令和2年11月27日
表題は漫画家・エッセイスト、ハルノ宵子氏の著書である。新聞の書評欄で見て興味を持ったので読んでみた。恥ずかしながら著者が評論家の吉本隆明の長女(本名は吉本多子)で、妹が吉本ばななだと初めて知ったわけである。著者は最近、大腸がんの手術をしたが、その闘病記という形でそれまでの日常生活などを淡々と描いていて、生きる姿勢がさすが吉本隆明の娘だと思わせる痛快さである。その前には乳がんの手術と大腿骨骨折による人工股関節も入れている。猫との生活も広島のO島先生のような共生で、本人も半分猫の感性だと思っている節がある。
医療・医師に対する感性も独特で、すべて本音で対処し、がんにも動じていない。糖尿病で視力を失くしても最後まで思索を続けた父、酒・たばこを含め最後まで好き放題して理想的な死に方をした母、を看取った著者には「今」がすべてで、すべての生き物は「今」だけだという達観がある。イラストの猫の絵も秀逸で、久しぶりに痛快な作品に出合った気がした。