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W杯は代理戦争

平成18年6月10日(土)
W杯が始まった。こういった世界の大会の時になるといつも日本と他の国の違いを感じてしまう。
オリンピックにしても「参加することに意義がある」などの言葉を半分以上まじめに考えているのは日本ぐらいなものではないだろうか。そもそもオリンピック が、国家間の争いがあまりにも多いので少しでも緩和させようとして創られたいわば国家間のガス抜きであることは常識である。だからお祭り的な要素は大きい が同時に国家間の代理戦争の面があるのも否めない。かつてのソ連をはじめ東欧諸国はメダルを多く取るために国家を挙げてあらゆることをした。代理戦争の面 があるのだから勝たねばならないから当然のことである。今でも世界の国々や選手はそういう意識で戦っているのではないだろうか。ドーピングチェックがあれ ほどきびしいのもそれだけどんなことをしても勝とうとする選手、コーチが多いということである。
わが国ではおそらく親睦第一でメダルがとれたらうれしいが頑張ったんだからいいぐらいの意識ではないだろうか。W杯にしても他国の応援のすごさはまさに代理戦争であることを感じさせる。「和をもって貴しとなす」わが国としてはどうしても代理戦争であると意識できないのは当然である。

病気になった時に

平成18年6月7日(水)
人は病気になったとき、それが悪いものや治りにくい場合は特に、いい医師に見てもらいたいと思うのは当然である。たとえ信頼している医師からその病気につ いてのエキスパートを紹介されてもその医師の腕は本当にいいのか、人柄はどうか、自分のことをきちんと診てくれて過不足のない最良の治療をしてくれるのか など、不安はつきない。さらにその病気の予後はどうなのか、一般的には5年生存率は○○%というが自分についてはどうなのか、手術をすることになったら失 敗しないだろうかなど、不安は雲のように広がる。
私自身も以前手術を受けたことがありその時にいろいろ考えることがあったから、その気持ちはよくわかる。でも医師の側から見ると誰に対しても全力で治療をするし、紹介状があるから、付け届けがあったから、知り合いにたのまれたから、などの理由で差をつけることは絶対にない。医師は人の体を診るプロであり、 職人的な要素を持っていて、職人の部分では特に目の前の仕事は絶対に手を抜かずに全力でいい仕事をしようとする性(さが)があるので、相手がたとえ犯罪者であったとしても同じように手を尽くしてしまうのである。私の知る限り、まともな医師は全員そうだと思う。
ところが、日頃からそう思っている自分がいざ手術される立場になると、前記のような不安を感じるのであるから普通の人が不安を抱くのは当然のことだろう。だからこそ強調しておきたい、まともな医師は情実で差をつけないしつけられるはずもないことを。

今年もとうかさん

平成18年6月3日(土)
今年も「とうかさん」のゆかた祭りで、午後からは道行くゆかた姿の若い女性たちが増えてきた。天気もいいし今日あたりは最高の人出になるに違いない。ゆかた姿というものはなかなかいい。日本人にはいちばん合った装いではないだろうか。でもせっかくゆかた姿がきまっていて風情があるのに、女性同士大声でわめ くように話しながら歩いているグループもいていっぺんに興ざめする。やはり装いとマッチした雰囲気がいいのにと思う。
明日は当番医なので一日クリニックを開けておかねばならない。結局休みは来週の日曜日までお預けであるが、これはこれでけっこうきついことである。本当は休みたいのだが回り持ちなのでそうもいかないのである。

岩波明著「狂気の偽装」

平成18年5月31日(水)
早いものでもう5月も今日で終わりである。一ヶ月など瞬く間に過ぎ去ってゆく。
精神科医の書いた「狂気の偽装」という本によれば、「多重人格」「アダルトチルドレン」などの概念は北米を中心とした医学会の説であり、欧州では否定的見解も多いとのことである。さらに、PTSDは唱えられだした当初は「心的外傷症候群」だったのがいつのまにか「外傷症候群」と「心的」が抜けて本来の意味 からはずれたものをマスコミが使っていることなどを書いていて、なかなか興味深く読むことができた。また、フロイトの学説は疑問点が多いにもかかわらず、 いまだに精神医学の世界では影響力があることも述べられており、納得することが多かった。精神の領域は数値化も映像化もできないので、解明が難しい分野で ある。むしろ機械文明のない昔の方が精神については今よりもよくわかっていたのではないだろうか。

