婦人科関連

患者様からよくいただく婦人科関連のご質問をQ&A形式で紹介しております。気になる質問をクリックしてください。産科・妊娠関連についてのよくあるご質問はこちらをご覧ください。

生理痛がひどいのですが
生理痛がひどい場合には (1)何か病気(器質的疾患:子宮内膜症や子宮筋腫など)があるためにお こる時と、
(2)それらの異常がみとめられないが強い痛みがおこる場合があります。
10代、20代 の女性には(2)が多く、お産をすることによって良くなることが多いことは、昔から経験によって知 られているところです。
(1)の場合は原因の疾患に対して治療が必要です。(2)に対しては、対症 療法として鎮痛剤を服用することが多いと思いますが現在では副作用の少ないことからも、実際の効 果からも低用量ピルがおすすめです。
低用量ピルは(1)の子宮内膜症に対しても有効です。(米国で も子宮内膜症に対してよく使われています)
生理不順が気になります
生理不順の訴えの人は多く、いつもは順調なのに今回だけおかしいという人から、いつも不順で年に 1~2回しかない、あるいは一度もない人までさまざまな程度があります。
原因によって、治療が必要な場合と経過観察でいい場合とありますが、多くは経過観察でよく、あまり 深刻に考えない方が良いと思います。経過観察でいい場合でもどうしても気になる人は、低用量ピルを使われてもいいのです。
気をつけなければならないのは、ダイエットのしすぎによる無月経です。
体重を急激に減らしたり、必要以上にダイエットをすると生理が止まることがしばしばみられます。これは、ダイエットが生命維持によくないと体が発したサインと思ってください。
バランスよく食事をとる、無理のないダイエットなら問題ないのですが、無理はしないようにしてください。
不正出血があります
不正出血の原因の多くは、ホルモンの状態の変化による子宮内膜の血管の破綻によります。 その他炎症やがんなどによってもおきますが、多くは1回のみということは少なく、何回もおこる事が 多いようです。また、膣や子宮膣部に炎症やただれがあると、セックスの際に出血することがあります。さらに子宮口にできたポリープから出血することもあります。
ホルモンの状態の変化による出血は、必ずしも異常ではありません。経過観察でいい場合 も多いのです。だらだらと続くようなら受診してください。
子宮がんについては1年に1度検診しておけばまず心配ないと思います。
生理を遅らせたいのですが
生理を遅らせる場合に大切なことは、次の生理の予定日をできるだけ正しく推定することです。
生理は排卵後14日ではじまりますが、排卵13日目ぐらいではホルモンレベルが下がり、子宮の内膜は剥がれはじめています。一旦剥がれるともう止まらず、出血がはじまります。したがって、ホルモンレベルが下がる前からピルを内服すれば、飲んでいる間は生理が来ないようになります。だから推定予定日が大切になるわけです。
そして推定予定日の3日前から延ばしたい日まで1日1錠のピル(中用量のピル:昔から使われている ピル)を飲みます。副作用として、吐き気や胃痛がおこることがありますが、内服を続けているとおさまることが多いです。
生理前に頭痛や吐き気があります
生理の数日前からおこって、生理が始まるとおさまってくるこれらの症状を示す疾患を、月経前緊張症とい います。原因は不明ですが黄体ホルモンがかかわっているといわれています。黄体ホルモンは排卵後にできる黄体から分泌され、黄体は約2週間で機能がなくなり同時に月経が始まります。妊娠した場合は黄体の機能は衰えず、黄体ホルモンの分泌を続けます。体の仕組みはうまくできていますね。
治療は対症療法が中心ですが、低用量ピルの内服で、黄体ホルモンの量を低く保つことにより改善することも しばしばみられます。
おりものが増えました
おりものは月経の周期によって変化する生理的変化によるもの(治療の必要はない)と、炎症などによる病的変化によるものとがあり、後者は治療が必要です。
多いのはかびの一種であるカンジダによる膣炎や 細菌による膣炎ですが、性病であるクラミジアや淋菌、トリコモナス原虫によるものも見られます。
また、細菌性膣症といって、膣内の常在菌の性状が変化したためにおこることもあります。
おりものの量はこれらの炎症によって増えますが、生理的変化の影響もあり、同じ病気でも時期によって変化があります。抵抗力がついてくると症状がでなくなることもあります。
おりもののにおいが気になります
おりもののにおいが気になる人は多くみられます。
実際に炎症があるためににおいが強い場合と、体 調の変化や抵抗力の低下のために、膣内の常在菌(膣内を酸性にして雑菌を防ぎ良い状態にする)の分 布がおかしくなり、臭いを出す菌が増えたためにおこっている場合とがあります。
多くは常在菌の異常によるもので、洗浄と膣錠で軽快します。問題なのは、しばらくするとまた同じ症状がでることです。その 度に同じように洗浄すればよいのですが、抵抗力がついてくると次第に症状がおこらなくなります。炎症があればその治療をおこないます。
