平成26年11月21日(金)
表題の著書は以前にも紹介した「インフルエンザワクチンはいらない」を著しており、その続編ともいうべきものである。氏は元国立公衆衛生院疫学部感染症室長であり、わが国のワクチン行政にかかわってきた疫学のプロである。氏は一貫して現在のわが国のワクチン制度に対してきちんとデータを示したうえで疑問を呈している。
有効なワクチンは少数存在するが、最近乳幼児に打つことを奨励するようになったワクチンの数はとんでもなく増えていて、乳児死亡率が世界で最も少ないわが国で本当に必要なのだろうかと思わざるを得ない。副作用による死亡にはだれが責任をとるのだろうか。WHOのバックにいるビッグファーマによるワクチン販売の世界戦略に乗せられているとしか思えないわが国のワクチン政策は、最終的にわが国のお金をこれらの巨大製薬会社に吸い上げられることになる。以前大騒ぎしてわが国に備蓄した「タミフル」も効果はほとんどないことがわかってきたが、海外製薬会社に支払われた数百億円のお金(われわれの税金)はなんだったのだろう。
これらのさまざまな矛盾は簡単には解けそうにないので、実際に患者さんに接している我々が、徒にワクチンを勧めないことで食い止めるしかない。
カテゴリー 日誌
母里啓子著「もうワクチンはやめなさい」
ぶさいく犬がやってきた
平成26年11月13日(木)
田舎の父親が加齢のため入院し、飼っていた犬の面倒をみることができなくなった。推定13(14?)才の老犬「福太郎」である。顔が可愛くないうえに躾ができてないので(お手・お座り・待てができないというか教えていない)飼ってやろうという奇特な人がいるわけもない。今は保健所も簡単には引き取ってくれない。以前うちで飼っていた愛犬「まろ」を看取ってくれた動物病院の先生に相談したら、「噛み犬ならどうしようもないが、とりあえず散歩させてみてください。」とのことで散歩させてみると、意外にもちゃんと散歩できた。こんなぶさいくな犬でも13年にわたって父親を癒してくれていたのかと思うと、うちで飼うしかないかと腹をくくった。
日曜日、生まれて一度も体を洗ってもらったことのない「福太郎」を洗ってやり(思い切りイヤがった)、ビニールシート・バスタオル・ダンボール箱などを敷き詰めた車に乗せ、ブルブル震える体を抱いて撫でてやりながら2時間かけて我が家に連れて帰った。「まろ」の定位置だった玄関につないで朝晩散歩することにした。環境の激変にどうなることかと思ったが、周囲に吠えることもなく結構まったりしている。「まろ」の時に使っていた犬小屋は処分していたので、新しく買ってきたが中に入らず外で寝ているようである。「ぶさいく犬」ではなく「福太郎」の「福」がやってきたと思うことにした。
「マッサン」と「軍師官兵衛」
平成26年11月7日(金)
NHKのドラマは久しく見ていなかったが、表題のドラマは実に面白く一度見たら引き込まれてしまった。特に「軍師官兵衛」は官兵衛役の岡田准一の雰囲気が話にピッタリはまっていて、老いて次第に常軌を逸するようになる秀吉役の竹中直人の名演技とあいまって次はどうなるかと一週間が待ち遠しい。はまり役はあるもので、秀吉役には緒方拳と竹中直人が、伊達正宗には渡辺謙がピッタリ合っているように思う。大河ドラマは戦国時代を中心にさまざまの角度から手を変え品を変え放送されてきたが、今回のドラマはうまくできていて録画して見逃さないようにしている。
「マッサン」は竹原出身の竹鶴政孝がスコットランドにウイスキーの勉強に行き、当地の女性リタと結婚し一緒に帰国、紆余曲折を経て北海道余市で独自のウイスキーを完成させるという実話をもとにした朝の連ドラで、始まったばかりであるが人気が出ていてウイスキーの売り上げが増えているそうだ。竹原にある竹鶴酒造には多くの観光客が訪れているという。かくいう私も見学に行き、近くの「遊山」というミシュラン掲載のそば屋でうまいそばを食べてきた。
