平成29年7月7日(金)
表題は産婦人科医師で漫画家の茨木保氏が「日本医事新報」に連載している4コマ漫画である。この雑誌は開業医の多くが購入している週刊誌で、創刊は1921年、実に長く続いている医学雑誌である。勤務医だった頃、病院の図書室で医学誌を調べているとき偶然見つけて読んでみると、専門的なことから一般のことまで幅広い記事が載っているだけでなく、巻末に求人広告や求縁希望などの欄があり面白いので以後時々読んでいた。開業後は月刊の医学雑誌の購読はしていたが、廃刊したものや内容が今一なのでやめたものなどあるが、「日本医事新報」だけは止めずにずっと購読している。
「がんばれ!猫山先生」は産婦人科医の茨木氏自身が開業した後になかなか経営が軌道にのらない苦労などを漫画に託して描いていて、多くの読者の共感を得ているのである。さらに氏のやさしさとギャグの面白さが秀逸で、新規開業の前に読んでおくべき本の一冊に推薦されている。毎週1話が載っているが100話を超えるごとに1冊にまとめられて発売され、今回で第5巻がめでたく発売された。開業医をしながらよく毎週描けるものだと感心しているが、雑誌が届くと初めに読むのはこのマンガでいつもほっとする気持ちになる。ファンとして氏にはずっと掲載を続けてほしいものである。「がんばれ!茨木先生」
カテゴリー 日誌
「がんばれ!猫山先生」
タバコ問題
平成29年6月30日(金)
受動喫煙について規制強化が議論されている。WHOは世界各国の禁煙環境について4つのカテゴリーに分けているが我が国は一番下の4番目だそうである。ただし、このカテゴリーに入っている国は世界中で70ヵ国あり、G7では5つの国がこの中に入っているそうである。つまり歴史のある欧州各国を始め多くの国はタバコに寛容なのである。禁煙を最も推進しているのは禁酒法を創ったことのある米国で、このところ我が国もこれに従っていて次第にタバコが吸えなくなっている。病院敷地内禁煙をはじめ公共施設内禁煙はあたりまえで、街中でも吸える場所を探すのが大変なようである。
自分が若い頃は大人になれば酒・タバコがあたりまえで、むしろ成人のあかしのような時代であった。マージャン・パチンコの場は煙がもうもうと立ちこめていて、今から思えばじつに不健康なところであったが何とも思わず過ごしていた。時は移り今から15年前に禁煙してからは煙のない快適な生活をしているが、ごくたまに今一服つけたらうまいだろうなと思うことがある。喫煙していてやめた人ほど禁煙運動に邁進する傾向があるが、迷惑さえかけなければご自由にというのが自分のスタンスである。タバコは体に良くないのは確かだと思うが良い点も多々あり、今のように魔女狩りのごとく規制するは反対だ。歴史のある欧州や我が国ではタバコは文化として根付いていて、江戸時代から金唐皮の煙草入れ、様々な形のキセル、さまざまな根付などの製造が昭和初期まで続いていたのである。これらの職人的遺産は今では博物館でしか見られない。いずれにせよもっと寛容にした方がいいと思う。
日本地図2017年版
平成29年6月23日(金)
本屋で立ち読みしていたら成美堂出版の上記の地図本を見つけた。政治・経済・産業から文化・スポーツ、社会・交通などさまざまな分野の情報を都道府県ごとに分けて示していて、わかりやすいので思わず買ってしまった。
広島県は面積は11位、人口は12位であり総人口286万人のうち広島市に119万人が住んでいる。一人当たりの県民所得は306万円で10位、学力テストも10位だそうである。意外だったのは日本酒の生成量で1位は兵庫(灘、他)2位が京都(伏見、他)3位が新潟でわが広島(西条、他)は10位だったことである。先日も千葉から来られた教授との会食で「3大日本酒生産県の広島・西条の酒をどうぞ」と勧めていたが訂正しなければならない。
がん罹患率(死亡率ではない)では女性が全国4位、特に乳がんが4位なのは検診が他県よりもしっかり行われているからだろうか。大学等卒業者の就職率は広島は5位であるが耕作放棄地率は全国3位である。ちなみに1位は山梨、2位は長崎である。他にも高速道路のガソリンスタンド空白区間だとか最高速度引き上げ(110km~120km)の区間はどこかなど面白いことが満載である。
厚労省の出している「国民衛生の動向」はきちんとした緻密な資料であるが、この地図本のようなわかりやすいものもいいと思う。
「更年期障害治療を極める」
平成29年6月16日(金)
東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授、高松潔氏の表題の講演があった。最近は更年期障害に関する講演はあまりなかったので興味を持って聞いたが、そもそも更年期障害に対してホルモン補充療法(HRT)が欧米で推奨され我が国でも普及が始まった矢先、WHIが推奨しないという発表をして以来、HRTは下火になっていた。それでも実際に効果があるので広がりはしないけれど確実に行われてきた。
最近、「HRTは乳がんに関与する頻度は低い」という知見が欧米で発表され再びHRTの普及が始まっているという。閉経以後、女性ホルモンは急激に低下するがそれに伴う全身の変化は一口で言えば「老化が進む」ということである。生物はおしなべて生殖期間が過ぎれば命が終わるけれど、ヒトは1900年頃から寿命が延びてきて閉経後の期間が長くなってきた。日本人女性の平均寿命は85歳なので、30年以上女性ホルモンの枯渇した時期が続くことになるがその間ずっと女性の脳下垂体からは、卵巣から女性ホルモンを出せという指示が出続けるのである。女性ホルモンの不足は生命には直接関係しないが、生活の質にはおおいにかかわる。ホルモンが不足すると骨がもろくなる、肌の潤いがなくなる、性交痛がおきる、コレステロール値が増えるなどの変化がおきる。さらに、ボケやすくなるとか血管のしなやかさが失われやすいという指摘もある。
面白かったのはHRTは止め時を考えなくてよいということだった。以前は閉経後10年位は使えるということだったが死ぬまで使えるとはありがたい。また、漢方薬が本当に有効なのかと調べた研究ではプラセボも漢方薬も症状改善率は同じだったということで、思わず笑ってしまった。漢方薬信仰の人には悔しい結果だろうが事実は曲げられない。いずれにせよ興味深い講演であった。
梅雨入り?
