「健康生活委員会」

令和元年5月24日
表題は我が国の知恵の象徴ともいえる元東大医学部教授の養老孟司氏と医学界の嫌われ者、でも医師の中にも隠れファンの多い元慶応大学講師の近藤誠氏の対談本である。この二人の著書はいずれも本質をついていることばかりで、読んでいて目から鱗が落ちることが多い。
養老氏は今年で82歳、近藤氏が71歳であるが、お互いに認め合っていて気が合うようで、数年前にはそれぞれのペット(養老氏のネコ「まる」と近藤氏の愛犬「ボビー」)について対談本を出している。今回の対談はお二人の「健康」についての考え方から医療全般、「生きること」まで思いつくまま、気楽に語り合っていて楽しく読ませてもらった。
お二人の著書はほとんど読んでいるので、会話の背後にある考え方やどうしてそのように考えるようになったかなど、腑に落ちることばかりであった。かつて山本夏彦氏は「わかる人には電光石火伝わる」と言ったが、逆に言えば「わからない人には絶対に伝わらない」ということで、近藤氏の言説も医学界では無視されるのだろう。養老氏は近藤氏に対して「医学界からのストレスによく耐えましたね」といたわりを込めた感想を述べているが、そのとおりだと思う。それでも懸命に頑張っている近藤氏を優しく見守っている兄のような養老氏をこの対談から感じた次第である。