳、昨年に続いて堂々世界一である。わが国が世界一になっているのは長生きしている女性のおかげである。
世界の平均寿命は70歳だから平均14年も長寿ということになる。なぜ長寿なのかはわからないが、周辺諸国や紛争地域などのニュースを聞くにつけ、あらゆる面でわが国は快適に生きていける稀有な国なのだと思う。環境、品性、歴史、食べもののおいしさと工夫、どれをとっても世界のトップクラスであり、それゆえ長寿世界一を続けていけるのである。ありがたいことである。
連休終了
平成26年5月8日(木)
連休も終わり昨日から診療再開、いつもの生活に戻った。連休中は法事で一日笠岡に帰った他は孫たちとゆっくり過ごすことができた。瀬野川公園でテニスをしたり、森のレストラン「ファームノラ」へ行ったり。ここは最近、一層人気が増しているようで、開店11時前に行ったのに先客がいて、その後続々客が来て、去年よりテーブルが増えているのに12時前にはほぼ満席になった。ここのボルシチはじつにうまい。鶏の燻製、パスタ、石窯ピザなどを森の中の手造りのテーブルで食べるのは気持ちがいい。立木を利用したブランコ、ドッグランの広場などがあり犬を連れてくる人も多い。夜は近所の焼き鳥屋「かんかんかん」で宴会。気がついたら体重が2キロ増えていた。これをどうやって戻すかが今後の課題である。
賑やかな一日
平成26年5月2日(金)
日曜日、岡山の友人夫妻が娘さん夫婦と孫2人を連れて我が家へ遊びに来てくれた。友人家族とは子供たちが小さい頃から毎年のように家族旅行をしていたので親戚のようなものである。次女が孫2人をつれて久しぶりに里帰りをしているので、皆で集まって旧交を温めようという算段である。近くに住む長女夫婦も2人の孫を連れてきて親・子・孫総勢15人、広くもない我が家は満杯である。6畳の和室2部屋のふすまを取っ払って子供や孫たちの宴会場所に。我々はダイニングルームでビール、ワイン、日本酒、昼前から夕方まで延々と談論風発。時々孫たちが歓声を上げて走りこんできたり、賑やかなひとときを過ごした。
友人一家と初めて一緒に旅行に行った時には子供たちはまだ小学生にもなっていなかったのに今は結婚してその当時と同じくらいの子供がいて宴会をしている。人生はくり返しくり返し過ぎていくというが、まさにそう思えるような感慨深い一日であった。