平成29年6月9日(金)
例年より少し早い「とうかさん」も終わり、7日には中四国地方も梅雨入りしたとの報道があった。7日は雨だったとはいえもう梅雨入り?ほんとかなと思ったが、今日は一転して夏のような日差しだ。先日故郷へ帰った時に見ると、平地に広がる田んぼは一面耕されていていつでも水が入れば田植えができるように準備されていた。広島の北部ではほとんど田植えは済んでいるようだけれど、故郷では梅雨を待って田植えを行っていたことを思い出した。梅雨入りしたのなら今頃は田植えが始まっているのかなと思ったが、こんなに天気が良い日が続くと田植えができるのか心配になる。水がなければ田植えはできないからだ。
今は機械で田植えをしているが、自分が小中学生の頃は稲の苗を一株ずつ手で植えていた。小学校の同級生のほぼ全員が自分も含め農家の子なので、この時期は田植えの手伝いのために「農繁休暇」があり学校が休みになった。梅雨の雨降りに合わせて一斉に行われるので3日ぐらい休みになっただろうか。田植えは結構きつい仕事でイヤだったが仕方ない、早く終われと思いながら手伝いをしたものである。クラスに一人くらいは勤め人の子供がいて田植えをしなくていいのをうらやましく思ったものである。それも今は昔、故郷では田を作る人がいなくなって一部の人に頼まざるを得なくなっているようだ。
カルテ庫の整理
平成29年6月2日(金)
カルテを置く場所がなくなりカルテの整理を始めている。受付のとなりにカルテが1000人分(しっかり入れれば1500人分)入る棚が4つあり、そのうちの2つの棚は直近の人のために使うので、1000人分が一杯になったら古いものをカルテ庫にしまって新たに棚を空けねばならない。この作業は開業してからずっとやってきたことであるが、6000人を超えたあたりからスペースがなくなり別の置き場所に移すことになった。開業前には先輩から「カルテ庫と物置ははたっぷり取っておけ」と聞いていたので自分としてはそのようにしたつもりだったがやはり全然だめだった。現在カルテ番号は2万を超えているので、古いカルテは処分しないとどうしようもない。医師法ではカルテの保存期間は5年となっているが、いつ来られてもいいようにカルテはできるだけ長く保存しておきたい。それでもさすがに古いカルテは処分しなければスペースがなくなっている。電子カルテならスペースはあまり必要ないだろうが、紙カルテの方が一目で経過がわかり使いやすいので替える気はない。
古いカルテを見ていると、一度だけ来られて以後二度と来てない人や何年間か来られていてその後来てない人、いろいろ思い出されて感慨深いものがある。できればすべて保存しておきたいと思うのだが…。もちろんレセコンにデータは保存されているが、生カルテがなくなるのはつらいものである。
新潮45特集「私の寿命と人生」
月刊誌新潮45は興味深い記事が結構見られるので注目しているが、6月号の特集「私の寿命と人生」は共感することが多かった。著名人たちの現在の状況や死生観などが述べられているが、医師で作家の久坂部羊氏による「実際の長生きは苦しい」は高齢者医療に携わっている氏の本音であり腑に落ちる内容である。元気のままで長生きできると思っている人が多いがそれは夢想であり、実際は体が弱り機能が衰え、生き物としてダメになっていくのを実感するのが長生きだという。がんにせよ心臓・脳血管障害にせよ老化によるものなので自然の寿命なのである。それをなまじ病院などに行けば無理やり死を遠ざけられ想定外の苦しみを味わうことになる。病院に1,2か月通っても良くならなければ医療は無力とあきらめたほうがいいという。作家で津田塾大学教授、三砂ちづる氏の「末期ガンの夫を家で看取る」も、昔から生まれるのも死ぬのもあたりまえのように家で行われていたことで、生も死も身近なものだったのだと実際に夫を家で看取ることで実感したという。夫は痩せてしまい食べられなくなっていたが、最後まで今日死ぬとは思っていなかったと思うし、亡くなるその日まで普通に話して心を通わせることができ、そしてふっと向こうに行くように死が訪れたという。
特集の最後に102歳で現役のフォトジャーナリスト笹本恒子氏を紹介している「100歳の肖像」という記事は、それまでの普通の人の老いの困惑、寿命についての記述と比べてあまりの違いに驚いた。笹本氏は100歳を超えても元気で仕事をしており、あの有名な現役医師、日野原氏と双璧をなす生命力があり、まさに持って生まれたものという他はない。寿命にはさからえないとあらためて思った次第である。
