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将棋界の危機

平成28年10月27日(木)
プロの将棋棋士が公式対局の際、将棋ソフトを使って勝ったという疑惑が持ち上がり、疑惑の棋士は今年いっぱい出場停止になり、その真偽が問われることになった。最近の将棋ソフトのレベルはプロの棋士を超えているそうで、プロ棋士との公式対戦でも勝ち越している。だから難しい局面になったらそれをソフトに打ち込み、出てきた答えを実際の対戦に使うことも可能である。疑惑の棋士は対戦中何度も席をはずし、ソフトを使って調べていたのではないかと疑われたのである。
将棋というゲームは頭脳だけではなく気力・体力など全人的な力がないと勝てない。特にプロ同士の力の差は紙一重なので、対局には人間力が試されそこにドラマが生まれ我々ファンが注目し贔屓の棋士に声援を送る。勝負事はどんなものでも人と人が全力を尽くして戦うから面白いのである。そもそもヒトが機械と戦って勝てるわけがないのだ。疑惑が本当だとは信じたくないが、棋士として人間として絶対やってほしくないことである。

「トーテム」大阪公演

平成28年9月23日(金)
久しぶりの自由に動ける連休を利用してシルク・ド・ソレイユの大阪公演を見に行った。人間の優れた運動能力を駆使したこのサーカス集団は、そのすばらしいパフォーマンスで世界中にファンが多い。1992年に日本で初めて「ファシナシオン」と銘打った公演が行われたが、広島でたまたま行われたのを偶然見に行ってすっかりファンになってしまった。以後何年かおきに日本で公演が行われるようになったが、東京・大阪・名古屋・福岡が中心で、広島にはこの時以来一度も来ていない。だから大阪か福岡で公演があるときはいつも見に行くようにしている。今回のテーマは「不可能を可能にする人類の進化」でこのサーカス集団が見せるアクロバットにはいつもながら感嘆の言葉しかない。
真田丸の特別展が大阪市立博物館で開かれているので、はじめての大阪城散策の流れで行ってみたがさすがに大河ドラマ人気で人が多かった。夕食は三ツ星レストラン日本料理「太庵」、翌日の昼はスマホで検索して「うな次郎」でリーゾナブルなうなぎ、夜は広島駅ビルの「千代乃春」でおでん、気持ちのいい骨休めになった。

「建築家のすまいぶり」

平成28年7月14日(木)
表題は主に住宅建築を手掛けている建築家、中村好文氏の著作で、6年間に24軒の建築家の住宅を訪ねて家と住まいぶりを紹介したいわば住宅見学記である。氏は幾多の住宅の設計をしてきたが、50歳を前にして学生時代に憧れた20世紀の住宅を訪ねてみたいと思っていたところ、それを聞きつけた住宅雑誌の編集者が中村氏に「住宅巡礼」と題したルポを連載したらと勧められ、6年にわたって世界各地に現存する氏の意中の住宅を訪れこの本が完成したわけである。
それぞれの家の正確でわかりやすい設計図(イラスト)と外観・内部の写真・住まいぶりがきちんとまとめられていて、活字を追っているとその家にいるような気持ちになるすぐれもので、住んでいる人の暮らしぶりも垣間見える非常に濃い内容の本である。これらの家の多くは建築家自身が設計し自分で住んでいるもので、建築家の自邸には傑作が多いことがわかる。自宅であれば依頼者の顔色をうかがうことなく自分の思い通りに設計でき、自分の全知識・思想・センスなどを表明できるからだろうとのことである。文章の中に今は亡き住宅建築の星、宮脇檀氏の名前が出てきたりして、ファンとしてはうれしいことであった。

