平成24年2月9日(木)
欧米では日常的に使われているピルは、わが国では以前より増えたとはいえまだまだ普及していないのが現状である。当院では多くの人にピルを処方しているが、初めて服用する人の多くは「ピルは怖い」と思っているようである。
実際に飲み始めてみると「なんだ、何も問題ないじゃないか」と思う人がほとんどで、避妊はほぼ完璧にできるし、生理痛は楽になる、生理の量も減るので貧血が治る、生理の周期がきちんとするなど多くの利点を実感する。副作用で多いのは飲み始めにおきる「吐き気」「むくみ」であるが、ほとんどの人は慣れてなんともなくなる。
ピルは原則3週間飲んで1週間休むことになっているが、種類によっては連続内服できるものもあり、2~3カ月続けて飲んでもらいその間生理はなく、その後の1週間の休薬期間に生理がくるようにしている人もいる。欧米ではすでに1年に1回だけ生理が来るピルも発売されていて、なかなかの人気だそうである。
なぜ生理があるのかを考えると、これはすべて妊娠するためである。妊娠するために毎月排卵し子宮は妊卵を着床させるために内膜を厚くし、妊娠がなければそれが剥がれて生理となり、また次の排卵が起こり…これを延々と繰り返している。その間には排卵時の卵巣出血が起きたり、子宮筋腫ができたり、子宮内膜症が発症したり大変である。なにより生理痛や生理の出血の手当てがわずらわしい。
だから、妊娠を望んでいない時にはピルを飲んでいると上記の悩みから解放される。なにより子宮・卵巣を休ませることができるので子宮筋腫や内膜症の進行を遅くすることもできるし、卵巣がんになる確率は飲まない時の半分になる。良いことばかりで悪いことがほとんどない稀有な薬である。ピルは薬を含め人類が開発した最も良いものの一つだと思う。