「アンクルトリス交遊録」

令和7年10月10日
表題は寿屋(現サントリーHD)の広告デザイナーで作家、柳原良平氏の著作である。1,976年初版で今回の文庫本はその復刻版である。半世紀以上前にはテレビコマーシャルで「赤玉ポートワイン」「トリスウイスキー」のアニメが流され、小学生だった自分はそれを見るたびに「飲んでみたい、きっとうまいんだろうな」と思っていた。あの独特なタッチのアンクルトリスの顔がウイスキーを飲むほどに赤くなっていく(カラーではないのにそう見える優れものである)様は今でも脳裏に浮かぶ。寿屋が発展していく大きな力になったのは事実である。後に直木賞作家になる山口瞳氏の「トリスを飲んでHawaiiへ行こう」のコピ-は一世を風靡した。芥川賞作家になる前の開高健氏も宣伝部で活躍していた。皆昭和ひとケタ生まれでほぼ全員が鬼籍に入ってしまったが懐かしいので思わず買ってしまった。
日本が戦後、素晴らしい勢いで回復し発展していく原動力を担った人たちの熱い思いが伝わってくる。終わりに著者と山口瞳氏の増補、サントリーHD会長の佐治信忠氏の特別寄稿文もあり、楽しく懐かしく読ませてもらった。