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福島県立病院の医師が逮捕される

平成18年2月25日(土)
福島県立病院の産婦人科医師が逮捕されたという。前置胎盤に加えて癒着胎盤のために帝王切開の際の胎盤剥離が困難で多量の出血が起こり、輸血を始め子宮摘出などあらゆる手を尽くしたが患者さんが不幸にして亡くなったためである。事例の経過を見ると亡くなられた人は本当にお気の毒だと思うが、医師を責めるの はどう考えても酷である。県立病院といっても陸の孤島の如く辺鄙な場所にあり、しかも産婦人科医師は彼一人だけでその地域のお産を任せられていたそうである。
実は私もかつて高知県の安芸市にある県立病院に同じように一人産婦人科医として赴任し、年間500近くのお産を取り上げていたことがある。今ではこの数のお産を一人で行うことは、特に公的病院ではありえないだろうが、当時は大学から派遣されて泣く泣く頑張っていたのである。その頃の大変さを思い出して身につまされる思いがしたわけだ。県立安芸病院からNICUのある高知市まで1時間以上かかりおまけに当時は小児科がなかった。毎日がストレスのかたまりで、 何が起こってもおかしくないと思っていた。
今回の場合は前置胎盤に加えて癒着胎盤があり出血が止まらなかったようである。輸血の準備もしたうえで帝王切開を行っており、やれることは誠実に行っているようだが不幸な結果になっている。これを責めるなら外科を含めたすべての手術の際に不幸な結果になった場合は逐一その手術をした医師を逮捕しなければならなくなる。青戸病院の例とは全く異なっているのである。
お産には危険なことが必ずあり、どんなに設備の整った病院で腕のいい医師団が慎重に手術しても不幸な結果になることがあるのである。そしてそのことを広く知ってもらわないと、誠実に頑張っている医師は報われないと思う。

なぜケタミンを麻薬指定にするのか

平成18年2月22日(火)
ごく少数、場合によってはたった一人の不心得者のために、まともな多数の人が不利益をこうむることはよくあることである。たとえば池田小学校事件のようなごくまれな思いがけない出来事のために、全国の学校に不審者対策が必要になるような。
我々のことであるが、来年から麻酔薬として30年近く使ってきて安全性も効果もすぐれたケタミンという薬が、来年から「麻薬指定」になることが決まったそうである。なんでも六本木あたりで不良外国人が外国から手に入れた同じ成分の薬や他の違法ドラッグを使って死亡した事件があったので、簡単に使えないようにするためらし い。我々としてはまことに迷惑である。30年間安全に使用してなんら問題なかったのに、麻薬指定となると管理を含め今までのように手軽に使えなくなる。まさにごく少数の不心得者のために多数の人が不利益をこうむる典型例である。さらに言えば、「麻薬指定」にした国側もなんでいまさらなのか理解に苦しむ。事なかれ主義の典型であろう。

肉より魚

平成18年2月17日(金)
男性は年をとると鮨好きが増えるように思う。自分について言えば若い頃は断然肉、それも牛ロースやカルビの焼肉、ステーキ、すき焼きが大好物であった。対 して魚はどうでもいいという感じだった。ふぐでさえ牛肉の前では色あせた存在であった。それが40歳頃から魚が好きになってきて、肉に対する好みは次第に 衰えてきて今ではうまい魚が一番になってしまった。特に腕のいい鮨職人の鮨は本当にうまいと思う。これこそ日本が生んだ世界に誇れる味の芸術ではないかと 思うぐらいである。
むろん、ポン酢ともみじおろしで食べるとらふぐは最高ではあるが、なにしろ値が張るのでめったに食べられない。肉よりも魚を美味しいと感じるのは老化によ る嗜好の変化だろうがやはり体が肉よりも魚を要求しているのではないか。こんなことを書いているとまた鮨が食べたくなってしまった。

トリノ冬季オリンピック始まる

平成18年2月13日(月)
連休明けの月曜日である。しばらく寒い日が続いていたがこのところおだやかになって、今日は一日中暖かかった。
トリノの冬季オリンピックが始まった。今大会では日本はメダルが取れるのだろうか。頼みのジャンプもケチがついたし、頑張ってほしいものだ。当院はいつものペースで変わりなく診療を行っている。いつもと同じが一番良いのである。