かゆみが気になります
かゆみを訴えて来院される人は多いですが、外陰部や膣の炎症によっておこる場合と、外陰炎や膣炎がなくても、分泌 物や汗などによる外陰部への刺激によっておこる場合とがあります。
また加齢による皮膚粘膜の萎縮が原因と なる場合もあります。
多く見られるのは、かびの一種であるカンジダによる感染です。カンジダ自体は常在に近い菌で、普段はおとなしくしているのですが、体調が悪い時、抗生物質を飲んでいる時、妊娠している時、糖尿病の時などに増えてきて発症します。
一度受診して原因を調べ、かゆみがでた時のための薬をもらっておけば、しばらくは安心でしょう。
性病が心配です
性病を心配して受診されるなかには、症状がある人と、症状はないがパートナーが性病になったので 検査を希望して来られた人があります。
最近多いのがクラミジア感染症ですが、これは以前トラコーマ結膜 炎といって学校などで流行った眼の病気をひきおこす菌が、のどや性器の粘膜に感染して炎症をおこす病気です。
クラミジア以前からあったもので抗生剤で治療します。最近増えたように言われていますが、実は検査法が簡単 で正確になったための見かけの増加もあるのではないかと思っております。
さらに、淋病、尖形コンジローマ、かゆみとおりもののトリコモナス膣炎、痛みの強いヘルペス 外陰炎などがあります。エイズや梅毒はまれです。統計によれば世界の中で日本ほど人口密度が高く、 経済を含めた活動がさかんにもかかわらず、エイズの感染者の少ない国は珍しいと思われます。日本ではコンドームがよく使われているからなのか、性的 におとなしいからなのかはわかりませんが、良いことだと思います。
避妊に失敗したかも
排卵時周辺で膣内射精があれば妊娠する可能性があります。
この時72時間以内に中容量ピルを2錠 ずつ2回(12時間あけて)飲むと避妊効果があるといわれています(Yuzpe法)。
ただし、2錠を1度に 飲むと吐き気や胃痛がおこる可能性があるので当院では吐き気止めも同時に処方しています。
当院での値段は別項を参照してください。
現在はノルレボ錠を内服するようになりました。この薬は上記の中用量ピルから女性ホルモンを抜いたもので、吐き気が少ないのはよいのですが、高価なのが欠点です。
子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは、子宮内膜組織が本来の場所以外のところに増殖している良性疾患です。 毎月生理の度に痛みが強くなり、周辺と癒着をおこしてさらに症状が強くなるやっかいな疾患です。
20~30代の女性に多くみられ鎮痛剤を多用している人が多いです。診断は症状(生理痛の程度)、 内診所見、超音波検査、血液検査、などで行いますがMRI検査も有用です。
ここで注意すべきことは、 明らかに内膜症の所見があれば診断は簡単なのですが、機能性の生理痛が強い人も多く、正確な診断が難しいことも あります。特に生理を止める治療を行う場合は、副作用もありますから、安易に内膜症の診断をすべきではありません。
治療は薬物療法、手術療法などがありますが、決定的に良い方法はありません。どの治療法も一長一短 なのです。ただ、ありがたいことに3年前から低用量ピルが日本でもやっと承認されました。これを使 うと副作用が少なく、手軽に症状を緩和することができます。値段も他の治療薬と比べて、ずっと安い ですから(保険適応無しでも!)使いやすいです。
ピルについて教えて下さい
日本でも欧米に遅れること十数年、平成11年からようやく低用量ピルが認められました。
以前から中用量ピルは認められ使われていたにもかかわらず、より安全な低用量ピルが認められたのは 申請して十年以上経ってからでした。認められない理由が不透明かつ不合理で、治験の時に副作用も少 なく使いやすく、被治験者の評判もすこぶるよかったので、いつまでも認められないことに納得できませ んでした。低用量ピルは避妊効果も高く、副効用としての生理痛の軽減、生理の量の減少、ホルモン状 態の安定など有用なことが多い薬です。でも日本ではなぜか「ホルモンは怖い」という根拠不明の風潮で敬遠されていますが、ピルが解禁されて20年経った現在では、ピルに対する理解も広がってきたうえに保険のピルも増えて、使う人が増えてきました。 当院のピルの費用については別項を参照してください。
結婚して1年経ちましたが妊娠しません
結婚して(通常の性生活をして)1年で80%のカップルは妊娠し、2年で90%と言われています。
女性の年齢にもよりますが、検診を兼ねて一度受診しておいた方がよいでしょう。 不妊の原因は男性女性ほぼ半々ですから、それぞれの検査が必要です。男性は精液検査が必要です。女性は排卵の有無、卵管の通過性の確認、子宮頚管の異常の有無、頚管粘液の性状などいくつかの検査を行います。
担当医にどこまで検査すべきかなど聞いてください。
不妊症の検査は?
