平成25年10月4日(金)
話題作を量産した作家、山崎豊子氏が亡くなった。氏の作品を初めて読んだのは高校時代、「白い巨塔」「続・白い巨塔」で、大阪大学をモデルにしたことがすぐにわかる「浪速大学」が舞台になっていて面白かったのだが、医学部を目指していた自分としては大学病院というのは怖いところだと思ったことである。話のポイントは財前教授が癌を見逃したために患者が亡くなるというところであるが、この点には疑問符がつくが細かい点がきちんと描かれていて今読んでも新鮮である。その後盗作問題などが話題となって、この作家に対して興味を失っていた。
十数年前、ふと本屋で見つけた吉本興業の創業者「吉本せい」をモデルにした「花のれん」を読んで面白さにはまって、文庫本になっている作品はほぼすべて読んだ。大阪商人でも特権階級といわれた「船場」で生まれた作者は、さすがにこの分野は詳しく思い入れもあり実に興味深く読ませてもらった。最も面白かったのは足袋問屋の後継ぎ息子の、家つき娘だった母、祖母たちとの葛藤を芯に、その成長と放蕩を描いた「ぼんち」で、この人でなければ書けない作品だろう。それにしても力のある作家だったと思う。合掌。