ER(緊急救命室)
平成29年5月19日(金)
アメリカのテレビドラマには面白いものが多く、このERも職業がらずいぶん楽しませてもらった。何年かに一度衝動的に見たくなることがあり、昨夜はブックオフで1シーズン分が3000円ぐらいで買い置きしていた中古DVDセットの第2シーズン第1話を見てしまったら次が見たくなって、結局遅くまで見る羽目になってしまった。
ドラマERはアメリカで1994年から2009年まで放映され全部で15シーズンあり、日本ではNHKなどで放送されて我々が見たわけであるが、テレビ番組をそのまま見るのは時間的に難しいことがあり当時はツタヤでビデオを借りて見ることが多かった。その後DVDになったが、一回借りると続きが見たくなって結局全部借りてしまうことになるので、ブックオフの中古DVDコーナーで安く売っているのを見つけて何シーズン分か買っておいた。あらすじはわかっていてもまた見たくなるのは内容・設定・登場人物の演技などすべてのレベルが高いからだろう。初回は廃院になった病院を使って撮影したらしいが、すぐにセットを作って長期にわたっての放映にそなえたようである。実際全米で視聴率1~3位を何年にもわたって獲得していたという。作品を通じて我が国とアメリカの医療内容や考え方の違いなどが見えてきて実に興味深い。実際にアメリカでERで仕事をしていた医師が「ほぼあの通りです」と言っているが、あんな激しい職場だったらやってられないと思うがアメリカ人はタフなものだ。また続きを見ようと思う。
「文豪の素顔」
平成29年5月12日(金)
表題の本は写真をふんだんに使って明治・大正・昭和の文豪と言われる作家たちのエピソードを紹介したもので、既刊の「文豪の家」「文豪の風景」に続くシリーズ第3作である。樋口一葉から山本周五郎まで31名の作家について掲載しているが、見たことのない写真がたくさんあり結構楽しめる。芥川龍之介自身が気に入っていた若き日の写真はテニスの錦織圭選手にそっくりだったり、宮沢賢治と妹トシの幼い頃の写真とその妹が教師になったころの写真(その後すぐに亡くなるのだが)など興味深いものが満載である。
現在では「文豪」という言葉は使われなくなったのでこの言葉に違和感のある人は多いと思う。「文豪」という言葉にふさわしい作家の筆頭は夏目漱石だろうが、確かに当時の最高の頭脳を持ったオピニオンリーダーであり、人生を深く見つめ身を削るようにして作品を発表し49歳で亡くなったがいまだに根強い人気がある。掲載されている31名の作家で長命の人は少なく、樋口一葉は24歳、石川啄木は26歳、宮沢賢治でさえ37歳で亡くなっている。当時は結核で亡くなることが多かったとはいえやはり文章を書く仕事は健康にはよくないのだろう。
自分がかつてこの本に載っている作家たちの作品を読んだ頃のことを思い出しながら写真とその解説文を見ると、何とも言えない面白さがある。
三連休
平成29年5月6日(土)
当院は暦通りなので4月29,30日は休みだが5月1,2日は開院、3,4,5日は休みで6日の今日は開けている。30日は休日診療の当番のため開院していたので長く休んだという実感がない。国内はいいけれど海外旅行に興味がないので大型連休にしてまで行こうとは思わないからこれでいいのである。1か月前に急に思い立って、是非見たい美術展が開かれている福岡・佐賀に行こうと思ったけれどちょうど博多どんたくと重なっていたため、JTBに行っても宿が取れなかったので、今回は近場でごろごろすることにした。
3日は半年ぶりに弥山に登ったが前回より足が疲れて日頃の運動不足を思い知ったわけである。それでも山頂からの眺めはすばらしく汗をかいた後のビールは最高でこのために登ってきたといってもいいぐらいだった。4日は息子も参加している高槻市ジャズフェスティバルを聴きに大阪に行ったが、趣味でやっている社会人バンドが派手なパフォーマンスをしていて面白かった。夜はかねてから再訪したいと思っていた店主が広島出身の「島之内一陽」の予約が取れたので大いに期待して行く。実はこの店の予約が取れたので高槻まで来る気になったわけであるが、期待にたがわずどの品も吟味工夫がなされていておいしい上に接客もよく、この店が広島にあればと思ったことである。5日はそれこそ近場でごろごろ、かくして連休は終わってしまったが十分リフレッシュできた。