月別記事一覧 2018年7月

子宮内膜症と不妊症

平成30年7月20日
東京女子医大産婦人科・熊切順教授の表題の講演があった。月経困難症の治療薬としてのLEP製剤を発売している製薬会社の後援だったため、講演に先立ち別の講師によるインターネット講演もあった。子宮内膜症に対するLEP製剤の有効性は今では常識となっているが、20年前に我が国でやっと低用量ピルが認められた頃には健康保険制度のしばりもあって、あまり使われていなかった。自分のクリニックでは最初から子宮内膜症のファーストチョイスの薬として使ってもらっていた。特に1相性のピルを、当時は認証されていなかった連続使用が有効であると積極的に薦めていた。20年経ってやっと連続内服の方が有効だと言い出して、連続内服のLEP製剤が発売されている。理屈から考えればわかりそうなものだが遅すぎる。はじめからそうしておけば、どれだけの患者さんが楽になったことか。
熊切教授のあざやかな腹腔鏡手術のビデオを供覧したが、薬物療法だけでは難しい内膜症も多数存在していて、これらには教授のようなエキスパートの手術が必要である。子宮内膜症と不妊症は最も大きなテーマであるが、簡単に解決される問題ではなく、長い地道な努力が続けられている。自分としてはピルを含めたLEP製剤の普及に努めていきたい。

自然災害

平成30年7月13日
瀬戸内は南北を四国山脈と中国山脈に守られて、地震や津波の被害も少なく気候も温暖で最も住みやすいところだと思っている。台風や雪害もほとんどないので、ニュースなどで他県のさまざまな被害を見るにつけ、瀬戸内に住むありがたさを感じていた。ところがこのたびの大雨は広島県と岡山県に甚大な被害をもたらした。降雨開始からほぼ1週間たち晴天というより炎天が続くが復旧にはもう少し時間がかかりそうである。
我が国は降雨量が多く緑の豊かな「麗しの国」である。山は水を貯え、水田は昔からの丹精込めた手入れでその水をさらに有効に貯える装置として働いてきた。山から海までの距離が短く流れの急な川の多い我が国では、治水は昔から行われてきた最も必要な事業で、水田を中心にした我が国の生命線といってもいい大切なことであった。洪水による被害は昔から何度も繰り返されてきたので、先人は堤防を高くし放水路をつくりダムや水門をによる水量の調節を行い、考えられるあらゆることをしてきた。
このたびの大雨は想定を超えていたために大きな被害が起きてしまった。地震の時もそうであったが、自然災害が起きる度に「自然には逆らえない」と思ってしまう。でも、その後の復興に皆が力を合わせて頑張っている姿を見ると、まだまだこの国は大丈夫だと思う。

ピル発売中止の混乱

平成30年7月5日
日本のピルの歴史は欧米諸国にくらべるとまさに理不尽と紆余曲折を経ている。いまから30年前に低用量ピルの治験が遅ればせながら我が国で始まり、安全性に問題がないことが認められたにもかかわらず、発売OKにならず10年間据え置きとなっていた。そのあとでバイアグラという副作用の心配な薬がどういうわけか簡単に発売可になった際、やっとピルも解禁になったのである。その後20年の間ピルは生理痛の緩和、子宮内膜症の治療、過多月経の治療、生理不順の改善などに大いに有用だった。もちろん避妊に対しては絶対的な信頼があった。特に1相性のピル(オーソM21、マーベロン)は連続内服ができるので便利で治療にも適していたが、オーソM21が保険薬になってしまった。その後マーベロンの後発品のファボワールが発売され、使いやすいので普及していて当院でも多くの人に薦めていた。
そのファボワールが発売中止になったのである。メーカーの説明によれば、2年以上経つと成分が許容範囲を超えて変化する可能性があることがわかったからで、もちろん現在まで健康被害もなければ効果に問題もないが、万一のことがあってはならないので一旦発売を中止するという。急に言われても替わりのピルのマーベロンは製造量が少なく回ってこない。それで3相性のピル(こちらの方が我が国では普及量は多い)に変更してもらっている。ピルを使用中の人には申し訳なく思うが、メーカーもちゃんとしてほしいと切に願う次第である。