月別記事一覧 2019年3月

花見日和

平成31年3月29日
すっかり暖かくなって桜も咲き始めた。昨日は午後から休診なので平和公園を望む元安川河畔のベンチでビール、弁当。桜は2~3部咲きといったところだろうか、日差しも頃合いでじつに気持ちがよかった。ハトが寄ってきたのでつまみにしていた枝豆をやると、どこからともなくいっぱい飛んできてハトだらけになった。これと同じ風景があったことを思い出して後で調べてみると、5年前の診療日誌に場所はやや違うが同じようなことを書いている。今回はスズメの方が多く集まってきた。ハトよりもエサを取るスピードが速い。だから生き残ってきたのだと納得。さらに白鷺が一羽降りてきて目の前をゆっくり歩いてしばらくたたずんでいた。通りがかった外国人観光客が喜んで写真を撮っていたが、のんびりした平和な風景である。このような気持ちのいい時間を過ごすことができたのは、本当にありがたいことだと思った次第である。

なつかしいもの

平成31年3月22日(金)
学生時代に一時所属していた男声合唱団で歌った「子どものうた」をふと思い出して、そのときの楽譜を探してみた。当時は謄写版で自分たちで刷って使ったもので、押入れの奥の段ボール箱に入れていたはずだと探してみた。小学生たちが書いた詩に曲を付けたもので、子供たちの本音が見えて定期演奏会の面白いステージになった。たとえば「たいそう」は「たいそうのじかん せんせいがシャツいちまいで むねをはりなさいというちゃった シャツにおちちがうつった ふくれたうえにもうひとつ ちっちゃこいまるこいもんがついとった」これをラジオ体操第1のピアノ演奏に合わせて歌うのである。「お金持ちのお客さん」では「お金持ちのお客さんがきやはった お母ちゃんはとっきゅうでええふくに着がえて そうでございますねえとすましたはる お母ちゃん京都べん使いよし むりして東京べんつこたらおかしいわ お客さんも京都の人やんか」他にもたくさんなつかしい楽譜がでてきて当時のことを思い出して、これらを捨てなくてよかったと思った次第である。

「産前産後のメンタルケア」

平成31年3月15日
医療法人愛育会福田病院、河上祥一院長による表題の講演があった。福田病院は熊本市にあるお産を中心にした病院で、100年以上の歴史を誇る。平成30年のお産の数は3900を超えているという。中四国で一番多い施設でも2000ぐらいだろうから、おそらく日本で一番多い病院ではないだろうか。産婦人科の医師は18人、当直の翌日は休めるようにしているそうである。外来は6診まであり、大勢の妊婦さんの診察ができるようにしている。外国にはこのようなメガ施設がたくさんあるけれど、我が国では多いところでも1000ぐらいで、個人の施設ではもっと少ないところも多いがその分、それぞれきめ細やかな対応をしている。ちょうど大きなホテルと旅館のようなものだろうか。
産前産後のメンタルケアであるが、我が国では妊産婦死亡の第1位は自殺である。それだけ産科医療が成熟してきたわけである。つまり、お産が原因で亡くなるのは全国で年間50人ぐらいまでで自殺の方が多くなったのである。つい100年ぐらい前までは300お産があれば1人の母体死亡があったことを思えば隔世の感がある。世界の中ではまだそのような国もあると聞くが、我が国はメンタルケアが最も大切になるほど産科医療は良くなっているということである。その分、産科医に重い責任がかかり、昼夜の別なく働くストレスから、産科志望の医師が減っている現状がある。妊産婦だけでなく産科医のメンタルケアも必要ではなかろうか。

「孤独の価値」

平成31年3月8日
表題は工学博士で小説家の森博嗣氏の著書である。最近、本屋で立ち読みをしていて見つけた(2014年刊)。氏は名古屋大学で建築の研究と教育をする傍ら、96年「すべてがFになる」で作家デビュー、その後は着実に固定ファンを増やして2010年にはAmazon10周年記念の行事、国内でよく売れた作家20人の中に入りAmazon殿堂入りしている。現在は大学も辞めて山間の広い土地を購入して、趣味三昧の生活を送っているという。
ほぼ2年半電車には乗っていない、毎日ほとんどの時間一人で遊んでいる、家には家族も住んでいるが顔を合わせるのは食事の時と犬の散歩に出かける時ぐらい。仕事で人に会うこともめったになく、ほぼメールで済ませる。買い物は95%は通信販売、電話が鳴ってもでない(ほぼ間違い電話だから)、手紙も来ない(みんな住所を知らない)。年に数回は友人が訪ねてくるが、それはそれで楽しい。一人でする活動は、自分の庭で(林もある広大な庭でレールを敷いて、模型列車を走らせている)工事をしたり、ガレージで工作したり、書斎で読書をしたりで、日曜もなければ盆や正月もない。外泊、外食もせず徹夜もしない。
氏は時間をかけてこのような生活ができるようになり毎日楽しく過ごしているが、周りからは孤独にみえるだろう。でも実際は豊かな満足した生活を送っていることを、「絆」にとらわれてかえって不自由になっている人々に説いているユニークな著書である。

「山本七平の思想」

平成31年3月1日
表題は自分とほぼ同じ年代のフリージャーナリスト、東谷暁氏の著書である。山本七平といってもピンと来ないだろうが、1970年に「日本人とユダヤ人」という本がベストセラーとなり、そのユニークな内容に多くの知識人たちが賛同し、話題となった。その後も山本氏は、日本人独特の考え方はどこからきてどうなっていくのかをその著作を通じて表し、考えてきた。そしてその思想は死後25年以上経っていても人々に影響を与えている。山本氏のわずか20年の執筆活動がなぜこれほどインパクトがあったのかを東谷氏は検証し、時系列を追って確かめている。
実は自分も当時、山本七平氏の著作に惹かれ、出版されるとすぐ手当たり次第読んでいたので、同じ年代の東谷氏もきっと同じだったんだろうと想像するわけである。東谷氏は山本七平のユニークな考え方のルーツはどこにあるのかを考え、3代目キリスト教徒であったことが日本を客観視できた原因ではないかと記している。「空気の研究」は日本人は「空気」に流され判断を誤りやすいことを警告し、なぜそうなるのかを考えた名著である。東谷氏の著書により当時の熱狂が思い出されて懐かしいことであった。