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無痛分娩に思う

平成29年10月6日(金)
今日の新聞に、無痛分娩の際の麻酔ミスにより妊婦が死亡したとして大阪府の産婦人科医院の院長が業務上過失致死容疑で書類送検されたという記事が載っていた。そういえば少し前にも京都でも同じようなことがあり、夫が医院に対して莫大な金額の損害賠償請求をしているという記事もあった。
昔から「お産」は女性にとってまさに命がけの大仕事で、我が国でも70年前は600人に1人は母体死亡があったのである。当時は田舎では家に産婆さんを呼んでお産をするのが普通で、病院でのお産は少なかったこともあるだろうが「お産」とは本来何が起きるかわからないものであることは、産婦人科医なら肝に銘じていることである。今は母体死亡は20000人に1人になったが命がけであることに変わりはない。欧米では無痛分娩が結構行われているようであるが、我が国では6%でまだ少数である。「お産」という自然現象に伴う「痛み」はヒトが許容できる範囲内であるはずである。そして「痛み」はこれ以上だったら命が危ないよと知らせてくれる指標でもある。それを麻酔でなくすることがいいこととは思わない。もし無痛分娩をしたいのならその危険性を納得してするべきで、医師の側も万全の態勢で行わないといけない。そうすると高額になるのは必然でそうでなければ安全にできるはずがない。
「お産」がどんなに危険ととなり合わせか知っておいてもらいたいと産婦人科医は思っている。そしてどんなに技術も持ち誠意をつくしてもうまくいかないことがあることも。

技芸審査会

平成29年9月29日(金)
あいかわらず下手な尺八を吹いている。先日も小さな発表会で一曲吹いたが、人前で吹くのは自分の実力がわかっているだけに冷や汗ものである。師匠は人前で吹くことが上達に一番役に立つと言われるのだが、自分としてはたいしてうまくもないのに人に聞かせるのは迷惑以外にないのではないかと思うので躊躇するのである。だれでも下手なカラオケを聞かされるほど嫌なことはないだろう。そうはいっても上手くなるまで待っていたら一生人前では吹けないことになる。そのあたりが微妙に難しいのである。
11月に大阪で師匠の属する流派の審査会があり、広島からも何人も出場するらしい。自分も今回初めて出る気になったので課題曲の練習を始めたところである。審査会では出場者の出来栄えを審査し順位付けをするというが、出演者の中では技術も経験も下の方だと思うので最下位にならなければいいが。まあ、会場の雰囲気だけでも味わって来ようと思っている。

週刊誌の反医療キャンペーン

平成29年9月22日(金)
今から20年以上前に当時慶応大学医学部講師だった近藤誠氏が「がん」の治療についての目から鱗が落ちるような論文を発表して以来、多くの医師たちが現在の医療の矛盾した部分や過剰な検査・治療などについて声をあげるようになった。医療には限界があるのに治そうと頑張るあまり、知らず知らずのうちに患者さんに不利益しか与えないような検査・治療を行ってしまうことに対する警鐘を鳴らすという意味で大切なことである。なにしろ西洋ではかつて麻酔のない時代に乳がんの治療のために、両手足を押さえつけて患部を切り取り焼きごてを押し付けて止血している絵が当時の教科書に載っているのである。当時は遅れていたからだと笑って済ませられることではない。今も形を変えて同じようなことが行われていないとはいえない。
そのような医学の陥りやすい行為に対して最近では週刊現代や週刊ポストなどが反医療キャンペーンを行っている。言い過ぎの部分もあるが納得するところもありいいことではないかと思っている。今月に入って週刊新潮が漢方薬、製薬会社ツムラに対するキャンペーン「漢方の大嘘」を始めた。漢方薬については医学部で講義が一切なかったのにいつの間にか保険薬になってしまったので、医師になってすぐに自分で勉強してみたが、今の漢方は本来の漢方ではなく漢方薬を処方するためのものになってしまっていると思った。我が国では漢方は女性に人気があるが、この先どうなるか注目している。