発想の転換
平成26年10月31日(金)
30数年前、私が母校の産婦人科に入局した頃は、一人前の医師に育てるための優れた教育制度があり、産婦人科医としての基本をしっかり教わった。母校は歴史もあり代々受け継がれてきた「レーゲル集(現在のガイドライン)」に基づいた検査・治療法を先輩医師より丁寧に教え込まれた。このことはその後の医師人生にどんなに役に立ったことか、本当に感謝している。
時代は変わり経膣超音波検査法が一般化してくると、妊娠の診断・予後に対する従来の考え方が大きく変わった。この検査法は子宮の中がクリアに観察できるので、妊娠初期の状態が的確に診断できる。流産するのか子宮外妊娠・胞状奇胎などの異常があるのかが安全にわかるようになった。そして流産は妊卵の細胞分裂の異常によるもので、一定の割合で起きることがわかり、従来の安静・止血剤・子宮収縮抑制剤の投与の効果が疑問視されるようになった。かつては切迫流産という病名で入院・安静・点滴という治療が多くの病院で行われていたが、現在はほとんど見られなくなった。
その当時、治療効果を信じて入院していた人たちは、今から考えると気の毒で仕方がないが、当時は医師も治療効果を信じて行っていたのである。現在行われている色々な病気に対する検査・治療の中にも将来、意味がなかったといわれるようなものもあるはずだ。発想の転換をすればムダと思われるものは容易に見当がつく。その最たるものは老化とがんに関するものだと思う。有害無益と思われる検査・治療をやめるのも大切なことである。
黒鉄ヒロシ著「韓中衰栄と武士道」
平成26年10月24日(金)
「赤兵衛」でおなじみの漫画家黒鉄ヒロシ氏の新刊で、平成12年9月から夕刊フジに連載したものをまとめたものである。以前にも紹介したことがあるが氏の文章は秀逸で、「毎日クローがねえ」という今は絶版になっているエッセイ集を読んで以来注目していた。最近では戦国時代から江戸・明治時代にかけての名だたる武将・著名人を様々な角度から考察した「千思万考」があるが、これも氏のユニークな視点を加味した人物像を浮かび上がらせていて面白い。
表題の著作は近年いっそうギクシャク度を増しているお隣の国との関係を、歴史的考察を中心に的確に述べている。人生の達人である氏の結論は「覚悟して一定の距離を保って隣国と付き合え、覚悟とは武士道である」、一見古臭いと思うかもしれないが、含蓄のある氏ならではの発想で、じつにそのとおりだと納得する。
一進一退
平成26年10月17日(金)
尺八を始めて10年にもなるとさすがに才能がないことがわかるが、なにしろ吹いていて気持ちいいので続けている。先月、南区民文化センターでのささやかな演奏会で2曲、独奏した。琴なしの独奏は初めてで、録画したものをいただいたので自分の演奏を客観的に見る(聞く)ことができた。自分では出来が良くなかったので見るに堪えないと思っていたが、思ったほどひどくなかったので少しほっとした次第である。その後、他の曲を吹いてみてもなんだか音がよくなったように感じて気を良くしていた。
ところが最近、自分で吹いて録音した音を聞いてみたらやはりダメで、自己評価というものは客観的評価よりも常に高く、ときおり思い出したように正しい評価をするものだと思った次第である。スポーツは勝ち負けがはっきりしているし、試験は点数で評価されるので客観性が高いが、音楽は評価が難しい。だからといって常に正しい自己評価をしていたら吹く気がなくなるだろう。これはすべての芸事だけでなく、ヒトのあらゆる行動について言えるのではないだろうか。
半村良ふたたび
平成26年10月10日(金)