「Jazzen」「The Circle」

平成28年4月22日(金)
表題はいずれもカリフォルニア生まれのアメリカ人尺八演奏家、ジョン・海山・ネプチューン氏のCDである。このところ様々な尺八演奏家のCDを聴いているが、さすがに名のある演奏家の音色はそれぞれ特徴はあるが快く聴くことができる。琴との演奏も多いが和楽器同士は相性が良くて和の世界を満喫できる。
ジョン・海山・ネプチューン氏の演奏はかなり前に一度だけ広島での演奏会で聴いたことがあるが、尺八という単純だけれど扱いにくい楽器を自由自在に吹き、伴奏のギターとピタリと合ったすばらしい演奏であった。尺八の弱点をこれほど感じさせない演奏も少ないと思うが、こういった傾向は外国人尺八演奏家に多いような印象がある。
上記のアルバムは前者はジャズと尺八のコラボであるが、曲想はジャズと禪の融合であり、後者は日本・インド・ジャズ、さらにはラテンの音楽を融合させた独特の世界を表現している。我が国では技術を要するものはなんでも茶道・華道・柔道など道がついて精神の鍛練を重んじる文化がある。尺八はともすれば尺八道になりがちであるが、海山氏の尺八は純粋に音楽表現の楽器として使い、演奏しているように思われて実に快い。

野風増(のふうぞ)

平成28年2月13日(土)
久しぶりにデュークエイセスのアルバムを聴いていたら、リーダーのバリトン谷道夫がメインで歌う「野風増」に惹かれた。この曲は亡き河島英五が歌って広く知られるようになっているが、元は作曲家山本寛之がリリースしたもので堀内孝雄、出門英(懐かしい)、財津一郎、橋幸夫、レオナルド熊、芹沢博文など多くの人がCDを出している。谷道夫の深みのある声と歌い方は、歌詞のちょっと気恥ずかしいところを補ってピッタリしている。
「のふうぞ」とは岡山の方言で生意気とかつっぱるという意味だそうであるが、自分はこの言葉を聞いたことがないので同じ県でも地域によって違うのだろう。「野風増の会」というのが東京と岡山にあり、母校の医学部教授も参加して毎年新年会・親睦旅行が行われているらしい。
お前が20才になったら 酒場で二人で飲みたいものだ
ぶっかき氷に焼酎入れて つまみはスルメかエイのひれ
お前が20才になったら 想い出話で飲みたいものだ
したたか飲んでダミ声上げて お前の20才を祝うのさ
いいか男は 生意気ぐらいが丁度いい
いいか男は 大きな夢を持て
野風増 野風増 男は夢を持て…!

立川談春著「赤めだか」

平成27年11月19日(木)
本屋に行った時にたいてい寄るコーナーの一つに、落語関係の本が収められている棚がある。以前、上田文世著「笑わせて笑わせて桂枝雀」を見つけたのもその棚で、たまに名著・珍著に出会うので見逃せない。
「赤めだか」は、著者が高校卒業直前の17歳で立川談志に入門して、前座から二つ目になるまでのあれこれを書いた、立川談春の青春記である。昔から「青春記」が好きで、いろいろな人の著書を読んだが、この本は著者の素直な気持ちを淡々と表した文章が心地よく、一気に読み終えた。立川談志に関する書籍、落語のCD、DVDなどは多数出版されていて結構持っているが、この本は弟子の立場から書いた出色の著書である。
「赤めだか」とは、その頃談志の家で飼っていた金魚のことを、弟子たちが餌をやってもちっとも大きくならないのでそう呼んでいたところから、一人前になろうとしてもなかなかなれない自分たちになぞらえての題名だろうが、的を射た言葉である。まだ何者にもなれない、なれるかどうかもわからない世に出る前の不安と、一方では漠然とした根拠ない自信の間で揺れ動く心境こそが青春時代なのだろう。

十の詩曲

平成27年10月23日(金)
偶然、YouTubeで早稲田大学グリークラブの演奏する「六つの男声合唱曲」を見つけ、その演奏の素晴らしさと曲にまつわるあれこれを思い出し、何とも言えない気持ちになった。この曲は、ショスタコービッチ作曲の無伴奏混声合唱曲「十の詩曲」から、合唱指揮に造詣の深い今は亡き福永陽一郎氏が6曲を選んで男声合唱曲に編曲し、歌詞も原曲のロシア語の詩を日本語に自分で意訳したものを1970年代に東西四連で演奏したのが初めだと思うが、その時に大阪まで聴きに行った合唱団の仲間がテープレコーダーに録音したものを聞いたとき思わず「これだ!」と叫んだ。ちなみに「東西四連」とは早稲田、慶応、関学、同志社の東西4大学の男声合唱団の合同演奏会のことで、東京と関西で毎年開かれていて、そのレベルの高さに一般の大学合唱団はあこがれを抱いていたものである。
当時、大学男声合唱団の学生指揮をするように先任の優れた先輩から言われ、能力もないのに若気の至りで引き受けてしまい大いに皆に迷惑をかけてしまった。合唱コンクールに出場することになり、自由曲を何にするか迷っていた時にこの曲を聴きこれに決めたのである。ただ、曲自体が非常に難しい上に、指揮者の能力がないため散々な出来で、いまだにメンバーに悪かったと反省している。
今回聴いたのは2010年、京都で行われた第59回東西四連の演奏会で、福永氏のお孫さんにあたる小久保氏の指揮による早稲田大学グリークラブの演奏である。その素晴らしさに陶然となり思わず書いてしまった。

