平成27年11月6日(金)
アルコールに弱いくせに好きで、だらだらと飲むことが多かったが、とうとう飲めなくなった。先週、木金と飲みがあり土曜日に偶々いい肉があったので家ですき焼きをして旨かったのでつい食べ過ぎてしまった。翌日から胃部不快感でなにも欲しくない。アルコールは厳禁である。すぐに治るかと思ったが今回はなかなか回復しない。なのに火曜日は休日だったので久しぶりに「梅の葉」で取れたてのイカをビールで堪能してしまった。少し回復してきていたのがまたもダメになった。水曜日から昼は「讃岐屋」でうどん、夜は湯豆腐などの鍋物のみ。体重が減るかと思ったがほとんど変わらず。いずれにしてもアルコールは自分には向いていないのだと思う。アルコールのほとんどない生活に戻るのがいいかもしれない。
カテゴリー 日誌
アルコール中止
久坂部羊著「人間の死に方」
平成27年10月29日(木)
表題は医師で作家の久坂部氏が、自身の父親を在宅で看取った顛末を記した新刊書である。氏の父親も医師であったが医療を信用していないので病院にかかることはほとんどなく、自由気ままに生きた。息子である著者との関係はすこぶる良好で、家族関係が良いことがやすらかな在宅死を可能にしたのだろう。
著者の久坂部氏は大阪大学医学部を卒業後、外科専攻したけれど思うことがあって外務省に入り、日本大使館の医務官となって9年間の海外勤務をした後、現在は高齢者医療にかかわりながら作家活動をしている。筆名は父親の姓と母親の旧姓からとったもの(久家+坂部)だと思われるが、著者の両親とくに父親に対する思いが文章から感じられて本当にいい家族だと想像させられる。氏の祖父母、曽祖父母も(父方も母方とも)病院ではなく自宅で亡くなったそうで、珍しいことである。きっとそのような星のもとに生まれた一族なのだろう。
内容に共感する部分が多く、一気に読んでしまった。
十の詩曲
平成27年10月23日(金)
偶然、YouTubeで早稲田大学グリークラブの演奏する「六つの男声合唱曲」を見つけ、その演奏の素晴らしさと曲にまつわるあれこれを思い出し、何とも言えない気持ちになった。この曲は、ショスタコービッチ作曲の無伴奏混声合唱曲「十の詩曲」から、合唱指揮に造詣の深い今は亡き福永陽一郎氏が6曲を選んで男声合唱曲に編曲し、歌詞も原曲のロシア語の詩を日本語に自分で意訳したものを1970年代に東西四連で演奏したのが初めだと思うが、その時に大阪まで聴きに行った合唱団の仲間がテープレコーダーに録音したものを聞いたとき思わず「これだ!」と叫んだ。ちなみに「東西四連」とは早稲田、慶応、関学、同志社の東西4大学の男声合唱団の合同演奏会のことで、東京と関西で毎年開かれていて、そのレベルの高さに一般の大学合唱団はあこがれを抱いていたものである。
当時、大学男声合唱団の学生指揮をするように先任の優れた先輩から言われ、能力もないのに若気の至りで引き受けてしまい大いに皆に迷惑をかけてしまった。合唱コンクールに出場することになり、自由曲を何にするか迷っていた時にこの曲を聴きこれに決めたのである。ただ、曲自体が非常に難しい上に、指揮者の能力がないため散々な出来で、いまだにメンバーに悪かったと反省している。
今回聴いたのは2010年、京都で行われた第59回東西四連の演奏会で、福永氏のお孫さんにあたる小久保氏の指揮による早稲田大学グリークラブの演奏である。その素晴らしさに陶然となり思わず書いてしまった。
美しい姫路城
平成27年10月16日(金)
天守閣の修復が完成した姫路城に休日を利用して訪れた。以前から新幹線で姫路を通過する時お城を見ようと思っても、ずいぶん長い間覆いがかけられて見ることができなかったが、晴れて修復が終わったと聞き行ってみる気になったのである。姫路は医師になって初めて研修医として赴任した地で、病院の看護婦さんたちと姫路城の広場で夜桜酒盛りをした思い出があるが、あの時は寒かった。当時は世界遺産などという厚化粧もなく、ひたすら美しいお城で春は花見客でにぎわい、天守閣に登るのも簡単であった。今回訪れて驚いたことは、観光客の多さである。お城に入るのに90分待ちで、入った後も通過するだけでゆっくり見る暇はなかった。せっかく昔を思い出しながらしみじみ歩いてみようと思っていたが、残念だった。
姫路での昼食はネットで調べて予約しておいた広東・四川料理「避風塘ふじた」に行った。小さな店だが地元の人が勧めるだけあって実に美味しく、丁寧に作られた料理(飲茶)をリーゾナブルな値段でいただいた。接客も良く大いに満足した。次に訪れる時には観光客の少ない平日に姫路城を見て、この店で夕食を食べてみたい。
「そば」について
平成27年10月9日(金)
「そば」についてのエッセイでは池波正太郎氏の作品が知られているが、氏は店が込み合っていない午後に行きつけの蕎麦屋にふらりと入り、軽いつまみで酒を1~2合飲み、もりそばをたぐってさっと引き上げる、というようなふるまいを書いている。私も「そば」は好きなのでちょくちょく食べに行くが、よく行くのは「はっぴ」と「そば切り吟」である。どちらも「そば」がすばらしく、つゆもそれぞれ微妙に異なるが美味しく甲乙つけがたい味である。つまみも品数は少ないがビール、日本酒に合うものを用意していて好きである。「つまみ」の種類とおいしさではそごうに出店している「藪そば」がいい。ここのかき揚げとだし巻きは、さすが日本の名店だと思わせる味である。
