「性差からみたうつ病」

平成29年3月24日(金)
順天堂大学医学部メンタルクリニック教授、鈴木利人氏による表題の講演があった。うつ病は女性の方が男性の2倍なりやすいがその結果自殺してしまうのは逆に男性は女性の2倍で、理由は男性の場合は気持ちの落ち込みは強くても自殺を遂行してしまう意欲が女性より強いからだという。女性は周囲の人、母娘関係や家族他人との関係がうつ病の原因となることが多く、男性は仕事関係が原因となることが多いそうである。お産の後に起きる「マタニティーブルーズ」は多くの場合一過性であるので精神科では精神疾患の範疇に入らないが、自殺をしてしまう緊急に対処を要するケースが含まれているので注意深い観察が必要である。我が国は妊産婦死亡の原因の1位が自殺だそうで、せっかく産婦人科医が妊産婦死亡を減らすべく頑張ってきたが、精神的なフォローの方が大切だとは目から鱗が落ちた。
「夫が家にいる症候群」というのがあって定年を迎えた夫が家にいるようになり、7~8月ごろ妻が鬱っぽくなって病院に来るそうである。夫が一日中家にいるようになり自分が今までしていたことができなくなるうえに、「飯はまだか」としか言わない夫に我慢できなくなるという。思わず笑ってしまったが、妻の立場では自分のペースで生活していた空間に邪魔な侵入者がいると困るだろう。まさに「亭主元気で留守がいい」である。鈴木教授の話は緩急自在で説得力があり、いつもなら眠ってしまう人も多い講演会もあるが今回は皆が聞きほれるいい講演であった。