人生を変えた一局

平成27年7月9日(木)
表題の本は、囲碁・将棋チャンネルの番組「記憶の一局」をまとめたもので、囲碁の一流棋士がそれぞれ特に思い入れのある対局を3局ずつ選んで、解説したものである。以前、趙治勲の囲碁にはまっていた時があったが、最近ではあまり囲碁に接することがなかった。
偶々この本が目に留まり、読んでみると当時のスター棋士たちと今の旬の棋士たちの棋譜と解説が興味深く、久しぶりに趙治勲の打碁を並べてみる気になったが、勝負師たちの思いのこもった対局は彼ら自身の解説と共に棋譜を追っていて実に面白いものであった。小林光一、石田芳夫、王銘琬、小林覚、片岡聡、などの当時から変わらず活躍している棋士、山下敬吾、吉原由香里、などそのあとの世代の棋士たちを合わせて10人の棋譜はそれぞれ味わい深く、囲碁というゲームは人類の発明したすばらしいものの一つであると改めて思った。

桂枝雀「落語大全」

平成27年6月26日(金)
桂枝雀のCD版「落語大全」は全巻そろえていて何度も聞いているが、枝雀の若い頃、小米から枝雀になった頃から爆笑王と言われるまでのNHKラジオアーカイブ「桂枝雀落語選集」を手に入れて聞いてみると、その頃はいわば楷書の落語でそれなりに面白く聞いた。
普通、芸人は受けたネタはあまり変えずに演じるものだが、枝雀はどんなに受けてももっと面白くできないかと考えていたようで、いつも試行錯誤していたふしがある。最近手に入れたDVD版「枝雀落語大全」はCD版とは異なった収録で、弟子たちの話やゲストとの対談などもあり実に興味深いものであった。収録の日付を見れば同じ話でも以前の演じ方とどう変わっているかわかるし、工夫やとらえ方の違いがなんとなく感じられる。
枝雀師が亡くなる直前の頃の落語は別の意味で迫力があり、もし生きていたら今どんな落語を演じていたかと思うと残念でならない。

 

「酒つま」と「酒場放浪記」

平成27年4月3日(金)
「酒つま」とはBSジャパンで1年間放送された、毎回ゲストを迎え、飲み、語らいあう番組であった。正しくは「酒とつまみと男と女」というが、進行役の俳優、山崎樹範氏と落語家、春風亭一之輔氏が隔週で出演し、ゲストのいい味を引き出していて、毎回面白く見ていた。なんといっても一番のスターはご意見番としてしばしば登場する作家(不良隠居)坂崎重盛氏で、氏のなんともいえない飄々としたふるまいは「人生の達人」を感じさせられファンになってしまった。アルフィーの坂崎幸之助氏は氏の甥にあたるという。残念ながら3月で番組は終了したが、最終回にはなんと、居酒屋大好きおじさんたちの星「酒場放浪記」の吉田類氏がゲストで登場した。
「酒場放浪記」も実は何年も前から録画して晩酌しながら見ているが、あたかも自分がその場にいて一緒に飲んでいる気持ちになるのが不思議である。最終回は雑誌編集長でレギュラー酔女、倉嶋紀和子氏も参加して大いに盛り上がっていた。今回この話題を書いたのは、市内の某ドクターが吉田類氏の大ファンで、立ち飲み系の居酒屋に行ってみたくてたまらず、とうとう行ってみたという文章を雑誌に寄稿していたからである。自分もそうであるが、おじさんになると居酒屋が好きになるのだろう。