妊娠中の蛋白尿について

平成25年11月29日(金)
北海道大学産婦人科教授、水上尚典氏の表題の講演があった。以前は妊娠中の蛋白尿、むくみ、高血圧を妊娠中毒症といっていたが、現在は妊娠高血圧症候群という病名になり、高血圧と蛋白尿を症状とする疾患として対処されている。この疾患の怖いのは、胎盤の早期剥離がおきることで、そうなれば胎児ばかりか母体の命も危いことである。
人間の体はバランスが大切で少しでもバランスが崩れると取り返しのつかないことになる。ある域値まではなんとか正常に働いているが、域値を超えて症状が進むと回復不可能になる。妊娠によるこれらの病態は妊娠を中止すること、つまりお産にもっていくことで治るのであるが、域値を超えてしまうとそれでも回復できなくなる。蛋白尿が先行して高血圧になる場合は妊娠高血圧腎症になりやすく、妊娠中の蛋白尿を軽く見てはダメである。
多くの妊娠は順調に経過するので、いたずらに心配することはないが一旦バランスがくずれてしまうと上記のような事態になるかもしれない。妊娠、出産は最も大切なめでたいことであるだけに危険と隣り合わせで、よりいっそうの慎重な対処が必要だと思ったことである。