飽きのこない机

平成18年2月8日(水)
いいものは何でも飽きが来ないというが、診察室で使っている机は気に入っている。開業の時に家具屋さんに特注で造ってもらったものだが、使い込むほどますますよくなっている。引き出しの動きなども一寸の狂いもなくぴったりで木目も美しい。日毎に愛着がわく作品である。それに比べて一昨年買ったリトグラフ は、初めは気に入っていたが長く見ているといまいちで、絵を選ぶ力のなさを感じる次第である。なにしろその作者の作品展で数ある中から選んだものだから言い訳が効かない。どんなものでも長く使ったり鑑賞したりしても飽きの来ないものが本当にいいものなのだろう。

技術の習得

平成18年2月4日(土)
今日は本来の季節どおりの、雪混じりの寒い日である。でも患者さんの出足は普段より早く夕方まで忙しかったのは土曜日だからだろうか。
技術の習得は何度もくり返していくうちに、ある日突然できるようになるというが、こと尺八の演奏についてはなかなかそうはいかないようである。まず音を出すのが難しく、いい音を出せるようになれば9割は修練できたも同然だと思うがこれが難しい。他の楽器でこれほど音を出すこと、特にいい音を出すのが難しいものはあまりないのではなかろうか。まあいつかは満足のいく音が出せるようになる日を夢見て、練習を重ねていくしかない。

地道にコツコツ

平成18年2月1日(水)
ここしばらく暖かい日が続くと思っていたらもう今日から2月である。いつも月初めは新たな気持ちで臨むようにしているが、今月はどういう月になるだろう か。我々の仕事は毎日同じように地道にコツコツやっていくしかないので、新たに特別にやることはないが、患者さんに満足してもらうべく一層丁寧にやるだけである。腰痛もほとんどなくなったのはありがたい。

平成18年1月

1月28日(土)
同じ病気に対して出す薬が医者によって異なることがある。一般的に薬の効果を信じている度合いが強い医者ほど、たくさんの薬を処方する傾向があるようだ。 私などは本当に効果が証明されている薬以外は出したくないし、そもそも薬にあまり期待していない。薬を使おうが使うまいが治る人は治るのである。同じよう に治るなら薬は使わない方がいい。お金もかからないし副作用の心配をしなくていい。もちろん感染症に対しては抗生物質は必要であるし、他にも必須の薬はあ るが、あってもなくてもいいような薬のほうがはるかに多いのではないか。薬についてだけでも医者によって考え方が違うのであるから、診断能力、治療技術か ら話の仕方、生命に対する哲学までそれぞれの違いは大きなものがあり、それが医者の個性というものである。

食べ過ぎ(飲み過ぎ?)

平成18年1月24日(火)
昨日は朝から胃の具合が悪いうえに寒気もあり、一日中何も食べずに過ごした。さすがに夕方になるとフラフラしてきて、診察するのがつらかった。前々日に久しぶりに深酒をして二日酔いなのに前日にも会があってワインとビールをしっかり飲んでそれだけならよかったのだろうが、帰宅してから鳥鍋うどんと赤飯に ビールを飲んでしまった。さあ翌日は朝から胃部不快感と下痢で一日中しんどかった。だから夜は湯豆腐すこしだけ食べてすぐに就寝。よくしたもので今日はほ とんどもとにもどってくれたのはありがたいことであった。

「甃のうへ」に寄せて

平成18年1月17日(火)
ここしばらく暖かい日が続いている。私自身もいつものペースに戻ってきた。
年末に文春新書から「わたしの詩歌」という本が発刊された。作家や評論家、俳優などが心に残る詩や歌を挙げてエッセイ風に書いたもので、中には私の好きな詩もあってなかなか面白かった。自分では三好達治の「甃のうへ」という詩が好きであった。高校の教科書に載っていた詩であるが、青春の息吹をまぶしく感じながら孤独な自分を見つめている、それでもなお春の明るさはかなさを味わっているところにひかれたものだ。あまりに気に入ったので、曲をつけて一緒に音楽をしていた同級生や音楽部の顧問に披露したことを思い出す。その後、多田武彦という作曲家が男声合唱曲にしていることを知り、聞いてみると実に快くさすがにプロはすばらしい(多田氏は本業は銀行家、作曲は余技であるが根強い人気がある)と思ったものである。