「手を洗いすぎてはいけない」

平成30年1月26日(金)
表題は東京医科歯科大学名誉教授、藤田紘一郎氏の著書である。氏は寄生虫博士として自ら腸の中にサナダ虫を寄生させて「寄生虫はアレルギーを防いでくれる」ことを実践してみせたことで知られている。表題の新刊書は日本が超清潔志向になった結果、免疫力が弱くなってしまっていて、このままだと感染症に世界一無力の国になってしまうことに警鐘を鳴らしている。インフルエンザが春など季節外れに流行したり、ノロウイルスなどの感染力の弱いウイルスに感染し嘔吐下痢などをおこすのも日本人全体の免疫力が落ちているからだという。
ヒトは生まれた直後から微生物と共に生きているというが、実際ヒトの体は9割が細菌でヒトは1割だという。ヒトの体は約37兆個の細胞からできているが、ヒトに住み着いている細菌の数は100兆個以上いて、それぞれが遺伝情報を持っている。一方、ヒトの細胞37兆個のうち遺伝情報を持つのは11兆個で26兆個は遺伝情報を持たない赤血球である。つまり、遺伝情報を持つ細胞の数でいえば、9割が細菌、1割がヒトということになる。ほとんどは大腸菌で100兆、歯垢(プラーク)に1兆、唾液に1000億、肌に1000億だそうである。
細菌と共に生きている我々が超清潔志向になっても意味がないし、免疫力が弱くなるだけだという内容には大いに説得力がある。