平成28年7月23日(土)
先日届いた広島市医師会だよりに「夏休み」をテーマにした随筆が載っていた。このコーナーは月毎にテーマを決め、会員の医師たちが指名により寄稿することになっているが、お題によっては原稿の集まりが少ないときもある。今回のお題はさすがに皆思い出が多かったと見えて10編の随筆が集まった。
なんといっても多かったのは、子供時代に祖父母の田舎の家で過ごした思い出を綴ったもので、読んでいると「となりのトトロ」を思わせる内容で、宮崎駿監督のアニメにノスタルジーを覚えるのは、あの世界こそが我々日本人の原風景だと思っている人が多いからだと感じた次第である。私自身は田舎育ちなので自然の良さは十分認識しているけれど、生活の不便なことや大変さがわかっているので短期間の滞在なら十分楽しめるだろうが、ずっと住めと言われるともろ手を挙げて賛成というわけにはいかない。
昭和30年代の当時、トイレは水洗ではないし冷蔵庫がないので食べ物の保存が難しかった。家の土間にはカマドがあり煮炊きはカマドと七輪で行っていた。風呂は薪で沸かす五右衛門風呂、クーラーは当然どの家にもなく、夜は暑いので窓を開けて虫が入らないように明かりを消して蚊帳をつって寝る生活である。昼間は農家なので仕事はたくさんあり、いかに手伝いをせずに遊びに行くかが子供にとっては最大の関心事であった。トマト、キュウリ、ナス、スイカなどは庭の畑に植えているので、いつでも新鮮なものが食べられる。川や池で水遊びができるし裏山に行けばセミやトンボ、カブトムシなどはいくらでもいる。「トトロの世界」は半分はそのとおりだったと納得する随筆であった。