日付別記事一覧 2020年2月21日

文芸春秋のオヤジ欄

令和2年2月21日
月刊誌文芸春秋のオヤジとオフクロ欄は、著名人のそれぞれの親に対する思い出が語られていて毎号面白く読んでいる。最新号に医師で作家の久坂部羊氏の父親に対する思いが描かれていて思わず引き込まれてしまうと共に笑ってしまった。氏の父親は「父は医者のくせに医療が嫌いで、こむずかしい医学の知識を信用していなかった」とあるように医療の限界を知ったうえで麻酔科の医療を行っていたようである。若い頃の父親は糖尿病で厳密な食事療法を行っていたが一向に良くならないため、業を煮やして食事制限は一切止めて血糖値も測らないことにした。そのせいでのちに血糖値が700を超え、インシュリンの自己注射をせざるを得なくなったが、甘いものは食べ放題、タバコも吸い放題になった。
モットーは「無為自然」と「足るを知る」で65歳の定年以後は一切仕事をせず自由気ままな毎日を送っていた。父親は超高齢まで生きた場合の悲惨さを熟知していたので、長生きし過ぎたら困ると思っていたらしい。85歳の時に前立腺がんの診断を受けたとき、治療さえしなければ2~3年で死ねるので「これで長生きせんですみますな」と真顔で喜び、診断した医師を唖然とさせた。そして言葉どおりに病院にもいかず87歳で天寿を全うした。久坂部氏のサポートがあればこそだろうが、実に納得できる生き方を身を持って示していて、今のオーバーな医療を笑っているようで面白かった。