立川談春著「赤めだか」

平成27年11月19日(木)
本屋に行った時にたいてい寄るコーナーの一つに、落語関係の本が収められている棚がある。以前、上田文世著「笑わせて笑わせて桂枝雀」を見つけたのもその棚で、たまに名著・珍著に出会うので見逃せない。
「赤めだか」は、著者が高校卒業直前の17歳で立川談志に入門して、前座から二つ目になるまでのあれこれを書いた、立川談春の青春記である。昔から「青春記」が好きで、いろいろな人の著書を読んだが、この本は著者の素直な気持ちを淡々と表した文章が心地よく、一気に読み終えた。立川談志に関する書籍、落語のCD、DVDなどは多数出版されていて結構持っているが、この本は弟子の立場から書いた出色の著書である。
「赤めだか」とは、その頃談志の家で飼っていた金魚のことを、弟子たちが餌をやってもちっとも大きくならないのでそう呼んでいたところから、一人前になろうとしてもなかなかなれない自分たちになぞらえての題名だろうが、的を射た言葉である。まだ何者にもなれない、なれるかどうかもわからない世に出る前の不安と、一方では漠然とした根拠ない自信の間で揺れ動く心境こそが青春時代なのだろう。