邦楽も大切に

平成17年3月11日(金)
最近ようやく少しだけ音が出るようになった。何の音かといえば尺八のことである。なにしろはじめはいくら吹いても音そのものが出ないし、出ても不安定でとても曲など演奏できなかったのだがここにきてようやく薄明かりが見えてきたように思う。今までいくつかの楽器を経験したが尺八は最も音を出すのが難しい楽 器の一つだと思う。ただし、音が出るようになればこれほど複雑玄妙な音の出せる楽器も少ないのではないか。
日本は明治維新の時に西洋に追いつくために、法律から産業、髪型から衣服に至るまでそれまでのやりかたをすべて変えてしまった。音楽も西洋の音楽を目標にして教育してきた。その結果、邦楽はマイナーになってしまい、和楽器に接することもなくなってしまった。現在では邦楽の演奏会は、趣味の人だけが細々とやっているだけである。ただ、このところ津軽三味線や篳篥(ひちりき)などで頑張っている才能ある若い人たちが出てきて、心強い。
そもそも日本はいつも極端で、西洋音楽がいいとなったらそれまでの歴史と伝統のある音楽をやめてしまう。学校でも和楽器に触れさせるようにすれば、ここまでマイナーになることはなかったのではないか。なにしろ西洋クラシック音楽の方が高級であるかのようにもてはやされていた時代があったのである。それぞれの国にはそれぞれの音楽があり、たとえばスペインにはフラメンコ、ポルトガルにはファドがある。バリ島にはケチャがありアメリカにはジャズがある。いずれもその音楽が発生して発展してきた歴史があるわけである。日本には和楽器を中心にした音楽があったのに、それに見向きもしなくなってしまった。好き嫌いでそうなったのならしかたがないが、国の政策として西洋音楽を一段上に置き学校で教え、伝統の音楽を古臭いものとして遠ざけてしまったのである。その結果邦楽は現在トキかと思われるようになっている。興味を示す人が少なければ、すぐれた才能も出てこない。消えてしまうことはないだろうが、いいものなので少しでも後の世代に残せるようにしていきたいものである。