平成17年9月9日(金)
生物学者本川達雄氏によれば、平均寿命が80年になったのは人類600万年の歴史でわずかここ30年のことだそうである。なるほど自分が子供の頃は還暦は祝うべきめでたい比較的まれなことだったように思う。それが今では70歳でも元気なのがあたりまえになってしまった。こういう経験は人類には今までなかったわけで、どうしてよいかわからないのはあたりまえである。
生物は年を取ればそれだけ体にガタがくるので、永遠をめざすためには自分の複製である子供をつくって次につなげるしかないのだ。そして多くの生物は子を作ったら生を終える。哺乳類は親が子供を一人前にしてから死ぬので、子が自力でエサを取れるようになるまでは生きている必要があるが、子供が一人前になればお役御免でその後の生はもうけものであった。昔からそれがあたりまえであり、それ以外の選択はなかった。むしろ、子を産み一人前にできればめでたいことで、それ以上を望むのはぜいたくであったと思われる。
それが今はどうかというと、50歳からの30年の健康と生きがいを求めなければならないのである。この余分な30年は生物としては不自然な大量のエネルギーを使うことによって成立しているそうである。こんな状態が長続きするはずがない。アフリカなどは今でも平均寿命は30~40歳の国もある。いずれは我々も元の寿命に戻るかもしれない。