薬はできるだけ使わない

平成27年7月3日(金)
同じ症状に対して医師によって薬の使い方はずいぶん違う。たとえば妊娠初期に出血があった場合、「切迫流産」という病名がついて止血剤、子宮収縮抑制剤が処方されることが多い。かつてまだ超音波検査装置がなかったころは、入院・安静・上記の薬の点滴が治療の定番だった。研修医のときにはそのような患者さんが、大学病院でも個人病院でもいっぱい入院していた。今は流産は細胞分裂のミスによることがわかってきたので意味のない入院・治療はしなくなった。母親の妊娠時の年齢が上がるほど流産率は上昇する。私の場合、ずいぶん前から薬は出さないで経過を見守るだけにしている。
ウイルスによる感染症、ヘルペスなどに対しても一定の期間で必ず治るので副作用のことを考えれば内服薬を出そうとは思わない。痛みなどを緩和するための軟膏を出すぐらいである。そもそもウイルスに効く薬などないと思っている。
一事が万事で、当院では実際に処方する薬は実に少なくなっており、厚労省が薬剤費を抑えるために行っている姑息な政策に逆の意味で心ならずも貢献している。でも、長く診療にかかわっていると、薬はできるだけ使わない方がいいと改めて思う。