平成16年4月20日(火)
今日もピルをすすめたら「副作用は?」と聞かれた。ピル以外の薬を処方してもなにも言われないのに、ピルの時だけほとんど必ず聞かれる。これは20年以上前からほぼ同じである。漢方薬なら一切聞かれない。いったいこれは何なのだ。イメージとは恐ろしい。日本ではホルモンはすべて副作用が怖いというイメージがあり、漢方薬は安全だとの思い込みがある。いくら事実をあげて説明してもなかなか一旦ついたイメージは変わらない。これは日本だけの現象なのだろうか?世界中で日本ほど避妊をコンドームにたよる国はないし、ピルを怖がる国もない。うちでは毎月300人ぐらいの人にピルを処方している。問題となる副作用はほとんどない。たまに吐き気が強くて飲めない人もいるが、多くの人は調子良いとのこと。生理痛の強い人にはおすすめである。
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ピルの話
診療日誌開始
平成16年4月19日(月)
長いことほったらかしていたホームページのリニューアルがすんだので、これを機会に「診療日誌」なるものを書くことにした。内容はその日にあったことが中心であるが、あまりこだわらず、長く続くことを目的としている。元来、日記など小学生の時に夏休みの宿題の絵日記ぐらいしか書いたことがないのでどうなるかわからないが、とりあえずできるだけ毎日書いてみるつもりだ。患者さんについてはそのまま書くとさしさわりがあるので、すべて設定を変えておいた。
数年前から診ているAさんが、「先生、卵巣のホルモンの検査をしてください」と言う。やや生理不順があり時に無排卵のことがあるが、ほかには問題ない。30代後半だが、これから結婚して子供が生めるなら生みたいらしい。でもいますぐ妊娠できる状況にはないのであるが、なにか異常がないか心配になっているようだ。ホルモンの検査をすれば色々なことがわかると、どこからか聞いてきたらしい。「うーん、ホルモンの検査は採血すれば簡単にできますが、多分なにも異常ないと思いますよ。あなたは排卵もちゃんとあるし、たまに排卵がないこともあるけど、妊娠は充分できるとおもいますよ。」「でも検査で詳しくわかると聞きました」と納得しない様子である。
このタイプの排卵障害の場合、放置して全く問題がないし、そもそもこの程度の状態の人にいらぬ検査をしたり、あまり意味のない治療をすることに問題がある。ホルモン検査などとさも大切そうにいっても、この場合たいした結果が出るわけがないし、治療しても排卵障害が治るわけもない。それは、治療した周期は排卵がおこるが、次の周期はまたもとのままで、いままでと同じなのだ。つまり、体質であって根本的に治す方法はない。むしろ経過を見ていけば、自然に体質が変わって治ることもあり、何もしなくていいのである。このことをどのように言ったら納得してくれるのかと、考えた。都会ではこのような場合、セットの検査で色々調べて治療する場合もあると聞く。私はそれは、お金と時間のムダに加えて異常だと心配する心理的負担もあっていいことはないと考えている。もちろん私も、言われる通り「はいわかりました」と言って、検査をして「排卵障害がありますから薬を飲んでください」と言えば、儲かるし患者さんからは、「あの先生は色々検査して異常を見つけて治療をしてくれた」と感謝されるだろうしハッピーである。でもそれは、本当には患者さんのためにならない、インチキだと思っているのでできない。そこでどのように話そうかと思うわけである。Aさんは半分納得、半分どうかなという雰囲気で帰っていかれた。このようなことは毎日何回もある。あまり言い過ぎるとどこかよそへ行ってしまうし、難しいのだ。やはり信頼されるように日頃から良い関係を築いておかなければ、と思った。