「そば」そのものでは高橋邦弘名人の「雪花山房」が素晴らしかったが、残念ながら今年の5月に閉店したそうである。高橋氏は今もそば打ちの指導に全国を回っているらしい。拠点を大分県に移すといううわさもあるが真相はわからない。最近宮島に高橋名人系列の「翁」ができたそうである。ぜひ行ってみたいと思っている。
産婦人科の薬
平成27年10月2日(金)
先日、いま最も多く処方されている産婦人科の薬のベスト10を知る機会があり驚いた。私が使っていない薬ばかりである。ベスト1は子宮収縮抑制剤(流早産防止の薬)で注射ではプラセンタ製剤だったのである。
つい最近にも書いたが、30数年前に産婦人科教室に入局した時に「切迫流産には止血剤と子宮収縮抑制剤を処方する」という決まりがあった。まだ超音波検査がない時代で、それらの薬が効果があるかもしれないと思われていた時代である。その後、流産の原因は妊卵の細胞分裂の異常によることがわかってきたので、これらの薬の有効性に疑問を持つようになった。流早産は自然の流れで起きるので、薬でどうなるものではない。まして外来で内服薬を出したぐらいでは止められないし副作用もあるので、患者さんが「何か薬を飲んだ方が精神的に落ち着くので出してくれ」と言わない限り処方していない。またプラセンタも薬として認可されてはいるが、生物製剤だし効果については?なので使わない。
他にも突っ込みどころ満載の薬がいっぱいあり、逆に面白かった。厚労省は薬の使用量を減らそうとしているようだが、私みたいな医者ばかりになると薬の使用量は激減して薬屋さんはあがったりになるだろう。
金山教授の講演
平成27年9月26日(土)
浜松医科大学産婦人科・金山尚裕教授の「羊水塞栓症の救命法と予知・予防」と題した講演があった。現在、我が国の妊産婦死亡原因で1番多いのが羊水塞栓症だそうである。とは言っても妊産婦死亡率は、世界で最も低い国の中に入っているので一般医師が経験することはまれだろう。分娩(お産)は実に大変なことで、分娩の際はもちろんだが妊娠中・産後を通じて何が起きるかわからない。近代医学が広まるまでは、数百のお産で1人は亡くなっていたので、文字通り命がけだった。現在は2万~2万5千のお産で1人である。それでも大変なことに変わりはない。実は帝王切開も羊水塞栓症の大きなリスクになっているので、安易な帝王切開は控えるべきだろう。
講演では、酸素飽和度を調べるセンサーを指先に装着して内診し、生まれる直前の胎児の頭部に当てて測定する装置を考案してPRしておられたが、発想としては面白いと思う。胎児の状態が数字として簡単にわかる方法が新たに増えるのは有用だろう。お産をしている施設はこの装置を採用するのではないだろうか。
石原教授の講演
平成27年9月18日(金)
「月経困難症治療は何が変わったか?」という演題で、埼玉医科大学産婦人科教授の講演があった。月経困難症(生理痛)は鎮痛剤による対症療法が主体であったが、低用量ピルが我が国で承認されてからは非常に対処しやすくなった。子宮内膜症や子宮筋腫に対しても、ピルのおかげで症状は緩和され、手術しないでもよくなったケースは多い。
今回の講演では低用量ピルより更にエストロゲンの少ないピルとの比較や、最近の考え方などわかりやすく説明していただき大いに参考になった。ピルの連続内服による月経サイクルの延長についても何の問題もないという考えであり、当院での考え方と同じである。懇親会では日本でピルの承認が10年以上放置されていたことへの不満も話しておられ、共感をおぼえたことである。
開院18周年!
平成27年9月10日(木)
このささやかなクリニックを開いたのは18年前の今日である。開院した当初はすべてが初めてのことで不安と試行錯誤の連続であった。10年位経ったころから診療についてはあまり困ることはなくなったけれど、いつも何か心配するようなことはあった。それでも周囲の人たちのおかげで今日まで無事にやってこられたのは本当にうれしいことである。18年というとずいぶん長いようであるが、実際の感覚としては5~6年ぐらいであろうか。だから自分ではそんなに年を取ったとは思わないけれど、外から見れば確実に歳を重ねているのだろう。今日は気持ちのいい秋の日である。毎年、9月10日を迎える度にこの季節に開院してよかったと思う。
ええ加減でいきまっせ!
平成27年9月5日(土)
タイトルは医学雑誌「日本医事新報」に大阪大学病理学教授の仲野徹氏が連載しているエッセイの題名である。「日本医事新報」の歴史は古く、大正10年(1921年)発刊以来、今日まで続く息の長い雑誌で、中電病院に勤務していた頃から読んでいるので、もう20年以上親しんでいることになる。ずっと旬刊だったのが少し前から週刊になっているが、仲野氏が毎週エッセイを載せるようになってもう60回を超えた。毎回、興味深い話や日常感じたこと、氏の専門の世界でのトピックスなどが絶妙の筆致で描かれていて、いつも楽しみにしている。
興味深い本の紹介もあり、最近で最も面白かったのは「病の皇帝「がん」に挑む」で、氏が「これまで読んだ医学・生物学の本の中でベスト3に入る」とまで絶賛していたので早速アマゾンで取り寄せて読んでみた。著者のシッダールタ・ムカジー氏はインド出身の腫瘍内科医で、スタンフォードからオックスフォードを経てハーバードからコロンビアとすばらしいキャリアがあり、この本でピューリッツァー賞を受賞している。これまでに人類がどのように「がん」に挑んできたかあますところなく書かれていて、実に興味深く読んだ。もし仲野氏のエッセイ(仲野氏の尽力で我が国でも翻訳・発売された)を読んでいなければ知らなかったので感謝である。