尺八はトキか

平成18年5月27日(土)
昨日は近くで行われた尺八の演奏会に行ってみた。20~30人ぐらいの小さな演奏会であるが、そもそも尺八の演奏会自体がほとんどないので、見つけたらで きるだけ行ってみるようにしている。今回のは新聞のイベント欄で見て行ったが、集まっていたのはほとんど関係者ばかりで一般の参加者は私だけではないだろ うか。尺八はまさにトキ状態だと改めて感じた。たとえそうであっても自分としては少しでも魅力的な音を出せるように研鑽しようとしみじみ思った次第であ る。

梅雨の晴れ間

平成18年5月22日(月)
昨日は晴れて気持ちの良い一日だったが、今日はまたしても曇天である。それでも午後からは青空が顔を出して五月だというのに「梅雨の晴れ間」のようだった。
このところ食べ過ぎなのですこし控えようと思っているがなかなか難しい。腰痛もいっこうに良くならず、このままではテニスどころか歩けなくなってしまうか もしれない。整形の先生の話によれば、この腰痛は腹筋を鍛えることによって改善するとのことで一筋の光明を見出した気持ちである。腰痛があるときは安静に して、おさまってきたら腹筋を鍛えるといいそうである。そうは思っていても調子がよければつい忘れるのが人間の性(さが)であり、意志の弱さをその所為に しているのも毎度のことではずかしいが今度ばかりは腰痛が治まってきたら腹筋を鍛えるつもりである。

福田和也著「悪女の美食術」

平成18年5月17日(水)
このところ雨の日が続く。梅雨に入ったのかと錯覚しそうだが、気象庁は「プチ梅雨と思ってください」とのこと。いずれにせよ雨が続くとうっとうしい。
評論家福田和也氏の「悪女の美食術」を読むと、評論家という人種がいかに凝り性で興味のあるものに対してしつこく追求するのかがわかって面白い。福田氏は じつにりっぱな食いしん坊であり、食に対するこだわりを極限まで追求している。酒に関してもソムリエよりも知識と経験が豊富なようである。加えて「うつ わ」に対する造詣も深く、フランス料理、中華料理、日本料理などの文化的背景については評論家だけあって詳しい。世界中どこにでも食べに行く行動力もたい したもので、総合的に見て彼に対抗できる食通はなかなかいないのではなかろうか。

松井選手の骨折

平成18年5月13日(土)
ヤンキースの松井選手が手首を骨折したそうである。あれだけ頑丈で怪我を避けるセンスのある選手でもこんなことになるのだ。せっかくの連続試合出場記録も途絶えてしまった。世の中何が起こるかわからない。
昔から言われているように「世は無常」である。平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」はどんなに安定しているように見えても、一寸先は闇で あることを知りつくした先人たちの心からの叫びであろう。そしてこのような考えが日本人の根底にあるから般若心経の「色即是空、空即是色」の思想が我々日 本人の血肉と化しているのではないか。そしていくら「世は無常」であっても、無常であるからこそ日々を大切にしなければならないのである。

稲作の危機

平成18年5月10日(水)
朝から雨が続き、さすがに患者さんの出足がよくなかった。その分、診察の合間に書類書きや紹介状作成その他雑用仕事がはかどるのは喜ぶべきか悲しむべきか。
先日の連休に鳴門まで車で行ったがもう田植えの準備をしているところがあった。私の田舎では梅雨の頃に田植えをするのが普通なので、ずいぶん早いと思ったものだが今から植える種類もあるのだろう。この頃は田舎ではもう稲を植える人がいなくなり、田を持っている人はその処置に困っているという。放置すれば雑草が生えて他の田の持ち主に迷惑がかかるし、そうだからといっても稲作をするには年を取ってしまっている人が多いのである。これは私の田舎だけのことでは なく、全国的なことだと思う。日本の伝統、日本たる所以である稲作が消えつつあることは由々しき問題である。

やたらと増えた休日

平成18年5月6日(土)
今日はまだ連休のところが多いが当院は暦どおりなので、いつもの土曜日と同じで午後5時まで営業した。
このところやたらと祝日や休日が増えて、我が国の休める日は世界で最も多いとか。ところが有給休暇の消化率は世界最低で、フランスやドイツなどはほぼ 100%使うのため祝日が少なくても結果的には多く休んでいるという。日本人は休むのは罪悪だと考える伝統があるので、休日や祝日を多く作って罪悪感なしに休めるようにしたのだろうか。昔から盆と正月は文句なく休めたし、戦後はゴールデンウイークができて横並びに休んでも許されるようになったからこうなっ たに違いない。
健康な人が休むのは罪悪であるという考え方は、我が国のような資源の少ない国には必要なことだったのだろう。