子宮内膜症の講演

平成29年9月15日(金)
子宮内膜症についての講演が2日続けてあった。倉敷平成病院の太田郁子先生と東大産婦人科准教授の甲賀かをり先生である。それぞれ別の切り口からの話で興味深い内容であった。子宮内膜症については診断、治療法の変遷に長い歴史があり、その積み重ねによってかなり克服できるようになったがまだまだ難しいところも多く、さらに努力が続けられている。特に子宮腺筋症は難しい部分があるので、最近東大の大学病院に「子宮腺筋症外来」を開設して難しい症例をフォローしているそうである。
子宮内膜症に最も有効なのはピルだと言われているが、実際に内膜症の有無にかかわらず多くの女性の生理痛の緩和に役立っている。それでもピルを使っているにもかかわらず症状が進行する人もいて、それに対して新しく開発された薬や新たな手術が試みられている。妊娠できる状態を維持することが究極の目的であるが、実はこれが最も難しいのである。
子宮内膜症は子宮内膜が月経時に腹腔内に逆流する、あるいは子宮筋層内に入り込むことが原因といわれているが、妊娠するためには排卵、月経が必須である。月経そのものが内膜症を引き起こし増悪させるわけだから、排卵を止めない限り難しいわけである。早いうちに妊娠、出産を終えてしまえば不妊症のために高い治療費を払わなくてもいいし、内膜症に対する治療も難しくない。そもそも内膜症になる率も減るし一番いいのだけれどなかなかそうはいかないのだろう。難しいところである。

「うなぎ」浅田次郎編

平成29年9月8日(金)
カープの対阪神3連戦はすべて逆転勝利となって、今日は雨も上がりさわやかな秋晴れで気持ちがいい。
表題は10人の作家、歌人による「うなぎ」をモチ-フにした作品集である。歌人の斎藤茂吉は特別にうなぎ好きだったそうで、息子の北杜夫も茂吉のうなぎ好きについてエッセイで紹介している。ちなみに茂吉が生涯に食べた蒲焼きの回数を調べて書いた書物(文献 茂吉とうなぎ)まであるほどで、1万8千首の歌を詠んだ大歌人はうなぎについての歌をいくつも詠んでいる。他にも井伏鱒二をはじめそれぞれの作家のうなぎに対する思い入れが文章から感じられ、読んでいて大いに共感を覚えうなぎが食べたくなった。
うなぎの蒲焼きは米飯とまことに相性が良く、日本人の食文化の結晶といっても過言ではないと思う。ふるさと納税の返礼品ではうなぎのかば焼きは上位の人気である。自分は「うなぎ屋たむろ」の蒲焼きが好きで手軽に食べられるので重宝している。最近、食べログで東区光町に新しくできたうなぎ屋を見つけた。かつてそごうにあった「伊勢定」に勤めていた人が広島に帰って開いた店だそうで早速行ってみた。この店「うなぎ川誠」は伊勢定をほうふつとさせるふわっとした食感と焼き加減で、たれも甘すぎない実に結構なうなぎだった。また行こうと思う。

秋は最高の季節

平成29年9月1日(金)
今日から9月、昼間はまだ日差しが強いけれど、朝夕は涼しくなって秋を感じさせるようになった。1年の3分の2が終わり今年はあと4ヶ月になったわけである。まことに月日の経つのは早いもので、新年を祝ったのはついこの間だったような気がする。
以前にも書いたが、この季節になると盛りの夏が終わってしまったものがなしさを感じる。そして「階前の梧葉已に秋声」と思わず口ずさんでしまう。けれど、そのうちに暑からず寒からずの最高の季節、豊穣の秋を迎える喜びに「天高く馬肥ゆる秋」と唱えることになる。これは自分にとって毎年行われる行事のようなものだが、7月後半ごろからの胃部不快感もなくなりアルコールもいっそうおいしくなった。うどんをメインにしていた昼食も従来のサイクルに戻し始めているが、油断は禁物である。すぐに飲み過ぎ食べ過ぎで胃をやられるのはいつものことだから。
なにはともあれ秋を楽しんでいきたいものである。