かつて注目して新刊が出るたびに読んでいた作家は何人もいるが、ある時を境に興味が無くなった作家も少なからずいる。また、人気作家であっても亡くなった後、あっという間に忘れられた人も多い。一時はまっていてほとんどの作品を読んだ作家に「半村良」がいる。SF、伝奇小説の名手といわれていたが、さらりとした人情ものも上手かった。
初期の作品「石の血脈」「産霊山秘録」の面白さにはまって以来、「妖星伝」「太陽の世界」で半村良は天才だと思い、特に「太陽の世界」は新刊が出るたびに買っていたが、ある時期から中断された。結局、再開することなく氏は他界されたので未完のままである。思い出して読み返してみても決して色あせてなく、当時のわくわくした気持ちがよみがえる。
流行作家となって脚光を浴びていたが、亡くなってしまうとすぐに忘れられてしまう作家が多い中、半村良は自分にとっては心に残る作家である。
天高く馬肥ゆる秋
平成26年10月3日(金)
あいかわらず自転車でクリニックに通っているが、3キロメートルは程よい距離で季節の変化が直接肌に感じられるのが快い。今朝は雲一つない秋晴れの空で気持ちのいい一日になりそうな予感がする。10年前の10月の診療日誌をひも解いてみると、今日とまったく同じような気持ちのいい日であることに触れ、こんな日は尺八を持って山中に分け入り瞑想にふけるのがいいなどと能天気なことを書いているが、確かにそんなことを思わせるような青空である。
わが国はきれいな水と緑に恵まれ、四季の移ろいがさまざまな文化を生んだ世界でも稀な楽園である。鎖国をやめて近代国家に変身した頃に日本を訪れた西洋の要人の中には、日本を「東洋の真珠」に例えてこのような素晴らしい国が存在するのは奇跡であり大切にしなければならない、と本国に伝えた人が何人もいたという。
今年はマツタケも豊作のようだ。豊穣の秋を満喫したいものである。
低用量ピルの副作用について
平成26年9月25日(木)
愛知医科大学の若槻明彦教授の講演があった。低用量ピルは、避妊、生理痛の改善、生理周期の安定化、子宮内膜症の治療、卵巣がん・大腸がん発生の抑制など多くのメリットがある一方、血栓症の発生頻度の増加が問題になっている。そのことについて実際はどうなのか、対策はどうするのかという話で、興味深く聞いた。
ピルはメリットがデメリットをはるかに上回る薬であるが、副作用をなくすよう努めなければならない。静脈血栓症はピルを服用していない人にも発症するが、もっともリスクが高いのは妊娠である。妊娠中と産後3か月の血栓症の発生頻度は非妊時の10倍以上になるという。次いで問題なるのは喫煙である。以下、高年齢、肥満もリスクが高くなる。だから喫煙以下、リスクの高い人にはピルは勧めないのが原則である。血栓症が起きるのはピル内服開始3か月以内が最も多く、その時期を過ぎれば血栓症のリスクは低下する。だからその時期は特に気を付けなければならない。血栓症の発症を予知する方法はないということなので、一層注意が必要だと思ったことである。
ベセスダシステムについて
平成26年9月19日(金)
慶應義塾大学産婦人科、岩田卓講師の講演があった。子宮頸がんの細胞診の問題点を改善しようと、アメリカのベセスダという処に米国の専門家が集まり委員会が組織された。そこで従来の方法を改善すべく考えられたのがベセスダシステムで、現在はアメリカだけでなく世界でも使われるようになった。わが国でも従来のパパニコロウ細胞診から上記の方法に変えてきている。
ポイントは子宮頸がんの原因といわれているHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を関連付けていることで、従来の検査法より少し精度が上がっているそうである。もちろんこの方法も最善ではなく、今後も改善していくことになるだろう。ただ、感想としては本質的な意味で「がん」の治療ができない以上、検診の精度が上がってもなあと思ったことである。