必要な検査としては(1)基礎体温の測定(2)精液検査(3)経膣超音波検査による子宮・卵巣 の状態、卵胞の観察(4)子宮卵管造影(卵管の確認)があります。他に、頚管粘液検査やフーナーテ スト、ホルモン検査などがあり、状態に応じて追加していきます。
(1)基礎体温の測定は、毎朝目覚めた時に婦人体温計で測定します。グラフに記録しておいた方があ とでわかりやすいです。低温相と高温相の温度差が0,3℃以上あれば正常です。排卵は低温から高温に 移るあたりと思ってください。
(2)精液検査は4日ぐらいの禁欲後に採取します。正常精液所見(WHO)は、精液量2ml以上、精子濃 度2000万/ml、精子運動率50%以上ですが、状態がいい時と悪い時でかなり幅がありますから、一度だ けの検査で結論付けないで、何回か検査して正しい評価する必要があります。
(3)産婦人科で経膣超音波検査はなくてはならないものです。これにより、以前はわかりにくか った卵管や卵胞の大きさ、卵巣の状態、子宮内膜の状態などがわかるようになりました。
(4)子宮卵管造影(HSG)は月経直後に行うX線検査で、子宮から造影剤を注入し子宮腔や卵管の形 を見るものです。最近では特殊な液体を注入して、経膣超音波でも子宮や卵管の状態がわかるようにな っています。
不妊症の治療は?
不妊症の検査の結果により必要な治療を開始します。
(1)排卵障害があれば、クロミフェン、HMG-HCG療法などを中心に行います。
(2)卵管に問題がある場合、炎症があればまずその治療をします。そのうえで卵管通気や通水によ る卵管通過性の改善を行います。これによっても改善しない場合は卵管鏡による改善の方法があります が、この治療はどこでも行っているというわけではありません。それでも難しい場合は、体外受精の適応となります。
(3)一般的には排卵のタイミングにあわせて性交を行うタイミング療法や、子宮内へ直接精子を注入 するAIH(IUI)などを行います。
子宮がん検診をしたいのですが
子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんがあり、以前はほとんどが子宮頚がんでしたが最近は体がんの 比率が増えています。 検査は頚がんの場合は子宮膣部~頸部より細胞を採取し、染色した細胞を顕微鏡 で観察して診断します。痛みもなく、すぐに採取できますからご心配なく。
体がんの場合は子宮の奥から細胞を採取するため出血や痛みがある場合もあります。最近では経膣超音 波で子宮内膜を観察することで、ある程度検査の必要性がわかりますから、むやみに体がん検診をしな くてよいこともあります。
更年期の過ごし方
月経がなくなる平均年齢は、50,5歳ですが45歳から55歳の間でほとんどの女性が閉経となります。
この時期は卵巣の働きが衰え、ホルモンの変動がはげしいためにさまざまな症状がおこります。
生理不順、生理の量の変動、自律神経の失調(ほてり、冷え、動悸など)、また、子供が巣立つなどの 生活の変化もあり、精神的に不安定になりがちです。加えて、四十腰五十肩など加齢による体の衰えが 目立ってきます。
この時期をどう過ごすかがポイントですが、ホルモンの変動による症状に対しては、 ホルモンを補う方法があります。これは骨がもろくなるのも防げます。
更年期の治療とは、盛年から老年へ軟着陸させるための方法といえます。どうぞ大いに医師に対 して悩みを訴えてください。あなたに合う方法を探してくれると思います。
骨粗鬆症が心配です
骨粗鬆症は主に女性に多く、加齢と共に骨が脆くなり、大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折などがおこ り、寝たきりになったりする症状です。
骨が最も脆くなるのは、閉経直後でこの時期にホルモン補充療 法やカルシウムの摂取、ビタミンD3、ダイドロネルなどにより骨の脱灰がおさえられます。
この時期は、時々骨塩量を測って現在の状態を知るようにしましょう。
ホルモン補充療法について
ホルモン補充療法は、ホルモンの不足に対してエストロゲン単独か、エストロゲンにプロゲステロンを加えてホル モンの不足を文字どうり補うという治療です。欧米を中心にかなり行われています。
更年期障害には もちろんですが、骨粗鬆症にも有効で、日本でもかなり使われるようになっていました。
更年期以降の 性交では、膣粘膜が薄くなり乾燥するために、女性は痛くて不快になることが多いのですが、女性ホルモンの作用でそれらが改善するので 、欧米でよく使われているのではないかと思います。
最近、米国と英国の報告では、乳癌になる確率がおよそ2倍になるとのことで、今この治療法は変 換期を迎えています。いろいろと検討されていますが、私は日本人にはエストロゲン単独で少ない量を 使うのがよいのではないかと思います。

このページの先頭に戻る