同門会名簿

平成29年8月25日(金)
母校の岡山大学産婦人科同門会の名簿が毎年送られてくるが、10年単位で見ていると会員の動向が良くわかる。現在400名以上の会員が在籍しているが、医師になって3年目の会員から高齢の大先輩まで多数の会員が卒業入局年度が古い順に載っている。
物故会員も毎年増えているが、明治27年卒業の先生が最も古く、昭和63年卒業の先生が最も若い。いずれ自分もこの欄に載るようになるのだろうが、若い人が載っているのを見るのはいい気がしない。もっと人生を全うしたかっただろうと思いをはせるのである。
開業している先生方を除いては10年も経つと勤務先もずいぶん変わっていて、定年退職した先輩たちもみられる。10年前と最も違ってきたのは、医局を辞めてしまった元会員数が29人から53人に増えたことである。以前はよほどのことがなければ医局を辞めることはなかったのだが、昨今はそうでもないようだ。医局制度そのものが衰退してきているのだろう。諸行無常である。

お盆明けは忙しい

平成29年8月18日(金)
当院は8月16日から診療を再開したが16日まで休みの医療機関もあり、中には今週一杯休みのところもあるので新規の患者さんがことのほか多かった。当院は希望者以外は予約なしでいつでも受け付けているので、問い合わせの患者さんから「予約しないでいいのですか?」とよく聞かれる。
あらかじめ食材の準備が必要な高級レストランではあるまいし、今困っている人を見るのが仕事なので時間内に来院された人は全員診察するようにしている。また、必要以上に再診しなくてもいいように、いつでも遠慮なく電話をかけてもらうように話している。検査の結果はもちろんのこと、ピルなど内服中に出血が起きたときなどにも問い合わせてもらえばいいのである。話を聞いてみて電話ですむことであればそれでよいし、来院が必要なら来ていただくが、実際には電話だけですむことが多い。患者さんも来院しなくてすむから楽だし、今すぐに診察・治療が必要な患者さんをそれだけ多く診ることができる。
このスタイルでずっとやってきているがこれからもこのままで行くつもりである。

 

明日から盆休み

平成29年8月10日(木)
明日11日は山の日で祝日なので、今年の盆休みは11日から15日までの5日間になった。1日は墓参りに田舎に行くが、あと4日では遠くに行けない。海外旅行にはあまり興味がないので、長期休みをとって海外に行こうというモチベーションがない。ヨーロッパは行ってみたいけれどなにしろ遠すぎる。せめて半日ぐらいの距離なら行ってみたいと思うのだが、往復にかかる時間を思うとなかなかその気にならない。そこで今年は東北地方に行くつもりである。
かつて一度だけ学会のついでに訪れた瑞巌寺の佇まいに感激して以来ぜひ松島・瑞巌寺を再訪したかったし、平泉・中尊寺にも行ってみたい。季節が秋なら岩手県の遠野から三陸海岸も訪れたいところである。さすがに十和田湖や太宰治記念館に行くのは無理だろうが、東北地方を少しでも体験したい。久しぶりの遠出で楽しみである。

猛暑が続く

平成29年8月4日(金)
一年のうちで一番暑い日が続くのは7月下旬から8月上旬の頃だと実感しているが、今まさにその時期で本当に暑い日が続く。相変わらず朝夕、自転車で通勤しているが涼しいクリニックに着くとほっとする。一番暑い時が今なら最も寒いのは2月の初め頃だろうか、まことにわが国は四季がはっきりしていてメリハリがあって面白い。最もいい季節は春と秋だろうが、それもこの暑い夏と寒い冬があってこそ快いのである。この季節の移り変わりが我が国独特の文化を生む大きな要因になっていると思う。
俳句はわずか十七文字の中に季語を入れて季節を示したうえで、情景に託した心境をあらわして文学になっている。新聞の俳句・短歌の欄には読者からの投稿がいつも満載で、感心しながら見ている。自分には俳句や短歌、川柳などをつくる(詠む)力はないが、いいものを読むのは好きである。自転車通勤の途中で頭に浮かんだ有名な句や歌などを味わいながら走るのも乙なものである。セミも今を盛りと鳴いていてまさに盛夏である。