適材適所

平成25年10月11日(金)
学生時代から試験管を振ったり文献を読み込んで研究することがあまり好きでなかった。とにかく臨床をやりたかったので、実際に患者さんの問診をしたり聴診器をあてたりする実習、ポリクリ(臨床修練)と呼んでいたが、これが最も楽しく真剣にやることができた。実験室にこもって研究するより患者さんと接する方が性に合っていたのだろう。また、大学に残って教授を目指そうとか大病院の部長とか院長になろうとか思ったことは一度もなく、早く技術を身につけて自分の目の前の患者さんを自分のできる範囲で対処できればいいと思っていた。だから優秀な同級生や先輩、後輩には心からエールを送り初心を貫いてほしいと思ったものである。
幸い、自分の分に応じた医院を開くことができ、自分にできる診療を行ってきて気がつけば16年、先月から17年目に入った。これは医者になって三十数年のほぼ半分である。毎日、気持ちよく診療させていただいてありがたいことだ。たぶんこの状態が一番自分に合っていたのだろう。勤務医時代の多忙な日々もやりがいはあったし面白かったが、今あの頃の状態に帰れと言われても無理である。だれでも、その人に合った仕事をその人の状態に合わせて一生懸命やるのが一番幸せなことなのだと思う。